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まだ中学生(仮)さん
平均点: 6.53点 書評数: 87件

プロフィール高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.87 7点 うそうそ- 畠中恵 2023/01/24 21:47
舞台は江戸、廻船問屋兼種問屋・長崎屋の跡取り息子の「若だんな」こと一太郎は、体が弱くて伏せりがち。心配する親や手代の甘やかしぶりや気遣いときたら並大抵じゃない。でもそんな環境にあっても、若だんなは意外としっかり者。何より彼には、妖怪が見えて話ができる特別な力があった。そんな設定で、ミステリ仕立てのストーリーが展開する時代物「しゃばけ」シリーズの五作目。
地震の続く江戸から、箱根へ湯治に出かけた若だんな。誘拐されたり天狗に襲われたり、散々な目に遭いながら人間たち、そして人間ならざる者たちの抱える思いや悩みを解決へと導いていく。温かい気持ちになれる作品。

No.86 6点 菓子屋横丁月光荘 歌う家- ほしおさなえ 2023/01/03 22:26
埼玉県川越市が舞台。家の声が聞こえる不思議な力を持つ青年を軸に、過去と現在が緩やかに交錯していく。心に傷を負い、人と関わらないように生きてきた守人だが、縁あって蓄70年の古民家の管理人をすることに。
川越という街並み、そこに流れる穏やかな時間、古いものの美しさ、人のつながりの豊かさ。本を片手に川越を歩いてみたくなるファンタジーミステリ。

No.85 7点 空き家課まぼろし譚- ほしおさなえ 2022/12/13 21:16
「海市」という架空の街の空き家をめぐる物語。建物には、様々な人の営みの歴史がある。一枚の写真から、撮影の瞬間を映像として再現する力を持つ少女が登場して謎を解く。
ファンタジーやミステリの要素に引き込まれつつ、不可逆的な時間への切なさが滲む。

No.84 7点 あかずの扉の鍵貸します- 谷瑞恵 2022/11/22 23:04
人の心には記憶が蓄積していくが、それは家もまた同じ。この作品は、さまざまな人の大切な記憶を閉じ込めた、奇妙な洋館の温かい物語。
洋館の作り方や室内のレリーフの描写が非常に楽しく、こんな屋敷があるなら行ってみたいと思わせる。下宿人たちが抱える事情はみな複雑だが、困っている人に手を差し伸べずにはいられない朔実と、距離を置いて冷静に見守る風彦、どちらのスタンスも思いやりがあって心地よい。朔実が少しずつ風彦に恋心を抱く過程や、謎めいて見えた彼の人間味が見えてくる様子も胸をくすぐり、作者ならではの醍醐味がある。
人の心の「あかずの扉も、無理やりこじ開けようとせず、開かれるタイミングを待つことが肝要と感じさせてくれる。心優しい「館もの」として楽しませてくれる。

No.83 7点 天方家女中のふしぎ暦- 黒崎リク 2022/11/07 22:12
舞台は昭和五年。主人公の結月は、16歳にして天涯孤独で訳ありの少女。霊感が強いことから周囲から気味悪がられていた。奉公先を追い出され、田舎から都会に出て仕事を探し、天方家で女中として雇われることになる。
天方家は穏やかな主人の涼と朗らかで天然な閑子夫人、素っ気ない14歳の息子漣の一見普通の三人家族。しかし、実は怪現象が次々起こることから、女中がすぐに辞めてしまう、いわくつきの家であった。
結月は主人の怪しい仕事を手伝わされたり、息子の式神に見張られたり、子犬の霊につきまとわれたりと、奇怪な出来事に大忙し。さらに何か大きな秘密があるようで。不思議な日常と奇妙な事件を描く昭和ロマンあふれる和風ファンタジー。

No.82 5点 コカチン 草原の姫、海原をゆく- 佐和みずえ 2022/10/15 22:11
モンゴルの史実から着想を得て生まれたファンタジー小説。元の皇帝フビライ・ハンの愛娘コカチン姫はおてんばな性格。タカ狩りを楽しみ、草原を駆け回る彼女はある日、遠方にあるイル・ハンの国の王の花嫁にと望まれる。
姫たち一行は海路でイル・ハン国に向かうが、海賊や鬼女、悪魔が道中で待ち受ける。持ち前の勇敢さで困難を切り抜ける姫の姿が痛快だ。
ただ、正義感から先々で事件に首を突っ込み、危険にさらされることも。姫の窮地を救うのは、旅の随行者でイル・ハン国からの使者パルス。当初は反感を抱く姫だったが、交流を重ねるうち彼の存在が大きくなっていく。ヒロインの心の成長も読みどころ。

No.81 7点 夏休みの空欄探し- 似鳥鶏 2022/09/18 21:49
部員二人のクイズ研究会会長で高校二年の成田頼伸(ライ)は、クラスで「じゃない方」と呼ばれている。同じ名字でダンス部所属の人気者、清春(キヨ)が同級生だからだ。キヨとは仲良くできないと感じていたライだったが、夏休みのある日、ひょんな縁で出会った姉妹も一緒に、四人で暗号を解くことになる。
謎の人物が作成したクイズに挑む青春恋愛ミステリ。問いの答えは次の問題の在りかを示し、四人は各地を移動しながら出題者を追うこととなる。
友達が少なく、会話も苦手なライはキヨに劣等感を抱き、一方のキヨは自分にライほどの豊富な知識がないことを嘆く。友情を深める過程で互いの長所を発見し、それぞれの恋を応援する様子がほほえましい。

No.80 6点 ガラスの魚- 山下明生 2022/08/26 22:36
戦後7~8年がたった瀬戸内の島が舞台。足の怪我をこじらせて夏休みを棒に振った中学生のアキラが、夏休み最終日に校門前で謎の死体を発見するところから始まる。
事故か事件か。捜査が始まるが、松葉づえ姿を「かかし」とからかわれたり、父らしき人物が島に現れたり、1学年上の少女に夜釣りを教えたり、ヤクザに命を狙われる青年をかくまったり。次々と起こる出来事に心は泣いたり笑ったり、絶望と希望の間を揺れ動く。
最終章で級友と自転車のチキンレースの結末が清々しい。思春期に差し掛かり、壁を乗り越えていく少年の心模様に共感する。

No.79 6点 いけよし!花咲中学華道部- 結来月ひろは 2022/08/01 21:09
主人公の良多は自分には何の才能もなく、平凡であることにコンプレックスを抱く中学一年生。しかし、入学早々に「学校一の変人」で有名な美少年、薫に華道の才能を見出され、廃部寸前の華道部に入部することに。
そこで起きる「花」にまつわる五つの事件が描かれる青春ミステリ。個性豊かな新入部員たちのエピソードも、友達関係や自身についての悩み多き世代には刺さるのではないか。
「才能とは誰もが一目で分かるようなキラキラしたものだ」と言う良多に対し、華道部顧問の万智が放った言葉は「才能ってさ、キラキラしてないといけないってことはないんじゃない?」。青春小説としてもミステリ小説としても楽しめる。

No.78 7点 飛ぶ孔雀- 山尾悠子 2022/07/17 22:19
「飛ぶ孔雀」と「不燃性について」の2部からなる。二つをつなぐ世界は前者の冒頭で示される。「シブレ山の石切り場で事故があって、火は燃え難くなった」。つまり作品の舞台は「火が燃え難くなった世界」だ。
少女のトエは外の物干し場で七輪の火をおこすようになる。近くに川が流れている。ある時物干し場へ川舟が近寄ってくる。「そこへ行ってもいいかな」と言ってやって来たその人が、トエの恋人になる。
前半のクライマックスは真夏の庭園で開かれる茶会だ。火を運ぶ女たち。派手に飛ぶ孔雀。具体的なのに幻想的である場面だが、何が起きているのか、はっきりつかむのは難しい。
後半は、大蛇がうごめく地下世界や山での出来事がつづられる。前半と重なる固有名詞も出てきて、最後まで読むと、前半とのつながりがぼんやり浮かび上がってくる。人間が動物になったり、するりと異界に入り込んだり。これほど奇異な時空間を言葉で構築する作家の力量に驚愕。

No.77 6点 スカーレットとブラウン あぶないダークヒーロー- ジョナサン・ストラウド 2022/07/03 22:21
舞台は、未来のイングランド。大規模な気候変動の後、わずかに生き残った町と、その周辺の無人地帯に分かれた。スカーレットは荒れ果てた国を渡り歩く無法者の少女。今日も銀行から札束を盗むと、森に逃げ込んだ。
そこで出会ったのが、アルバート・ブラウン。横転したバスの中、野獣の餌食になるのを免れ、唯一生き残った男の子だ。追っ手を交わしながら、危機一髪の逃走を繰り広げる二人。
大胆不敵なスカーレットに、おっとりしたアルバート。デコボココンビの掛け合いが面白い。いつもは足手まといだが、追い詰められるとなぜか不思議な力を発揮するアルバートの秘密が明かされていくのが、最大の読みどころ。

No.76 7点 鵺の家- 廣嶋玲子 2022/06/18 22:34
大富豪の天鵺家が、跡取りの少年・鷹丸の遊び相手を募集した。活発な少女・茜は、守護神の雛里が見えたことでその役に選ばれ、天鵺家の養女になる。
高価な調度品が並ぶ屋敷で暮らし始めた茜は、まず家族全員が鷹丸に冷淡で、謎めいた世話係の静江が鷹丸の面倒を見ている異様さに驚く。天鵺一族が、屋敷の背後に広がる黒羽ノ森から跡取りを殺すために襲撃してくる虫を恐れ、奇妙なしきたりを守り、奇怪な儀式を行う不気味な展開は、まさに和製ゴシック・ホラーといえるだろう。
特に儀式の日、一人で屋敷を守ることになった茜が、天鵺家を呪う虫の大群に襲われる場面は、背筋が凍るほど恐ろしい。やがて茜は、一族の繁栄のため人知れず家族を切り捨てた天鵺家の暗い過去が、呪いを生む原因だったことを知る。
茜が、天鵺家の悲劇を終わらせるため使った方法は、家庭や社会に根を張る「闇」と戦うには何が必要かを教えてくれる。

No.75 6点 オレンジ色の不思議- 斉藤洋 2022/05/28 22:42
家の近くを散歩していると、時々見知らぬ女の子が声を掛けてくる。とても美しい少女だ。「言われないと見えないものってあるよね」と謎めいたことを言うのだが、少女がそばにいると、周囲で不思議なことが起こる。
道を歩いている警察官の後を少女と追いかける。しかし、どんなに歩いても、走っても、警察官には追い付けない。なぜだろう?警察官は何者なのか?ゴースト・ストーリーと題する短編集だが、分かりやすいお化けや幽霊は登場しない。
日常生活の中に突然、奇妙な光景が現れる。そんな怪奇現象が描かれる。あの警察官、ひょっとして、この世の者ではないのかもしれない。そう思い至った時、体の奥底からやってくるゾクゾク感が味わえる。

No.74 6点 後宮の烏- 白川紺子 2022/05/12 23:22
架空の中国を舞台にした、いわゆる中華ファンタジー。後宮に住みながら夜伽をしない妃、烏妃。半ば伝説のような烏妃と、若い皇帝が出会った時、物語は動き始める。死者の声を聞くことが出来る烏妃が、謎と人々の思いを解きほぐしていく、オムニバス形式のミステリ。
片方だけの翡翠の耳飾りに取りついた女の幽霊、いつまでたっても鳴らない葬送の花笛、とうに死んだ雲雀の語る秘密、玻璃の櫛に秘められた悲恋。キラキラしく、艶やかだがしっかり中身もある。

No.73 8点 闇の魔法学校- ナオミ・ノヴィク 2022/03/26 22:20
魔法使いを養成する学校と聞き、多くの人が思い浮かべるのは世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズに登場するホグワーツ魔法魔術学校だろう。
だが、米ファンタジー作家の著者が本書で描くのは、ホグワーツとは全く異なる殺伐としたサバイバル生活だ。
舞台は闇に浮かぶ巨大なスコロマンス魔法学院。教師はおらず、しばしば怪物が襲い掛かってくる。生徒たちは四年後の卒業まで生き延びられなければ、現実世界には戻れない。
生徒同士の争いも絶えず、皮肉屋の主人公ガラドリエルは誰とも打ち解けられない。権謀術数が渦巻く学園で、彼女は仲間を作り、活路を見いだせるのか。独特の世界観が魅力のダーク・ファンタジー。

No.72 7点 影踏亭の怪談- 大島清昭 2022/03/10 22:31
民俗学がらみの怪奇ミステリ。怪談作家の呻木叫子が遭遇する奇怪な事件が並ぶ。
べたべたとお札の貼られた部屋で発見された両目をえぐられた死体。公民館の一室で発見された泥だらけの死体。いずれの事件も心霊スポットや怪奇現象の噂のある場所で発生している。
呻木叫子もそれらの謎を探るうちに、まぶたを自らの髪の毛で縫い合わされたまま椅子に粘着テープで固定されたり、廃工場で心霊番組のロケ中に落ちてきた冷凍メロンで頭を強打して意識を失ったり、と不可解な事件に巻き込まれていく。
物語は彼女の書いた原稿と、ほかの人々の語り、三人称の描写で進む。どの事件も彼女の論理的な推理で犯人が突き止められていくのだが、最後の方でいくつものエピソードをつなぐ闇の存在が物語をまとめていく。
その試みはうまく成功しており、どの話もなんとなく後味の悪さを残していて、これもまた大きな魅力になっている。

No.71 7点 いつものBarで、失恋の謎解きを- 大石大 2022/02/22 22:14
31歳の会社員、大谷綾は平成最後の日、バーのママを相手に「私っていつもこうなんです。好きな人や恋人ができても、必ず今日みたいに、男性がたいした理由もないのに急にへそを曲げちゃって、理不尽な形で関係が終わっちゃうんです」とこぼす。
彼女の口癖は「意味わかんない」。打ち明け話をカウンターの隅で聞いていた男が「ホーソン実験をモデルに考えれば答えが導き出せるかもしれません」と、話の細部を拾い、振られた理由を見事に解き明かす。
男はそんな風に、小5の初恋から現在に至るまでの不可解な失恋話を、心理学の諸理論を使ってさばいていく。平成を代表する事件事故やヒットソングが散りばめられたそれぞれのエピソードが、作品後半から一つの大きな物語にまとまっていくのが面白い。

No.70 6点 12歳のロボット ぼくとエマの希望の旅- リー・ベーコン 2022/02/02 22:53
環境汚染や戦争を引き起こす愚かな人間を、ロボットが排除して30年後の世界が舞台。
12歳のロボット「XR935」は、与えられた任務をこなす無駄のない日々を送っていた。滅ぼしたはずの人間の少女、エマを見つけるまでは。
米作家による本書は、敵同士のロボットと少女の友情を描いた。「人間がいない方が、世界はずっと素晴らしい」と考えていたXR935だったが、他のロボットに命を狙われるエマが気に掛かり、同僚ロボットと共に彼女を助けることに。
交流を重ねるうち、乱暴で強欲だと教えられてきた人間に、面白くて愛情深い一面があると知る。ロボットたちの個性が魅力的な冒険SF小説。

No.69 7点 怪物はささやく- パトリック・ネス 2022/01/17 23:11
難病の母親と二人暮らしの13歳の少年コナーの前にある日突然、怪物が現れる。それは家の窓から見えるイチイの木の姿をしていた。怪物はコナーにこう言う。わたしはおまえに三つの物語を語る。だが四つ目の最後の物語は、お前自身が語るのだ。お前は必ず語るだろう。なぜなら、お前はそのためにわしを呼んだのだから。こうして怪物は寓話めいた物語を始める。
一見するとホラーとミステリの融合のような物語である。だが、この作品の核心は、そのようなジャンル性にはない。怪物が語るのは、いずれも妙に後味の悪い、モヤモヤさせられる物語である。
絶妙なストーリーテリングと端正な訳文、そして素晴らしいイラストレーションに夢中になって読み進んでいくと、思いがけないラストが待っている。そして作者が何を伝えたかったのかを、自分なりに問いはじめることになる。

No.68 7点 ラスト・フレンズ わたしたちの最後の13日間- ヤスミン・ラーマン 2021/12/28 23:02
16歳の少女3人がマッチングサイトで出会った。彼女たちの共通の目的は「自殺」の遂行だった。
精神的な不安を抱えるミーリーン、交通事故で父親を失い、自分も下半身不随になったカラ、家族との関係に問題を抱えているオリヴィア。境遇も性格もバラバラの3人は、出会った初日から上手くいかないが...。
主人公たちの境遇は残酷で、一見、読者から遠い存在のように思える。しかし、確かに「隣にいる誰か」のようであり、時には「自分のこと」のようでもある。
重たいテーマながらも、スピーディーで予測できない展開は一気にに読めてしまう。読後には新しいベスト・フレンドが出来たような親しみが湧いてくる。

まだ中学生(仮)さん
ひとこと
いい大人ですが、ティーンエイジャー向けの小説を読むのが好きです。そのような作品を中心に感想を投稿していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
好きな作家
採点傾向
平均点: 6.53点   採点数: 87件
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