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ROM大臣さん
平均点: 6.07点 書評数: 135件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2 6点 青に候- 志水辰夫 2023/09/07 14:07
物語は、一人の若い侍が江戸に戻ったところから幕を開ける。彼の名は神山佐平。播州の小藩に召し抱えられていたが、家中の騒動に巻き込まれ家臣の一人を斬って追われる身に。秘密を握ったまま姿を消した同僚の行方を追う佐平を、何者かがつけ狙う。
大きな企みに巻き込まれた主人公がその企みに立ち向かい、危険に遭遇しながらも自分自身の道を開く。本書では、過去への視線と未来への行動とがバランスをとって物語を支えている。佐平の冒険は、「きのう」の事件に決着をつけるだけのものではない。自分自身の「あした」をつかみ取る旅でもある。
若い佐平の青さも、武家の生まれではなく、豪農の次男坊で絵師を志していたというその生い立ちも、そして幕末という激動を予感させる時代も、すべて未来を切り開く行動に重要な意味を与えている。それだけに、「あした」へと向かう最後のページが胸を打つ。

No.1 7点 飢えて狼- 志水辰夫 2021/06/14 15:14
日本でもその名を知られた元登山家が国際謀略の渦に巻き込まれ、北方領土の択捉島に潜入することになる。
ヒーロー造形を始め、濃密な自然描写、リアルな活劇演出、陰影に富む恋愛演出など、デビュー作とは思えぬ完成度。
権力に立ち向かうストイックなヒーローの再生譚に、複雑怪奇なエスピオナージの妙を絡めた独自の活劇世界は今もって古びていない。

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