皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ことはさん |
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平均点: 6.28点 | 書評数: 254件 |
No.12 | 6点 | スーツケースの半分は- 近藤史恵 | 2024/05/26 00:51 |
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ミステリではないですが、ミステリ系の作者なので、それも含めての情報連携としての登録ということで。採点はミステリでないことは考慮しないで。
スーツケースと、それを取り巻く人たちを描く、連作短編集。初出は雑誌連載だったのか、全部30ページ強で統一されている。 30ページ強の中で、旅先のイメージを感じさせ、主人公のキャラクターを過不足なく描写し、ラストは主人公の思いに焦点をあてて締める。うまいなぁ。 例えば、キャラクター描写はこんな感じ。 夕方に電話をかけてきて、 「ねえ、ヒマ?」 「ヒマじゃない。掃除してるけどなに?」 「ベルギービールフェスティバルっていうのをやってるの見つけたんだけど、行かないかなと思って」 「いく」 ふたりのキャラクターと関係性が、短いやりとりでわかる。うまい。 最後の話は、きっちりタイトルに寄り添わせて、本の最後もきっちり締める。 うん、職人技です。堪能しました。 |
No.11 | 6点 | ときどき旅に出るカフェ- 近藤史恵 | 2023/07/02 23:37 |
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”日本ではあまり知られていない世界のお菓子”を各話でフィーチャーしつつ、居心地のいいカフェを舞台に、カフェの女性オーナーと主人公の交流を軸に、ちょっとした日常の謎を盛り込んで出来上がり、といった職人技がひかる連作短編。うまいなぁ。
登場人物は絞っているが、そのかわりに、登場する人は実にくっきりと造形されている。とくにカフェのオーナーがいい。 まあ、ミステリ成分はほんの少しで、なくてもいいくらい。物語の「結」をつけるために、ちょっと取り入れているといった趣き。 残念なのは7話目から話の構成が変わること。6話目までは上記の通りの話が並ぶのだが、7話から10話は、カフェのオーナーのプライベートな話になっていって、謎の要素はほぼなし。最後まで6話目までのタッチがよかったな。 採点は、ミステリ成分の少なさから、こんなものにしておきます。採点以上に楽しんだけどね。 |
No.10 | 7点 | ホテル・ピーベリー- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:57 |
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本作はミステリ観点から一言でいえば、ハワイを舞台にしたホワットダニット。
前半は、(明確に提示されない)悩みを抱えた語り手による、ハワイ観光案内つき、登場人物紹介。内省的な語りより、なにか起こりそうな不安感を醸し出す。 中盤、事件が起きてから、ホテルの滞在人物の怪しい点がいろいろ判明し、流れるように最後まで読めた。なかなか面白い。 いくつかの怪しい話を並列させていて、展開をよませなかったが、そのせいで、それぞれの話の書き込みが浅く、「最後がああなるのなら、もっとここを書き込んでほしい」とも思った。まあ、書き込みが少ないのは、読みやすさ優先の意図かもしれない。 語り手が、共感できないキャラなのも、きっと意図的で、王道的な巻き込まれ型サスペンスにならないよう、たとえば、フランスの犯罪小説風な味わいを目指したのだろうと思う。 印象的なシーンは、中盤、主人公が「他人の事情はよくわかる」と思いながら、ある諍いを目撃するところ。こういう心理戦の描写は、近藤さん、うまいよなあ。 |
No.9 | 5点 | シェルター- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:25 |
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本作も、謎と解決が主軸の話なのに、冒頭の”謎”が弱い。シリーズ・キャラの姉の失踪と、姉に関わる不可解な少女で、”謎”としては残念ながら弱すぎる。
解決も「なあんだ」と思わせるものだし、偶然の繋がりも多々ある。過去のエピソードも、物語内の”今”と直結しない感じがする。これは、読みやすさ優先で、掘り下げが足りないせいだろう。 キャラクターが魅力的だから楽しく読めるのだが、高く評価はできないかな。 |
No.8 | 6点 | 茨姫はたたかう- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:24 |
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前作同様、するすると読める。
シリーズ・キャラクターは、前作以上に魅力的で加点が高いが、謎と解決はやはりいまひとつ。するすると読めることと、でてくる重い設定や状況が、どうもアンバランスに感じられるのは、マイナス材料だ。 本シリーズより、ビストロ・パ・マルのような明るい話のほうが売れているのは(印象だけで数値情報はありませんが)、そういうところが大きい気がする。 |
No.7 | 5点 | カナリヤは眠れない- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:24 |
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相変わらず近藤史恵は、するすると読める。
ただ、本作は(名探偵役もいるし)謎と解決が主軸の話なのに、解決がいまひとつ。 シリーズ・キャラクターとなりそうな人物が魅力的だったので、シリーズを読みすすめたが、本作は可もなし不可もなし。 |
No.6 | 7点 | ダークルーム- 近藤史恵 | 2022/10/24 00:28 |
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近藤史恵の語り口はいいなぁ。どれもするすると読めてしまう。しかも、簡潔で映像的。
例えば、写真の現像についての説明では、こう。「現像されたフィルムを通して、光を印画紙に数秒あて、そのあと印画紙を現像液に浸けるだけで、鮮明な画像が浮き上がってくる」 作業をしている人の動きもイメージできないだろうか。 それに、少し気の利いた警句も交える。例えば、こう。「なにもわからなくなったとき、人が選ぶのはいちばん簡単なやり方だ。つまり、現状を維持すること」 ただし、プロットについては、多くは中盤でラストまでの展開が読めてしまう。あくまで「語り」を楽しむ作品と感じた。 個々の作品について、簡単にふれよう。 「マリアージュ」 解説でも触れているが、ラストの締め具合がよい。登場人物も、ほぼふたりしか出さず、焦点を絞っている。 「コワス」 これは完全にホラー。足音の使い方にセンスがある。 「SWEET BOYS」 短い描写で4人の登場人物がくっきりと浮かび上がっている。そのためプロットもすっきりとはいってくる。 「過去の絵」 これは失敗作だろう。日常の謎をメインに据えてしまったせいで、解決の魅力の無さが浮き彫りになっている。登場人物はとても魅力的で、前半、彼らが会話している部分はめっぽう楽しいだけに残念。 「水仙の季節」 これも双子が魅力的。ラストがみえてしまうのがもったいない。 「窓の下には」 子供の頃の心象風景が印象的な小編。 「ダークルーム」 主人公ふたりが魅力的。このふたりから、もっといろいろ話を展開できそうに思える。 「北緯六十度の恋」 これだけは、中盤で展開がよめなかった。これも主人公ふたりが魅力的。ラストシーンも印象的。1作選ぶなら本作。 |
No.5 | 7点 | スティグマータ- 近藤史恵 | 2022/07/19 00:24 |
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「サヴァイヴ」「キアズマ」と変化球がきた後、今回は「サクリファイス」「エデン」と同じ白石の語り。ああ、私は白石の語りが好きだ、と気づかせてくれた。
「サクリファイス」「エデン」も白石の語りだったからよかったんだな。抑制が効いていて、基本的に冷静で、けれどときに熱くなる。熱くなっているるときも、語り口は冷静。ああ、この語りいいなぁ。白石の語りでの続編を早く書いてほしい。 とはいえ、「サクリファイス」「エデン」とプロットとして似すぎている点は気になる。次回作は別のプロットにしてほしい。 最後に、本作を読んだとき、めずらしい経験があったので書いておきます。 本作は、本屋の店頭で文庫化したのをみつけたのだが、そのとき「早速読もう」と思って読みかけていた小説は一旦止めて、買い求めた本作を読み始めた。読んでみると、途中で重要なキャラとしてヒルダという人物がでてくるのだか、読むのを一旦止めた小説が、なんと「ヒルダよ眠れ」だった。ヒルダなんていう名前を小説で読んだのは他に記憶に無いのに、たまたまその2作をこんな風に読むなんて、「いやいや、どんな偶然だよ」と唖然とした。 |
No.4 | 6点 | キアズマ- 近藤史恵 | 2022/07/19 00:18 |
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「サクリファイス」シリーズ扱いだが、同じ自転車競技を題材にしている(同じ世界線の?)別キャラの話。シリーズとしていいのか?
「サクリファイス」シリーズとしては、疾走感に劣るので少し点は低い。(つまらなくはない) |
No.3 | 7点 | サヴァイヴ- 近藤史恵 | 2022/07/19 00:17 |
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「サクリファイス」での周辺キャラを主人公にしたサイドストーリー。
「サクリファイス」の世界が楽しめたなら、楽しめます。とはいっても、「サクリファイス」を読んでキャラを知っていないと、そんなに楽しめないかも、と思われるところはある。 |
No.2 | 8点 | エデン- 近藤史恵 | 2022/07/19 00:16 |
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「サクリファイス」と比べるまでもなく、ミステリ要素はほぼ無しです。ミステリを期待する人は読む必要はないかもしれません。
ただ、美点は「サクリファイス」と同様なので、「サクリファイス」が楽しめたら、本作も楽しめます。「サクリファイス」にあったミステリ的無理がない分、かえって本作のほうがまとまっているかもしれない。舞台も海外になって、スケール感が大きくなっていて楽しめます。 とはいっても、「サクリファイス」と楽しみの質が同じすぎるので、「サクリファイス」より採点は下にします。 |
No.1 | 9点 | サクリファイス- 近藤史恵 | 2022/07/19 00:15 |
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他の人も書いているが、ミステリとしては無理を感じる。それは、ある人物の心理がまったく理解できないから。といっても、それは本作のポイントでないと言いたい。
ミステリとしてではなく、スポーツ小説として傑作だと思う。 文章は軽快で疾走感があり、エンタメ小説としては最高。自転車競技のルールや駆け引きもストーリーの中でスムーズに語られ、キャラも立っている。(青春というには年齢が高いが)青春小説としての雰囲気もある。夢中になって一気読みでした。 どのジャンル読みにも、遠慮せずにおすすめできる傑作です。 |