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まだ中学生(仮)さん
平均点: 6.60点 書評数: 115件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.75 6点 オレンジ色の不思議- 斉藤洋 2022/05/28 22:42
家の近くを散歩していると、時々見知らぬ女の子が声を掛けてくる。とても美しい少女だ。「言われないと見えないものってあるよね」と謎めいたことを言うのだが、少女がそばにいると、周囲で不思議なことが起こる。
道を歩いている警察官の後を少女と追いかける。しかし、どんなに歩いても、走っても、警察官には追い付けない。なぜだろう?警察官は何者なのか?ゴースト・ストーリーと題する短編集だが、分かりやすいお化けや幽霊は登場しない。
日常生活の中に突然、奇妙な光景が現れる。そんな怪奇現象が描かれる。あの警察官、ひょっとして、この世の者ではないのかもしれない。そう思い至った時、体の奥底からやってくるゾクゾク感が味わえる。

No.74 6点 後宮の烏- 白川紺子 2022/05/12 23:22
架空の中国を舞台にした、いわゆる中華ファンタジー。後宮に住みながら夜伽をしない妃、烏妃。半ば伝説のような烏妃と、若い皇帝が出会った時、物語は動き始める。死者の声を聞くことが出来る烏妃が、謎と人々の思いを解きほぐしていく、オムニバス形式のミステリ。
片方だけの翡翠の耳飾りに取りついた女の幽霊、いつまでたっても鳴らない葬送の花笛、とうに死んだ雲雀の語る秘密、玻璃の櫛に秘められた悲恋。キラキラしく、艶やかだがしっかり中身もある。

No.73 8点 闇の魔法学校- ナオミ・ノヴィク 2022/03/26 22:20
魔法使いを養成する学校と聞き、多くの人が思い浮かべるのは世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズに登場するホグワーツ魔法魔術学校だろう。
だが、米ファンタジー作家の著者が本書で描くのは、ホグワーツとは全く異なる殺伐としたサバイバル生活だ。
舞台は闇に浮かぶ巨大なスコロマンス魔法学院。教師はおらず、しばしば怪物が襲い掛かってくる。生徒たちは四年後の卒業まで生き延びられなければ、現実世界には戻れない。
生徒同士の争いも絶えず、皮肉屋の主人公ガラドリエルは誰とも打ち解けられない。権謀術数が渦巻く学園で、彼女は仲間を作り、活路を見いだせるのか。独特の世界観が魅力のダーク・ファンタジー。

No.72 7点 影踏亭の怪談- 大島清昭 2022/03/10 22:31
民俗学がらみの怪奇ミステリ。怪談作家の呻木叫子が遭遇する奇怪な事件が並ぶ。
べたべたとお札の貼られた部屋で発見された両目をえぐられた死体。公民館の一室で発見された泥だらけの死体。いずれの事件も心霊スポットや怪奇現象の噂のある場所で発生している。
呻木叫子もそれらの謎を探るうちに、まぶたを自らの髪の毛で縫い合わされたまま椅子に粘着テープで固定されたり、廃工場で心霊番組のロケ中に落ちてきた冷凍メロンで頭を強打して意識を失ったり、と不可解な事件に巻き込まれていく。
物語は彼女の書いた原稿と、ほかの人々の語り、三人称の描写で進む。どの事件も彼女の論理的な推理で犯人が突き止められていくのだが、最後の方でいくつものエピソードをつなぐ闇の存在が物語をまとめていく。
その試みはうまく成功しており、どの話もなんとなく後味の悪さを残していて、これもまた大きな魅力になっている。

No.71 7点 いつものBarで、失恋の謎解きを- 大石大 2022/02/22 22:14
31歳の会社員、大谷綾は平成最後の日、バーのママを相手に「私っていつもこうなんです。好きな人や恋人ができても、必ず今日みたいに、男性がたいした理由もないのに急にへそを曲げちゃって、理不尽な形で関係が終わっちゃうんです」とこぼす。
彼女の口癖は「意味わかんない」。打ち明け話をカウンターの隅で聞いていた男が「ホーソン実験をモデルに考えれば答えが導き出せるかもしれません」と、話の細部を拾い、振られた理由を見事に解き明かす。
男はそんな風に、小5の初恋から現在に至るまでの不可解な失恋話を、心理学の諸理論を使ってさばいていく。平成を代表する事件事故やヒットソングが散りばめられたそれぞれのエピソードが、作品後半から一つの大きな物語にまとまっていくのが面白い。

No.70 6点 12歳のロボット ぼくとエマの希望の旅- リー・ベーコン 2022/02/02 22:53
環境汚染や戦争を引き起こす愚かな人間を、ロボットが排除して30年後の世界が舞台。
12歳のロボット「XR935」は、与えられた任務をこなす無駄のない日々を送っていた。滅ぼしたはずの人間の少女、エマを見つけるまでは。
米作家による本書は、敵同士のロボットと少女の友情を描いた。「人間がいない方が、世界はずっと素晴らしい」と考えていたXR935だったが、他のロボットに命を狙われるエマが気に掛かり、同僚ロボットと共に彼女を助けることに。
交流を重ねるうち、乱暴で強欲だと教えられてきた人間に、面白くて愛情深い一面があると知る。ロボットたちの個性が魅力的な冒険SF小説。

No.69 7点 怪物はささやく- パトリック・ネス 2022/01/17 23:11
難病の母親と二人暮らしの13歳の少年コナーの前にある日突然、怪物が現れる。それは家の窓から見えるイチイの木の姿をしていた。怪物はコナーにこう言う。わたしはおまえに三つの物語を語る。だが四つ目の最後の物語は、お前自身が語るのだ。お前は必ず語るだろう。なぜなら、お前はそのためにわしを呼んだのだから。こうして怪物は寓話めいた物語を始める。
一見するとホラーとミステリの融合のような物語である。だが、この作品の核心は、そのようなジャンル性にはない。怪物が語るのは、いずれも妙に後味の悪い、モヤモヤさせられる物語である。
絶妙なストーリーテリングと端正な訳文、そして素晴らしいイラストレーションに夢中になって読み進んでいくと、思いがけないラストが待っている。そして作者が何を伝えたかったのかを、自分なりに問いはじめることになる。

No.68 7点 ラスト・フレンズ わたしたちの最後の13日間- ヤスミン・ラーマン 2021/12/28 23:02
16歳の少女3人がマッチングサイトで出会った。彼女たちの共通の目的は「自殺」の遂行だった。
精神的な不安を抱えるミーリーン、交通事故で父親を失い、自分も下半身不随になったカラ、家族との関係に問題を抱えているオリヴィア。境遇も性格もバラバラの3人は、出会った初日から上手くいかないが...。
主人公たちの境遇は残酷で、一見、読者から遠い存在のように思える。しかし、確かに「隣にいる誰か」のようであり、時には「自分のこと」のようでもある。
重たいテーマながらも、スピーディーで予測できない展開は一気にに読めてしまう。読後には新しいベスト・フレンドが出来たような親しみが湧いてくる。

No.67 6点 見つけ隊と燃える小屋のなぞ- イーニッド・ブライトン 2021/12/07 22:43
ある夜、小屋で放火事件が発生。犯人捜しに、子供5人と犬1匹が乗り出す。本書は、そんな小さな探偵団の活躍を描く。一つずつ手掛かりをつかむごとに犯人に近づく易しい構成で、子供が初めて出合うミステリ本として最適。
ブライトンは20世紀を代表する英国の児童書作家。そんな彼女の大人気シリーズの1作目。5人と1匹の「見つけ隊」が、自転車で隣町まで聞き込みしたり、夜中に容疑者の家に忍び込んだり。
意地悪な巡査の目をかいくぐり、たどり着いたのは意外な結末。複雑なトリックはないものの、読み応えのあるストーリー。30点の挿絵が、冒険譚を生き生きと伝える。

No.66 7点 ゴースト・ボーイズ ぼくが十二歳で死んだわけ- ジュエル・パーカー・ローズ 2021/11/05 23:06
ジェロームはシカゴに住む黒人少年。おもちゃの銃で遊んでいたところを白人警官に撃たれて、命を落とす。ゴーストになった彼の視点を通じ、根深い偏見の実態を描く。
自分を撃った警察官の娘セアラとだけ会話できることに戸惑い、怒りをぶつけてしまうジェローム。セアラも父の犯した罪を恥じ、苦悩する。セアラと対話を重ねるうち、ジェロームは自分がゴーストとして世界にとどまった意味を悟っていく。悲しく辛い話でありながら、差別のない社会への希望も見える展開に心が揺さぶられる。

No.65 7点 十年屋5 ひまな時もございます- 廣嶋玲子 2021/10/26 23:30
絶対に手放したくない大切なものを、時の魔法で10年間預かるという、魔法使いの店が舞台の連作短編集。
いつも客足の絶えない十年屋だが、今回は「預けない」ことを選択する客が続く事態となってしまう。しかも持ち込まれたのは、幽霊にとりつかれている花瓶や、かすかにささやくドクロ、少しくたびれた黒猫のぬいぐるみなど、いかにも深い訳がありそうな物ばかりなのに、預けなかったのは一体なぜなのか。それぞれの事情が、しみじみと胸を打つ。
大人も子供も思い通りにいかないのが人生で、大なり小なり、何かしらの痛みを抱えている。人の心を思いやれるだけの想像力は、いつも磨いていたいものだ。

No.64 7点 ホテル・ウィンチェスターと444人の亡霊- 木犀あこ 2021/10/18 22:54
舞台は、タイトル通り亡霊が棲みついた巨大な老舗ホテル。
時には霊の仕業でトラブルが発生したりもするのだが、そんな場合にお客様をなだめ事態を解決するのは、勤続十年目のコンシュルジュ友納。
何もない空間から客室に降り注ぐ血、誰もいない廊下から聞こえる騒音といった現象そのものは心霊現象であろうとも、何故それが起こったのかという原因は必ずある。友納がそれを解きほぐしてゆく過程の本格ミステリ的な面白さに亡霊たちの憎めない個性も加味されて、怖さより楽しさを感じさせる連作に仕上がっている。

No.63 6点 見知らぬ友- マルセロ・ビルマヘール 2021/10/04 22:33
不器用な少年「ぼく」をめぐる、10編の物語が収められたアルゼンチンの短編集。
表題作は、ピンチになると決まって主人公ルシオの前に現れる「友」の話。彼のおかげで算数のテストは満点、好きな女のことは両思いになった、大人になった後もうまく事が運ぶはずだったが...。どの物語も思いがけない結末を迎える。
原書の副題「10個のでっちあげた思い出」が示す通り、いずれもフィクションだが、作者自身が経験したエピソードが少なからず盛り込まれている。
静かで味わい深い文章と、オーガ・フミヒロのカラフルで幻想的な挿絵が共鳴し、豊かな世界を紡ぎ出している。

No.62 5点 BIOME 深緑の魔女- 伊東京一 2021/09/16 22:22
主人公は、地域の生態系を読み解き、自然の自体の力を利用して自然災害から人間を守る用心棒を生業とする少女。
日々拡大する巨大な熱帯雨林に覆われた大陸を舞台に、少女が災害に闘いを挑む。「ハードボイルド版ナウシカ」とはエンタメ大賞選考委員の朝松健の評。生態系のミッシング・ピースを探すサイエンスミステリとしての部分が何よりも面白い。

No.61 5点 ランブルフィッシュ〈1〉新学期乱入編- 三雲岳斗 2021/08/02 23:09
軍事用に開発された全長10メートルの人型兵器による格闘技が公営ギャンブル化された近未来。ロボットの基礎設計から、組み立て、整備、操縦などを学ぶ公立の専門学校を舞台にしたロボコン青春ドラマ。
ロボット格闘技の裏で軍事開発競争が進行しているという、きな臭い設定も見え隠れするが爽やかなSF青春ドラマに仕立てられている。

No.60 7点 Dクラッカーズ―接触‐touch- あざの耕平 2021/07/24 23:21
「実践捜査研究会」を結成した女子高生の二人組、帰国子女の梓と探偵志望の千絵は、同級生の飛び降り自殺の謎を追ううちに、セルネットと呼ばれる麻薬販売組織に行き当たる。
セルネットの扱うカプセルの常用者である「悪魔持ち」による、派手なモンスター召喚バトルが繰り広げられる。カプセルとはどういう成分の麻薬で、誰が製造したのか、セルネットは何のためにカプセルを中高生に撒いているのかといった謎の行き着く先も面白い。
麻薬という危うい題材を扱っているが、セルネットを組織した三人の青年が妙に清々しく魅力的で読後感は非常にいい。

No.59 7点 ブレイブ・ストーリー- 宮部みゆき 2021/07/24 23:10
この物語は家族が離散するという体験をした二人の主人公が、異世界に行って「その結末を変えよう」、「自分の願いを叶えよう」と戦う物語。
彼らの前には悲しい現実が異世界の中で現れる。そして「この世界の全てと自分の現実、どちらを優先する?」と選択を迫られる悲劇の冒険譚。二人の選択は対照的で、結末も対照的。明日を生きるためには、何もかも受け入れて前に進む「強さ」が必要だと教えてくれる。

No.58 7点 魔笛の調べ1 ドラゴンの来襲- S・A・パトリック 2021/07/09 23:11
ドラゴンが飛び交い、魔法使いが力を振るう。ファンタジーを連想するが、主人公の少年パッチの武器は「音楽の力」。音楽の効果をさらに増幅したような力がある世界で、類希な笛の才能を持つ少年として登場する。
冒険の仲間となるのはドラゴンとグリフィンのハーフ「ドラゴリフ」のバルヴァ―と、魔法でネズミにされた少女レン。ちぐはぐな自分を「性に合っている」と笑うバルヴァー、紅一点ながら勇敢なレンとキャラクターも魅力的で、多様にひらかかれていく今の機運とも重なる。
「ハーメルンの笛吹き」をモチーフにした伏線が綿密に張り巡らされ、ミステリ作家の著者がそれをどう回収していくか、続編も楽しみだ。

No.57 8点 最初の舞踏会 ホラー短編集3- アンソロジー(国内編集者) 2021/06/25 22:43
フランス文学の著名な作家ペロー、モーパッサン、ゾラ、ルブランらも、ホラーを書いていました。本書はクラシックホラー傑作集・フランス編。300年以上前の古典から50年ほど前の名作まで15編が収録されています。
「見るな」の部屋を開けてしまった妻が見たものは。亡くした娘への愛情が生み出してしまった罪とは。社交界にデビューしたうぶな娘の正体は。凍える彼女に心優しい恋人が差し出した奇妙な「人間あんか」とは。「壁抜け」という特殊な能力を持った男が陥った落とし穴とは。
優雅で残酷。子供向けですが、さまざまな人間の姿を映し出し、フランスものらしい大人気分も味わえる短編集。

No.56 6点 妖怪コンビニで、バイトはじめました。- 令丈ヒロ子 2021/06/25 22:35
生きる希望を失った時、不慮の事故で亡くなった時、そのコンビニが見えるかもしれません。主人公のイズミは霊感のある男子中学生。ふと出掛けたその時、新しいコンビニを見つけた。それが妖怪コンビニでした。
ひょんなことからコンビニでバイトを始めたイズミ。そこで出会ったのは、死にたいコアと突然命を奪われたタカジュン。イズミは彼らの現状を理解し、真剣に向き合っていく。彼らと接することで見えてきた自分のこと、そして彼らの運命。
学校生活や会員制交流サイトの世界で起こる出来事に子供たちの生き方までも考えさせられる一冊。

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まだ中学生(仮)さん
ひとこと
いい大人ですが、ティーンエイジャー向けの小説を読むのが好きです。そのような作品を中心に感想を投稿していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
好きな作家
採点傾向
平均点: 6.60点   採点数: 115件
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