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まだ中学生(仮)さん
平均点: 6.58点 書評数: 109件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.29 5点 首七つ- ひろのみずえ 2019/12/26 19:15
陰湿で奇怪な7作品が収まった短編集。
いつの間にか不可解な出来事に巻き込まれていく多感な世代の少女たちが登場、虚実背中合わせの現代の怖さを淡々と描いている。7編読み終えると、じわりと怖さがこみ上げてくる。

No.28 6点 船乗りサッカレーの怖い話- クリス・プリーストリー 2019/12/15 20:31
嵐の夜、断崖の上に立つ古い宿屋に「あわれな船乗りを助けてくれないか」と、ずぶ濡れの男がやってきた。迎え入れたのはイーサンとキャシーの兄妹。父親は留守だった。
サッカレーと名乗る男は嵐が止むまで船乗り仲間から聞いたことをポツリポツリと語り始める。世にも美しい魔物、ジャングルからやってきた正体不明の生き物、密輸人や海賊などが登場する不思議な話ばかり。
それでも怖い話が大好きな兄妹はいつしかサッカレーの話に惹かれていく。さらに恐ろしい秘密が隠されているとも知らずに。前作「モンタギューおじさんの怖い話」同様に、巧みに仕掛けられた怖さが味わえる。

No.27 6点 危険ないとこ- ナンシー・ワーリン 2019/11/30 10:40
あやまってガールフレンドを死なせてしまったデイヴィッド。事故と認められ無罪になるが、故郷の街にはいられない。高校生活をやり直すため伯父の家に預けられるが、従妹のリリーの様子がどこかおかしい。
伯父も伯母も周囲の大人たちは誰も異常さに気づかず、彼だけが精神的に追い詰められていく。11歳の少女に一体どんな秘密があるのか。
99年エドガー・アラン・ポー賞YA小説部門受賞のサイコサスペンス。主人公をめぐる若者たちが魅力的で、一陣の涼風とも言える。美大生の少女、スキンヘッドの少年の個性が光る。児童向けとはいえ、緊迫感が伝わる心理状態も丁寧に描かれており楽しめる。

No.26 7点 月の光を飲んだ少女- ケリー・バーンヒル 2019/11/10 10:03
ファンタジーでありながら一風変わった物語。類を見ない着想、破綻のない構成、魅力的なキャラクター、内包する思想性などで2017年ニューベリー賞に輝いた。
毎年魔女に赤ん坊を捧げなければならない町があり、悲しみに閉ざされていた。だが事実は、赤ん坊は心優しい魔女たちに助けられ他の町で幸せに暮らしていた。ある年、助けた赤ん坊にうっかり月の光を飲ませてしまい魔力を持つようになって・・・。
魔法使い=卓越した能力の持ち主とはいえ幸せとは限らず、権力者は人知れぬ不幸を背負っている。「力」は使い方によって人々の幸不幸を左右する。本書の示唆するところは深く、優れたエンターテインメントの要素も併せ持ち、比類のない面白さ。

No.25 6点 キャットと王立劇場のダイヤモンド- ジュリア・ゴールディング 2019/11/03 09:50
18世紀末のロンドン。少女キャットは王立ドルリー・レーン劇場の支配人に拾われて育つ。劇場にダイヤモンドが隠されているという秘密を知ったことから、ギャングや公爵家を巻き込んだ大騒動が幕を開ける。
実在するロンドンの最古の劇場を舞台に、印象的なキャラクターが登場するシリーズ全9作の第一弾。キャットの恩人となるシェリダン支配人、看板俳優ケンブル、その姉で名女優のシドンズ夫人も実在の人物。
史実をスパイスに、何事もめげず立ち向かうキャット、バイオリン少年のペドロ、新入りで美青年のジョニー、正体不明の風刺漫画家キャプテン・スパークラーが活躍する冒険物語。

No.24 7点 羊の告解- いとうみく 2019/10/27 09:56
「告解」とは罪を告白し神に許しを求めること。だが物語の主人公である中学三年の少年の父親が犯した罪はとても許されるものではなかった。人の命を奪ってしまったのだから。
何かの間違いか、事故だったと信じたい涼平だったが、逮捕された父親は家族との面会をかたくなに拒む。真相も知らされないまま突如「加害者家族」となった彼は父の罪を背負うべき加害者なのか、それとも父に重荷を課せられた被害者なのか。
家族が友人が重大な事件を起こしてしまったら自分はどうあるべきか、その家族がもしもいじめられていたら・・・。罪を犯した人間が許されることを願うのは間違いか。「自分は絶対に罪は犯さない」と言い切れる人がどのくらいいるだろう。それぞれの立場になって考えながら読んでほしい作品。

No.23 7点 オリシャ戦記- トミ・アデイェミ 2019/10/06 14:08
オリシャ王国のサラン王は「魔師」たちから魔法を取り上げ、彼らを支配し、徹底的に抑圧する。ところが、魔法の復活を可能にする巻物が発見される。
父サランに大切な友人を殺された王女アマリは、その巻物を盗んで逃亡。そして、魔師の血を引くゼイン、ゼリィの兄妹と出会い、3人は、あらゆる魔力をよみがえらせようとする。その中でゼリィが魔法の力に目覚めていく。ところがアマリの兄イナンが父親の命を受けて3人を追ってくる。
行く先々で武力と魔法の戦いが繰り広げられるが、途中でイナンが自分の内にひそむ魔力に気づき、ゼリィに心をひかれるところから物語が暴れ始め、思いもよらない方向に走り出す。エンディングで驚き、著者のあとがきを読んで「この本に描かれた痛みや恐れや悲しみや喪失はすべて現実です」という言葉にはハッとさせられた。

No.22 7点 サリー・ジョーンズの伝説- ヤコブ・ヴェゲリウス 2019/09/29 10:22
今から百年前、アフリカの熱帯雨林の奥深くでゴリラの女の子サリー・ジョーンズが生まれた。嵐だったため、群れの長老はサリーが数々の不幸に見舞われるだろうと予言した。
それまでジャングルで幸せに暮らしていたサリーを突然、大きな不幸が襲う。密猟者に捕らえられ、町に送られて競りに掛けられたところから運命は狂いはじめる。周囲で起きる数々の未解決事件、出会いと別れ、繰り返される裏切りに孤独を感じる日々。それでも人を信じ愛したサリーは、幸せを手にすることが出来るのか。
友情と愛情、悪と犯罪、裏切り、憧れと希望、夢と冒険と独特なイラストが物語をさらに盛り上げる。絵本になりますが、絵本としてはかなり長めです。

No.21 7点 やまわろ- 釛子ふたみ 2019/09/17 20:58
極限状態に置かれた思春期の繊細で折れそうな心を持つ少女たちの感情の起伏を克明に描いている。
希望もなく、無気力に生きてきた少女絆奈。体育の授業で一泊の登山をするが、土砂崩れで山小屋は崩壊。かろうじて脱出した絆奈たち高校生は霧の闇を彷徨う。
そんな中で山の妖怪「やまわろ」を耳にした絆奈たちは互いの存在に疑念を持ち始め、加速度的に妄想を膨らませていく。この災難は誰のせい?「やまわろ」に取り込まれた誰かが何かを仕掛けた?狙いは何なのか?
実態は定かでは無いが確かに存在する「やまわろ」と巧みに仕立てられた状況設定が恐怖を植え付け、絆奈と一緒に闇夜の山中を迷っている錯覚を覚えさせる。

No.20 6点 世界を救う100歳老人- ヨナス・ヨナソン 2019/09/10 19:25
世界1000万部超の大ベストセラーとなったデビュー作「窓から逃げた100歳老人」の続編。101歳の誕生日パーティーで熱気球に乗ったアランはアクシデントのためインド洋を漂流。北朝鮮の船に拾われたものの、瞬く間にブリーフケースいっぱいの密輸ウランを巡る地球規模のトップシークレットに巻き込まれる。
紙ナプキンに書かれた機密文書、ナチとの遭遇。怒涛の大冒険の間も覚え立てのタブレットは手放さない。トランプやメルケルら各国リーダーを翻弄、ユーモアと皮肉と爆弾の知識で乗り越えていく。流儀は空気は読まない(読めない?)、好きなことをしゃべる。混迷する世界に生きる人間の憂いを笑いに転じるドタバタ痛快アドベンチャー。

No.19 6点 リヴァイアサン クジラと蒸気機関- スコット・ウエスターフェルド 2019/08/26 20:02
1941年のサラエボ事件で幕を開ける。暗殺された大公夫妻の息子アレックスは忠実な家臣と共にストームウォーカー(二足歩行戦闘メカ)で脱出。一方、男装して英国海軍航空隊に志願した少女デリンは、クジラを遺伝子改造した巨大飛行獣リヴァイアサンに搭乗。やがて二人は意外な場所で出会う。
遺伝子改造兵器に頼る(ダーウィニスト)陣営と蒸気機関を発達させた(クランカー)陣営が対立するもうひとつの第一次世界大戦を背景に、血湧き肉躍る冒険が展開する。米国版ライトノベルと言えなくもないが、史実をうまく使い、大人の読者も楽しませてくれる。

No.18 6点 暗闇のファントム- イアン・ベック 2019/08/14 10:52
深井霧の夜、幽霊がロンドンを徘徊していた。タワーの屋上で男の生首が発見され、人々は震え上がった。家出少女は知らなかった。なぜ育ての親のもとで人目を避けて暮らさなければならなかったのか、幽霊と恐れられるファントムと自分との間にどんな宿命があるのか。ロンドンが本当はどんな場所なのか。
大道芸人の仲間となったイヴのもとへ通うバイブル・Jや、イヴと同じ青い瞳の青年ケイレブと出会い、謎は次第に明らかになっていく。ヴィクトリア朝時代を模したテーマパーク、パスとワールドを舞台に繰り広げられる近未来サスペンス・スリラー。

No.17 7点 美術館にもぐりこめ!- さがらあつこ 2019/08/06 20:37
ふしぎ美術館のお宝を狙って忍び込んだちょっとドジな泥棒3人組。彼らと一緒に美術館の裏側をのぞいてみましょう・・・そんなストーリーに乗せて紹介する美術館職業ガイド。
企画展がどのようにスタートするのか、絵や彫刻など美術品がどうやって運ばれ、展示されるのか、絵の並べ方や照明の工夫、収蔵庫の秘密。学芸員や警備員、空調管理や清掃員、受付や監視員など「美術館のプロ」たちの仕事ぶりから、美術館が誰でも訪れることが出来る公共施設として成り立っていることを立体的に知ることが出来る。「モナ・リザ」がトマトを持ち、マネ「笛吹き」は笛の代わりにきゅうりをかじって・・・作中描かれる展示品はさりげない世界的名画のパロディーになっており楽しい。

No.16 8点 戦火の馬- マイケル・モーバーゴ 2019/07/27 09:21
主人公は英国の片田舎の農場で暮らす美しい馬ジョーイ。第一次世界大戦勃発とともに愛する少年と引き離され、戦場の最前線に送られてしまう。
大地を引き裂く砲弾、鉄条網に引っ掛かりもだえ苦しむ仲間の馬たち。悲惨な現実が続く中でも、敵味方を問わず優しい人々との触れ合いも体験・・・。命を懸けた旅路の末にもたらされたのは「奇跡」。
物語はジョーイの一人称で進む。著者のライフワークでもある戦争の残酷さ、愚かさを馬の目を通して描いた卓抜なアイデアは舞台化され、高い評価を得た。スピルバーグが監督をし、映画化もされている。

No.15 7点 オクサ・ポロック2- アンヌ・プリショタ 2019/07/20 10:06
図書館司書2人による自費出版はフランスの中高生の間で人気沸騰してシリーズ化、第二弾は「迷いの森」。
地球上の見えない世界(エデフィア)の君主となる運命を背負った13歳のオクサ。親友ギュスが行方不明になり仲間の逃げおおせた人たちとともに新たな冒険に旅立つ。反逆者の陰謀、入り乱れる敵と味方、新たに明かされる家族の秘密・・・。物語は重層的に展開する。
ファンタジーの本場英国でも英国版刊行2日目で緊急重版。従来のファンタジーと違って異世界の出来事ではなく、自分の身の回りでも起こりそうと読者が共感、こまやかに描かれる友情も人気の秘密らしい。

No.14 6点 海辺の町の怪事件- ジュディス・ロッセル 2019/07/07 09:19
幼い頃両親を亡くしたステラは厳格な3人の伯母に育てられている。健康オタクの伯母たちは各地の保養所を転々、今は海辺のホテルで退屈な毎日を送るステラの楽しみは古い地図帳をながめ想像の翼を広げること。ある日、宿泊客の老紳士から「これを守ってくれ」と小さな包みを預かったことから謎の一団に追いかけられ、いきなり冒険に引きずり込まれていく。
ヴィクトリア調が舞台のミステリー「ステラ・モンゴメリーの冒険」第一弾。大魔術師、幻視少年、芝居小屋の少女、外国人の猫使いなどが登場する、ちょっとダークな物語。お話にぴったりなイラストは画家でもある著者自らが描いたらしい。伯母たちの圧力に負けず、自分のルーツを探そうと決意するステラが頼もしい。

No.13 8点 鐘は歌う- アンナ・スメイル 2019/06/23 10:29
ヒューゴー賞、ネビュラ賞と並ぶ三大賞の一つ世界幻想文学大賞を受賞した英国のファンタジー小説。
舞台は「大崩壊」によりがれきの街と化したロンドン。朝晩の鐘の音が人々から不安を取り除き秩序をもたらしている。両親を亡くして農村を出てロンドンを訪れたサイモンは、不思議な目を持つ少年と出会い・・・。
サイモンの視点で進む物語冒頭から謎だらけ。だが次第に音楽が意思伝達手段として用いられていることや、すぐに人々の記憶が薄れてしまうことなどが明らかになってゆく。
著者はロンドン大学で英文学の博士号を所得したニュージーランド出身の詩人で、本作で小説家デビューを果たした。詩作で培った手腕を発揮し、歌うような文章で独特の世界観を構築している。

No.12 7点 オクサ・ポロック- アンヌ・プリショタ 2019/06/07 18:39
ファンタジーといえば英国が本場というイメージが強いと思いますが、フランスでも話題シリーズがあります。
主人公はもうすぐ13歳になる女の子オクサ・ポロック。ある時、手のひらから炎が上がり、自分の不思議な力に気付いたことで一族の秘密を知り、仲間と波乱の運命に立ち向かう。
「ハリー・ポッター」と重なる部分もあるが、特にコミカルで丁寧な心理描写にフランス小説らしさがうかがえる。
図書館司書2人の自費出版に始まった本国では中高生からロックスターさながらの熱い支持を得て、シリーズ累計30万部のベストセラー。世界27の国・地域で翻訳されている。

No.11 7点 放課後のジュラシック 赤い爪の秘密- 森晶麿 2019/04/04 19:18
自らを「小説家」ではなく「虚構家」と名乗ることが多い著者のYA小説。恐竜は絶滅しておらず高度な知能を持ちつつ現代社会に生息するという設定に謎解きの要素が絡む物語からは、読者が子供でも本気な著者の姿勢が感じられる。
恐竜と謎解きのモチーフは、「虚構家」の巧みな筆によって上質なエンターテインメントに融合されているが、特筆すべきは作中で、登場人物たちが虚構である恐竜映画のシーンを引き合いにしてその行動を左右しているところ。
著者は「虚構」こそが世界を変える原動力であると言いたいのかもしれない。想像力や妄想力たくましい多感な少年少女にこそ読んでもらいたい一冊。

No.10 7点 ジョシュア・ファイル- マリア・G・ハリス 2019/03/26 19:11
2012年12月22日にマヤの長期暦が終わっていることから取りざたされた「世界の終末」と、古代マヤの写本を巡る冒険シリーズ。
ジョシュたちの活躍の末、写本を取り戻したものの、肝心の地球を救う手立ての解明は進まないまま。解決の糸口は未来から?最後に待ち受けるのは思いがけない事態。物語は大団円に向かって一気に加速する。
この物語は作者が骨折療養中に書き始めた処女作。世界中を舞台に、扱う素材もマヤの予言やタイムトラベル、パラレルワールド。張り巡らされた伏線は数知れず、複雑極まりないが、作中に絶えず流れるジャズやボサノヴァをはじめ、文学や考古学の造詣の深さが溢れている。

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まだ中学生(仮)さん
ひとこと
いい大人ですが、ティーンエイジャー向けの小説を読むのが好きです。そのような作品を中心に感想を投稿していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
好きな作家
採点傾向
平均点: 6.58点   採点数: 109件
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