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まだ中学生(仮)さん
平均点: 6.55点 書評数: 132件

プロフィール | 高評価と近い人 | 書評 | おすすめ

No.92 8点 神様ゲーム- 麻耶雄嵩 2023/05/30 23:28
ヒーローの否定、生々しい動機、衝撃的な結末、ネガティブな不条理感など、一部の子供には毒が強すぎるきらいもあるが、これが巧みに作られた本格ミステリであることは明らかだ。
この作者らしい過激な逸脱ぶりは、良くも悪くも強烈なインパクトがある。

No.91 7点 水の時計- 初野晴 2023/05/06 22:31
童話の見立てになっている。童話とはオスカー・ワイルドの「幸福の王子」。だが、作中で起こる事件は見立て殺人などではない。なんと見立て臓器移植。貧しい人々のために自らのサファイアの瞳や全身の金箔を与えるという「幸福の王子」の行為は、云われてみれば、まさに臓器の提供に違いない。現実にはあり得そうもないはずの見立ての手法が、ここでは臓器移植というぎりぎりの現実を描くための武器になっている。
まさに本作における、脳死と診断されながら意識を保つ少女と暴走族の少年の関係は、幸福の王子とその瞳や皮膚を命懸けで運んだツバメとの愛の見立てにもなっている。その絆の煌めきに衝撃を受けた。

No.90 7点 深夜0時の司書見習い- 近江泉美 2023/04/09 22:19
物語の舞台は、本を読んだ人の「登場人物」や「著者」に対するイメージが反映された架空の人物が出没する暗く怪しげな「図書迷宮」。ただしそれは深夜の話で、昼間は小さな私立図書館だ。
そこに夏休みの間ホームステイすることになった主人公は、図書迷宮を復興する役目をいやいや引き受けたのだが、そのためには寂れた市立図書館の利用者を増やし、本を読んでもらわなくてはならない。
高校生でベストセラー小説を一作出したきり姿を消した正体不明の作家と図書迷宮の関係など、いくつかの謎をめぐりながら、ユーモラスかつスリリングに物語が展開する。有名作品の世界を巧みに取り込みながら、謎解きもきれいに決まっている。

No.89 8点 辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿- 莫理斯 2023/03/16 22:32
手柄を狙うインド人と中国人の警部や、部屋を貸した「後家さん」の生活が気になる大家、ライバル会社のたくらみを暴きたい商人。様々な人々が持ち込んでくる奇妙な事件を、諸葛孔明の再来と噂される名探偵、福邇が鮮やかに解決していく。
特に皇帝の従兄が血眼になって探す盗品を持つ女の秘密に迫る「親王府の醜聞」と、誘拐されたベトナム華僑の行方を追う「ベトナム語通訳」の2編は展開がスピーディーで読みやすく、謎解きにも捻りが効いている。
実在の人物や歴史的な出来事も織り交ぜながら展開される物語は、時代の空気や異国情緒もよく描かれ、シャーロキアンならずとも楽しめるでしょう。

No.88 5点 ブート・バザールの少年探偵- ディーパ・アーナパーラ 2023/02/14 22:49
架空の場所を舞台にしているが、スラム街、バザール、地下鉄の駅などの雑多でにぎやかな様子が少年の目を通して生き生きと描かれている。
少年ジャイが名探偵たらんと行動する、ワクワクした愉快さに満ちている一方、インド社会の複雑で悲惨な状況を見てとれ、やりきれない現実の厳しさや哀しさが漂っている。

No.87 7点 うそうそ- 畠中恵 2023/01/24 21:47
舞台は江戸、廻船問屋兼種問屋・長崎屋の跡取り息子の「若だんな」こと一太郎は、体が弱くて伏せりがち。心配する親や手代の甘やかしぶりや気遣いときたら並大抵じゃない。でもそんな環境にあっても、若だんなは意外としっかり者。何より彼には、妖怪が見えて話ができる特別な力があった。そんな設定で、ミステリ仕立てのストーリーが展開する時代物「しゃばけ」シリーズの五作目。
地震の続く江戸から、箱根へ湯治に出かけた若だんな。誘拐されたり天狗に襲われたり、散々な目に遭いながら人間たち、そして人間ならざる者たちの抱える思いや悩みを解決へと導いていく。温かい気持ちになれる作品。

No.86 6点 菓子屋横丁月光荘 歌う家- ほしおさなえ 2023/01/03 22:26
埼玉県川越市が舞台。家の声が聞こえる不思議な力を持つ青年を軸に、過去と現在が緩やかに交錯していく。心に傷を負い、人と関わらないように生きてきた守人だが、縁あって蓄70年の古民家の管理人をすることに。
川越という街並み、そこに流れる穏やかな時間、古いものの美しさ、人のつながりの豊かさ。本を片手に川越を歩いてみたくなるファンタジーミステリ。

No.85 7点 空き家課まぼろし譚- ほしおさなえ 2022/12/13 21:16
「海市」という架空の街の空き家をめぐる物語。建物には、様々な人の営みの歴史がある。一枚の写真から、撮影の瞬間を映像として再現する力を持つ少女が登場して謎を解く。
ファンタジーやミステリの要素に引き込まれつつ、不可逆的な時間への切なさが滲む。

No.84 7点 あかずの扉の鍵貸します- 谷瑞恵 2022/11/22 23:04
人の心には記憶が蓄積していくが、それは家もまた同じ。この作品は、さまざまな人の大切な記憶を閉じ込めた、奇妙な洋館の温かい物語。
洋館の作り方や室内のレリーフの描写が非常に楽しく、こんな屋敷があるなら行ってみたいと思わせる。下宿人たちが抱える事情はみな複雑だが、困っている人に手を差し伸べずにはいられない朔実と、距離を置いて冷静に見守る風彦、どちらのスタンスも思いやりがあって心地よい。朔実が少しずつ風彦に恋心を抱く過程や、謎めいて見えた彼の人間味が見えてくる様子も胸をくすぐり、作者ならではの醍醐味がある。
人の心の「あかずの扉も、無理やりこじ開けようとせず、開かれるタイミングを待つことが肝要と感じさせてくれる。心優しい「館もの」として楽しませてくれる。

No.83 7点 天方家女中のふしぎ暦- 黒崎リク 2022/11/07 22:12
舞台は昭和五年。主人公の結月は、16歳にして天涯孤独で訳ありの少女。霊感が強いことから周囲から気味悪がられていた。奉公先を追い出され、田舎から都会に出て仕事を探し、天方家で女中として雇われることになる。
天方家は穏やかな主人の涼と朗らかで天然な閑子夫人、素っ気ない14歳の息子漣の一見普通の三人家族。しかし、実は怪現象が次々起こることから、女中がすぐに辞めてしまう、いわくつきの家であった。
結月は主人の怪しい仕事を手伝わされたり、息子の式神に見張られたり、子犬の霊につきまとわれたりと、奇怪な出来事に大忙し。さらに何か大きな秘密があるようで。不思議な日常と奇妙な事件を描く昭和ロマンあふれる和風ファンタジー。

No.82 5点 コカチン 草原の姫、海原をゆく- 佐和みずえ 2022/10/15 22:11
モンゴルの史実から着想を得て生まれたファンタジー小説。元の皇帝フビライ・ハンの愛娘コカチン姫はおてんばな性格。タカ狩りを楽しみ、草原を駆け回る彼女はある日、遠方にあるイル・ハンの国の王の花嫁にと望まれる。
姫たち一行は海路でイル・ハン国に向かうが、海賊や鬼女、悪魔が道中で待ち受ける。持ち前の勇敢さで困難を切り抜ける姫の姿が痛快だ。
ただ、正義感から先々で事件に首を突っ込み、危険にさらされることも。姫の窮地を救うのは、旅の随行者でイル・ハン国からの使者パルス。当初は反感を抱く姫だったが、交流を重ねるうち彼の存在が大きくなっていく。ヒロインの心の成長も読みどころ。

No.81 7点 夏休みの空欄探し- 似鳥鶏 2022/09/18 21:49
部員二人のクイズ研究会会長で高校二年の成田頼伸(ライ)は、クラスで「じゃない方」と呼ばれている。同じ名字でダンス部所属の人気者、清春(キヨ)が同級生だからだ。キヨとは仲良くできないと感じていたライだったが、夏休みのある日、ひょんな縁で出会った姉妹も一緒に、四人で暗号を解くことになる。
謎の人物が作成したクイズに挑む青春恋愛ミステリ。問いの答えは次の問題の在りかを示し、四人は各地を移動しながら出題者を追うこととなる。
友達が少なく、会話も苦手なライはキヨに劣等感を抱き、一方のキヨは自分にライほどの豊富な知識がないことを嘆く。友情を深める過程で互いの長所を発見し、それぞれの恋を応援する様子がほほえましい。

No.80 6点 ガラスの魚- 山下明生 2022/08/26 22:36
戦後7~8年がたった瀬戸内の島が舞台。足の怪我をこじらせて夏休みを棒に振った中学生のアキラが、夏休み最終日に校門前で謎の死体を発見するところから始まる。
事故か事件か。捜査が始まるが、松葉づえ姿を「かかし」とからかわれたり、父らしき人物が島に現れたり、1学年上の少女に夜釣りを教えたり、ヤクザに命を狙われる青年をかくまったり。次々と起こる出来事に心は泣いたり笑ったり、絶望と希望の間を揺れ動く。
最終章で級友と自転車のチキンレースの結末が清々しい。思春期に差し掛かり、壁を乗り越えていく少年の心模様に共感する。

No.79 6点 いけよし!花咲中学華道部- 結来月ひろは 2022/08/01 21:09
主人公の良多は自分には何の才能もなく、平凡であることにコンプレックスを抱く中学一年生。しかし、入学早々に「学校一の変人」で有名な美少年、薫に華道の才能を見出され、廃部寸前の華道部に入部することに。
そこで起きる「花」にまつわる五つの事件が描かれる青春ミステリ。個性豊かな新入部員たちのエピソードも、友達関係や自身についての悩み多き世代には刺さるのではないか。
「才能とは誰もが一目で分かるようなキラキラしたものだ」と言う良多に対し、華道部顧問の万智が放った言葉は「才能ってさ、キラキラしてないといけないってことはないんじゃない?」。青春小説としてもミステリ小説としても楽しめる。

No.78 7点 飛ぶ孔雀- 山尾悠子 2022/07/17 22:19
「飛ぶ孔雀」と「不燃性について」の2部からなる。二つをつなぐ世界は前者の冒頭で示される。「シブレ山の石切り場で事故があって、火は燃え難くなった」。つまり作品の舞台は「火が燃え難くなった世界」だ。
少女のトエは外の物干し場で七輪の火をおこすようになる。近くに川が流れている。ある時物干し場へ川舟が近寄ってくる。「そこへ行ってもいいかな」と言ってやって来たその人が、トエの恋人になる。
前半のクライマックスは真夏の庭園で開かれる茶会だ。火を運ぶ女たち。派手に飛ぶ孔雀。具体的なのに幻想的である場面だが、何が起きているのか、はっきりつかむのは難しい。
後半は、大蛇がうごめく地下世界や山での出来事がつづられる。前半と重なる固有名詞も出てきて、最後まで読むと、前半とのつながりがぼんやり浮かび上がってくる。人間が動物になったり、するりと異界に入り込んだり。これほど奇異な時空間を言葉で構築する作家の力量に驚愕。

No.77 6点 スカーレットとブラウン あぶないダークヒーロー- ジョナサン・ストラウド 2022/07/03 22:21
舞台は、未来のイングランド。大規模な気候変動の後、わずかに生き残った町と、その周辺の無人地帯に分かれた。スカーレットは荒れ果てた国を渡り歩く無法者の少女。今日も銀行から札束を盗むと、森に逃げ込んだ。
そこで出会ったのが、アルバート・ブラウン。横転したバスの中、野獣の餌食になるのを免れ、唯一生き残った男の子だ。追っ手を交わしながら、危機一髪の逃走を繰り広げる二人。
大胆不敵なスカーレットに、おっとりしたアルバート。デコボココンビの掛け合いが面白い。いつもは足手まといだが、追い詰められるとなぜか不思議な力を発揮するアルバートの秘密が明かされていくのが、最大の読みどころ。

No.76 7点 鵺の家- 廣嶋玲子 2022/06/18 22:34
大富豪の天鵺家が、跡取りの少年・鷹丸の遊び相手を募集した。活発な少女・茜は、守護神の雛里が見えたことでその役に選ばれ、天鵺家の養女になる。
高価な調度品が並ぶ屋敷で暮らし始めた茜は、まず家族全員が鷹丸に冷淡で、謎めいた世話係の静江が鷹丸の面倒を見ている異様さに驚く。天鵺一族が、屋敷の背後に広がる黒羽ノ森から跡取りを殺すために襲撃してくる虫を恐れ、奇妙なしきたりを守り、奇怪な儀式を行う不気味な展開は、まさに和製ゴシック・ホラーといえるだろう。
特に儀式の日、一人で屋敷を守ることになった茜が、天鵺家を呪う虫の大群に襲われる場面は、背筋が凍るほど恐ろしい。やがて茜は、一族の繁栄のため人知れず家族を切り捨てた天鵺家の暗い過去が、呪いを生む原因だったことを知る。
茜が、天鵺家の悲劇を終わらせるため使った方法は、家庭や社会に根を張る「闇」と戦うには何が必要かを教えてくれる。

No.75 6点 オレンジ色の不思議- 斉藤洋 2022/05/28 22:42
家の近くを散歩していると、時々見知らぬ女の子が声を掛けてくる。とても美しい少女だ。「言われないと見えないものってあるよね」と謎めいたことを言うのだが、少女がそばにいると、周囲で不思議なことが起こる。
道を歩いている警察官の後を少女と追いかける。しかし、どんなに歩いても、走っても、警察官には追い付けない。なぜだろう?警察官は何者なのか?ゴースト・ストーリーと題する短編集だが、分かりやすいお化けや幽霊は登場しない。
日常生活の中に突然、奇妙な光景が現れる。そんな怪奇現象が描かれる。あの警察官、ひょっとして、この世の者ではないのかもしれない。そう思い至った時、体の奥底からやってくるゾクゾク感が味わえる。

No.74 6点 後宮の烏- 白川紺子 2022/05/12 23:22
架空の中国を舞台にした、いわゆる中華ファンタジー。後宮に住みながら夜伽をしない妃、烏妃。半ば伝説のような烏妃と、若い皇帝が出会った時、物語は動き始める。死者の声を聞くことが出来る烏妃が、謎と人々の思いを解きほぐしていく、オムニバス形式のミステリ。
片方だけの翡翠の耳飾りに取りついた女の幽霊、いつまでたっても鳴らない葬送の花笛、とうに死んだ雲雀の語る秘密、玻璃の櫛に秘められた悲恋。キラキラしく、艶やかだがしっかり中身もある。

No.73 8点 闇の魔法学校- ナオミ・ノヴィク 2022/03/26 22:20
魔法使いを養成する学校と聞き、多くの人が思い浮かべるのは世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズに登場するホグワーツ魔法魔術学校だろう。
だが、米ファンタジー作家の著者が本書で描くのは、ホグワーツとは全く異なる殺伐としたサバイバル生活だ。
舞台は闇に浮かぶ巨大なスコロマンス魔法学院。教師はおらず、しばしば怪物が襲い掛かってくる。生徒たちは四年後の卒業まで生き延びられなければ、現実世界には戻れない。
生徒同士の争いも絶えず、皮肉屋の主人公ガラドリエルは誰とも打ち解けられない。権謀術数が渦巻く学園で、彼女は仲間を作り、活路を見いだせるのか。独特の世界観が魅力のダーク・ファンタジー。

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まだ中学生(仮)さん
ひとこと
いい大人ですが、ティーンエイジャー向けの小説を読むのが好きです。そのような作品を中心に感想を投稿していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
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