皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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まだ中学生(仮)さん |
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| 平均点: 6.58点 | 書評数: 125件 |
| No.45 | 6点 | 月のケーキ- ジョーン・エイキン | 2020/10/18 16:06 |
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| 丘に体を巻きつけているおとなしいドラゴンを観光の目玉にしていた町に騎士が現れ、電光剣でドラゴンの首をはねてしまい、困った町民がドラゴンの卵から赤ちゃんをかえして代わりにしようとする話がひとつ。
他に、家を燃やしてしまったが、時計の針を戻すことができる月のケーキを作らないかと持ち掛けられて迷う少年の話や、崖の上に立つヤシの木に、大霜がおりるというのでいろんな服を着せて布でくくったら、踊って逃げ出した話。「死んでしまった人にさようならを言える」方法を巡る話もある。 どれも読者をあっと言わせるファンタスティックな作品。ナンセンスなものもあり、しんみりと心に染みるものもあり、どれも魅力的だが、いかにも現代風のひねりが効かせてあるところが嬉しい。 |
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| No.44 | 6点 | 本能寺の敵- 加部鈴子 | 2020/10/07 20:49 |
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| 物語の舞台は織田信長が天下統一目前の戦国時代。主人公の涼音は孤児となり、忍びとして育てられた少女。信長の家臣明智光秀の屋敷に女中として仕えていた。光秀や家族に心惹かれていくが、かつての仲間、風斗が忍び込む。徳川家康に仕える風斗は味方なのか、敵なのか。やがて物語は歴史上有名ながら謎の多い本能寺の変へと動き出していく。
動乱の時代に情報収集として忍びの存在が欠かせなかっただろうと、忍者研究者の山田雄司さんが解説で述べている。優秀な忍びほど名は残さなかったそうだ。もしかすると涼音や風斗のような忍びが本能寺の変に関わっていたかもしれない。歴史を動かしていたのは戦国武将ではなく、彼らのような存在だったのか興味深く読めた。 |
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| No.43 | 6点 | ぼくの名はチェット- スペンサー・クイン | 2020/09/08 20:00 |
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| 語り手が犬なので、人間の会話の言い回しが分からなくて混乱したり、テーブルの下に落ちている食べ物に気が散ったり、突然穴を掘ったり始めたりと普通のミステリのようなわけにはいかないのだが、そこがまた妙にリアルで面白い。 | |||
| No.42 | 8点 | フランケンシュタイン家の双子- ケネス・オッペル | 2020/08/11 20:01 |
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| 時代はフランス革命の最中。舞台は都市国家ジュネーブの市街から6キロほど離れた村のはずれ。主人公は、共和国に4人いる行政長官の息子ヴィクター。双子の兄コンラッド、遠縁の少女エリザベス、3人の親友で詩人肌のヘンリーが脇を固めている。
4人はそれぞれ性格が違っていながらも仲良く過ごしていたが、ある日、コンラッドが原因不明の病気で倒れるところから物語が始まる。 近代科学が隆盛になりつつある時代でもまだ、魅力を持っていた錬金術、それを核に、おどろおどろしい恐怖小説の不気味さをたっぷり絡め、愛と友情と嫉妬と裏切りの冒険小説が展開する。 それに色を添えるのが、コンラッドとエリザベスの淡い恋と、そんな二人に抱くヴィクターのぎこちない気持ち。文学馬鹿のヘンリーもいい味を出している。最後の最後まで予断を許さない展開と、圧倒的な迫力が素晴らしい。 |
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| No.41 | 5点 | 英国情報局秘密組織CHERUB<Mission7>疑惑- ロバート・マカモア | 2020/08/02 09:37 |
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| 私立探偵だった著者が読書嫌いの甥っ子のために書いた英国で大ベストセラーのシリーズ。
英国情報局の秘密組織チェラブ(CHERUB)は17歳以下の子供が活躍するスパイ機関で、大人の裏社会に立ち向かう。思春期ならではの恋愛感情や葛藤などもリアルに描かれている。 |
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| No.40 | 8点 | 夜中に犬に起こった奇妙な事件- マーク・ハッドン | 2020/07/06 18:11 |
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| 自閉症というテーマを扱いながらもユーモアたっぷりのユニークな小説。
細かい感情のニュアンスが理解できないクリストファーの思考回路に笑いながらも、彼の視点がだんだん理解できるようになる。数学の問題や思考を説明するイラストなども楽しい。 主人公の思考回路や数学の問題などを描いた個所は難しいかもしれないが、文章は平易なので読みやすい。 |
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| No.39 | 6点 | ピッツェリア・カミカゼ- エトガル・ケレット | 2020/06/22 18:15 |
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| イスラエルの作家の中編小説。「クレネルのサマーキャンプ」を国際漫画大賞のアサフ・ハヌカがコミック化。
自殺者だけが集まる世界を舞台に、男女3人の奇妙な道行きが描かれる。生前暮らしていたテルアビブそっくりの町で働く「オレ」。死後間もなく最愛の恋人エルガも自殺したと知り、男友達アルと彼女を探す旅に。途中で美人ヒッチハイカーも加わり、「意味のない奇跡」に満ちたサマーキャンプに辿り着く。 ケレット作品の持つシニカルな笑いと、エスプリの効いたオールカラーの絵が絡み合って、死後もなお人々にまとわりつく「生」の悲哀をあぶり出す。 |
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| No.38 | 6点 | 南河国物語 暴走少女、国をすくう?の巻- 濱野京子 | 2020/05/25 19:52 |
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| 古代中国風の架空の国を舞台にしたファンタジー。
仕事を求め都に上ってきた飾り職人の父が天下に名をとどろかせる雷将軍に間違えられるところから物語は始まる。「将軍の名をかたる不届き者」として父と共に役人に捕らわれた哀れな娘。ところが、この娘がまた大した度胸の持ち主...。 男社会の宮中で大人たちを手玉に取り、何ともちゃっかりとのし上がっていく様子が痛快で、ページをめくるごとに元気が湧いてくる愉快さがある。 |
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| No.37 | 5点 | 貧乏お嬢さま、メイドになる- リース・ボウエン | 2020/04/30 20:14 |
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| ミステリとしてはシンプルだが、ビクトリア女王と血縁関係にある主人公が掃除婦をしているのがバレそうになって冷や汗をかくところや、気位が高い没落貴族たちの滑稽なやりとりなどミステリ以外の要素も楽しい。
セクシーでミステリアスなお相手とのGeorgianaのロマンスの行方も興味深い。 |
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| No.36 | 6点 | パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 盗まれた雷撃- リック・リオーダン | 2020/04/17 20:12 |
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| ギリシャの神の血を引いていると突然告げられた少年パーシーが神々による戦争を止めるため、ニューヨークからロサンゼルスまで米国横断の冒険に出掛ける。
ギリシャの神々が米国に住んでいるという設定が面白い。神々の住むオリンポス山はエンパイアステートビルにあり、禁酒中の酒の神が飲むのはダイエットコーク。米国の都市や文化、ギリシャ神話について少しでも知識があれば、随所で笑ってしまうでしょう。 エドガー賞のミステリ作家だけに読者を引っ張っていく展開は見事。親に愛されない、親をうまく愛せない子供という現代的な問題をさりげなく描きながら、気持ちの良い読後感を残す。 |
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| No.35 | 6点 | 七不思議探偵アマデウス! モーツァルトはミステリーがお好き?- 如月かずさ | 2020/04/05 09:25 |
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| 「音楽室の肖像画の目が動く」「校庭の銅像は夜中になると歩き出す」など、皆さんの学校にも「七不思議」のような噂はなかったでしょうか?
本書はまさにその妖しい「七不思議」と一緒に、小学6年生の浅里エリカが学校で起こるさまざまな事件を解決するコミカルなミステリシリーズの第一巻。 転校生のエリカが音楽室の壁の肖像画モーツァルトに話しかけられることから始まり、美しい音楽教師の悩みや校庭に捨てられたラブレターの謎など3事件を解決する。幽霊司書や開かずの教室の少女など七不思議の面々もユニークで楽しいが、悩める誰かのために真剣に謎に取り組むエリカの優しさにほっとさせられる。 |
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| No.34 | 8点 | ブラック・トムのバラード- ヴィクター・ラヴァル | 2020/03/29 10:45 |
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| 恐怖・幻想小説で有名なH・Pラブクラフトの短編「レッド・フックの恐怖」を大胆に書き換えた作品。
舞台は1924年のニューヨーク。主人公はアフリカ系米国人の青年、トミー。墓地の前でギターを弾いていたところ、老人が「我が家でパーティーを開く予定でね。来客のために演奏してもらえないかな」、と話しかけ、望外な謝金を約束して去っていく。トミーは嫌な予感がした。 ハードボイルド風のミステリが後半いきなり暴力的な幻想小説に展開していくところが凄い。 人種差別主義者ラブクラフトの差別的な作品を、彼の作品を愛するアフリカ系の作家が鮮やかにひっくり返して見せている。 |
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| No.33 | 6点 | お屋敷の謎- ジュディス・ロッセル | 2020/03/08 10:57 |
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| 幼い頃を過ごしたアームウッド・マイアの屋敷に戻ったことから、ステラの過去の秘密が明らかになっていく。
今回もまた、作者自ら描くイラストがほぼ全てのページを飾る。ヴィクトリア調が舞台とあって古めかしいお屋敷や冒険家だったひいひいおじいさんの日記、子供部屋に残された昔の玩具など雰囲気も魅力的。写真に写っている女の子は自分の姉妹なのか、ママはどこに消えたのか。新たな謎が浮上する。3巻完結で、原書は今春刊行予定。 |
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| No.32 | 6点 | ムジナ探偵局 完璧な双子- 富安陽子 | 2020/02/27 19:20 |
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| 古書店ムジナ堂には別の顔がある。店主の嶋雄太朗は怪事件しか依頼を受けないムジナ探偵だ。自称おしかけ助手の源太少年との迷コンビが常識では解決できない奇妙な事件を、常識外れの名推理で解決していく。探偵小説の醍醐味と、妖怪や幽霊の出る奇妙な世界を存分に味わえる。 | |||
| No.31 | 6点 | 復讐プランナー- あさのあつこ | 2020/02/02 20:32 |
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| いじめは誰にでも起こり得る。主人公雄哉は周りを刺激しない普通の中学一年生だが、そんな生徒にも常にリスクはある。「悔しいなら復讐計画を立ててみればいい」と物騒なことを薦める先輩が現れ、物語は驚くような解決方法を経て意外な方向へと進んで行く。
中高生に社会問題や人間関係の指南をする教養書シリーズ「14歳の世渡り術」の初めての小説。「いじめに復讐で対抗するのを薦める本では」と誤解を招くかもしれないが、雄哉は最後までいじめを許さない。いじめっ子を憎んでもいない。そこに到達するまでの事件と変化はドラマティックで、いじめを通して人が何をもって大人になるのかを追体験できる青春小説。 |
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| No.30 | 5点 | 雨の恐竜- 山田正紀 | 2020/01/09 20:27 |
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| 恐竜の化石発掘現場がある田舎町で、20年の時を隔て2つの不可解な死亡事故が起こった。いずれも死体の近くに恐竜の形跡が発見され、恐竜が犯人だという噂まで流れる。
14歳の少女ヒトミ、サヤカ、アユミは幼馴染だが、疎遠になっていた。しかし3人とも事件に関心を持っていた。少女たちには、夕焼けを背にゆっくり歩いて行く恐竜を見たという忘れられない記憶があった。恐竜が犯人の筈はないと信じる少女たちが真相究明に乗り出す。 物語の展開とともに大人の世界の狡さ、いやらしさと、思春期の少女たちのピュアな想いがぶつかる。ミステリアスな謎解きと、少女たちの心の成長が絡んだ青春ミステリ。 |
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| No.29 | 5点 | 首七つ- ひろのみずえ | 2019/12/26 19:15 |
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| 陰湿で奇怪な7作品が収まった短編集。
いつの間にか不可解な出来事に巻き込まれていく多感な世代の少女たちが登場、虚実背中合わせの現代の怖さを淡々と描いている。7編読み終えると、じわりと怖さがこみ上げてくる。 |
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| No.28 | 6点 | 船乗りサッカレーの怖い話- クリス・プリーストリー | 2019/12/15 20:31 |
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| 嵐の夜、断崖の上に立つ古い宿屋に「あわれな船乗りを助けてくれないか」と、ずぶ濡れの男がやってきた。迎え入れたのはイーサンとキャシーの兄妹。父親は留守だった。
サッカレーと名乗る男は嵐が止むまで船乗り仲間から聞いたことをポツリポツリと語り始める。世にも美しい魔物、ジャングルからやってきた正体不明の生き物、密輸人や海賊などが登場する不思議な話ばかり。 それでも怖い話が大好きな兄妹はいつしかサッカレーの話に惹かれていく。さらに恐ろしい秘密が隠されているとも知らずに。前作「モンタギューおじさんの怖い話」同様に、巧みに仕掛けられた怖さが味わえる。 |
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| No.27 | 6点 | 危険ないとこ- ナンシー・ワーリン | 2019/11/30 10:40 |
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| あやまってガールフレンドを死なせてしまったデイヴィッド。事故と認められ無罪になるが、故郷の街にはいられない。高校生活をやり直すため伯父の家に預けられるが、従妹のリリーの様子がどこかおかしい。
伯父も伯母も周囲の大人たちは誰も異常さに気づかず、彼だけが精神的に追い詰められていく。11歳の少女に一体どんな秘密があるのか。 99年エドガー・アラン・ポー賞YA小説部門受賞のサイコサスペンス。主人公をめぐる若者たちが魅力的で、一陣の涼風とも言える。美大生の少女、スキンヘッドの少年の個性が光る。児童向けとはいえ、緊迫感が伝わる心理状態も丁寧に描かれており楽しめる。 |
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| No.26 | 7点 | 月の光を飲んだ少女- ケリー・バーンヒル | 2019/11/10 10:03 |
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| ファンタジーでありながら一風変わった物語。類を見ない着想、破綻のない構成、魅力的なキャラクター、内包する思想性などで2017年ニューベリー賞に輝いた。
毎年魔女に赤ん坊を捧げなければならない町があり、悲しみに閉ざされていた。だが事実は、赤ん坊は心優しい魔女たちに助けられ他の町で幸せに暮らしていた。ある年、助けた赤ん坊にうっかり月の光を飲ませてしまい魔力を持つようになって・・・。 魔法使い=卓越した能力の持ち主とはいえ幸せとは限らず、権力者は人知れぬ不幸を背負っている。「力」は使い方によって人々の幸不幸を左右する。本書の示唆するところは深く、優れたエンターテインメントの要素も併せ持ち、比類のない面白さ。 |
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