皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
麝香福郎さん |
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平均点: 6.78点 | 書評数: 68件 |
No.3 | 5点 | 死神の棋譜- 奥泉光 | 2024/02/27 21:35 |
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二十二年前に発生した棋士の失踪事件が、現在に蘇ってきた。またしても棋士が失踪したのだ。共通項は、不詰めの詰将棋だった。プロ棋士を断念してライターに転じた北沢は、この謎に興味を持ち東京から北海道、茨城など様々な土地へと足を運んで関係者から話を聞く。
本書では将棋の駒は時に九×九の将棋盤を逸脱し、北沢の調査行は時に現実を逸脱し、しかしながら人々は十分に生臭く、物語は流れていく。著者は過去と現在、現実とその外側や裏側を自在に操りつつ、知的刺激と不安に満ちたエピソードを連ねて結末へと導いてくれる。推理の鮮やかさと不条理の不気味さが共存する結末。 |
No.2 | 6点 | 神器 軍艦「橿原」殺人事件- 奥泉光 | 2023/12/20 21:28 |
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物語はすでに日本の敗色が決定的となった昭和二十年初頭。この絶望的な戦況を打開すべく、軽巡洋艦「橿原」が極秘の任務を帯びて出航することから動き出す。だが、士官を含めた乗務員のほとんどは、艦の行き先どころか、任務内容も目的も知らされていなかった。
この大きな謎に加えて「橿原」の艦内にはいくつもの謎、不可解な出来事が頻発していた。正体の知れぬ客人乗員、開かずの金庫に積み込まれた神器、自分とそっくりな人間を見たという証言、大量発生するねずみ、そして乗務員の失踪と変死事件。これらは「橿原」の任務と何か関係があるのかどうか。一切が明かされぬまま、物語は時空を超え、人智を越えた展開となっていくk。 しかしながら、やがて「橿原」の真の目的が見えてくるにつれ、全ての様相が一変していくのである。神器を艦内の奥深くに抱いた「橿原」と乗務員は、神国日本に再び神風を呼ぶ装置としての役目を担っていたのであった。そこから繰り広げられる戦争論や日本人論は白眉。歴史の虚構性と虚構としての小説とを見事に融合している。 |
No.1 | 7点 | シューマンの指- 奥泉光 | 2022/07/13 19:23 |
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かつて音大を目指す自分の前に現れた年下の天才少年ピアニスト修人に、憧れを募らせながらも、彼が指を失った事件をきっかけに、音楽の世界とは縁を切った「私」が、三十年前を振り返る手記という形で展開される。
「私」の卒業式の夜、音楽室のピアノで修人が奏でたシューマンの「幻想曲ハ長調」。その類まれな演奏に聞きほれているさなかに起きた殺人事件。 シューマンの生涯と楽曲をモチーフに、若き芸術家の苦悩という古くからある文学テーマを奏で上げた、美しい音楽本格ミステリ。音楽は「イデアの中に在る」という意見を中心に展開される音楽論も、知的好奇心をそそって魅力的。 |