皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ねここねこ男爵さん |
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平均点: 5.65点 | 書評数: 172件 |
No.6 | 4点 | 館島- 東川篤哉 | 2018/04/03 13:24 |
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この作者の他のシリーズものに比べるとユーモアはやや抑えめで、個人的にはこのくらいでいいと思う。が、ミステリとしての出来が今ひとつ。
以下ネタバレ含みます。 館の見取り図を見た瞬間、慣れた人なら「錯覚か回転」と思うだろう。そこに死体の状況や被害者が芸術家肌の建築家であったことなどを加えると構造はすぐに見当がついてしまう。部屋の間違いを伏線にするなど状況をフル活用して頑張ってはいるが… どちらかと言うと、殺人より館の作られた場所や理由の方が謎として魅力があったように思う。答えも鮮やか。なので本来3点の所プラス1点で。 |
No.5 | 7点 | 放課後はミステリーとともに- 東川篤哉 | 2018/03/25 12:42 |
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面白い。割り切ってぶっとんでるので個人的には「ディナー」よりこっちの方がずっといい。
高校生というのが作者のノリに合ってるし、シンプルな謎を提示してサクサク解決でテンポ良い。 |
No.4 | 4点 | 謎解きはディナーのあとで- 東川篤哉 | 2018/02/27 17:49 |
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少年誌の探偵漫画をそのまま小説にしたかのようで、そもそも「普段ミステリを読まない女性読者を対象にして書かれた」とのこと。その目的の達成度なら満点ではないでしょうか。
一方本格ミステリとしてはかなり苦しい部分が多く、高得点にはなりえません。異常な売上にふさわしい内容とはお世辞にも言えず、良くも悪くも「ライトノベルは内容ではなく表紙の絵で決まる」を地でいっている感は否めないというところです(言いすぎかもしれませんが人気イラストレーターの起用は大きかったでしょう)。純粋な本格ミステリは売れない、と言っているようで読者の一人としては悲しい。 ミステリとしては天才的探偵による神視点推理で非論理的、「証拠をつなぎ合わせて辻褄の合う話をでっち上げるとこうなる」タイプです。お前はアホか、と暴言を吐く一方で苦しい部分は「●●を▼▼と見間違えても無理もないでしょう」と誤魔化すわけですから…。身長が重要な手がかりになっているのは自明なのに、「シークレットシューズを履いていたのだ(ドヤァ!」「すげぇぇぇぇ!!!」ってねぇ…。この手の本は誠実な描写はむしろ的外れで、とにかくイメージを大げさに誇張すべきなので指摘するのも野暮なのですが。 推理部分をあれこれ言っても仕方ないので別の例を挙げると、第2話の冒頭で「執事は目覚まし役としても有能」と書いておきながらこの日は遅刻しないよう寝室をノックすることをしていません。執事はすでに起床していた描写がありますし、この日に限って目覚ましノックしない理由がありません。まぁ「遅刻遅刻〜!!」というギャグをやりたいためでしょうが、ギャグを優先して矛盾が生じてしまっています。とにかく推理部分でもギャグ部分でもこういう矛盾や苦しい描写が多く、ミステリとしての骨格がしっかりしているとは言い難いでしょう。 自分のようなひねくれたマニアが読むか、本作の本来のターゲット層が読むかで大きく評価が分かれるかと思います。 |
No.3 | 6点 | 完全犯罪に猫は何匹必要か?- 東川篤哉 | 2018/02/02 11:27 |
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点数低めですが面白かったです。
低い理由はメイントリックが前例ありまくり&ミエミエだからで… ソレ以外の部分がとても良く出来ています。ユーモアだからこそ許されるものもありますが、作者のフェアプレイの精神が垣間見えると言うか、ネタバレを恐れずきちんと言及されてますし、このシリーズはそういうものだと思って読むものなのでしょう。 ただのミステリをギャグ色の強い文章で書いただけ、ではなく、ユーモアをもミステリに組み込んで書かれている良質のユーモアミステリです。 ネタバレ こういう錯覚を利用したトリックは、なんでもやってみようの黎明期では頻出でしたがすぐに廃れました。やはり都合が良すぎて説得力に乏しいのでしょう。本作もそれを乗り越えるものではなく、目撃者の設定含め当時の焼き直しにすぎず不満が残るので高得点には出来ませんでした。 ただ、ソレ以外の部分は本当によく出来ています。 |
No.2 | 4点 | 交換殺人には向かない夜- 東川篤哉 | 2017/12/09 22:52 |
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ネタバレ気味書評です。
こんな人間が何人もいるか…?まさかアレじゃねぇだろうな…と思ったらその通り、という。それだけなら読者に見破られるだろうからさらにひと工夫したろ!ってことなんでしょうが、ねぇ。 ユーモアは寒いというか(寒いけど)、ボケと勘違いと真実を混在させて読者を煙に巻くための作者に都合の良すぎる道具です。「なんでこれ調べねぇの?なんでこれ気付かねぇの?」と読者が思ったときに言い訳をするためのもの。なので作中人物の行動が異様にご都合主義であって、そこをどう思うかでしょうね。 この年代に山ほど出版された叙述トリックの凡作のひとつです。 |
No.1 | 5点 | 密室の鍵貸します- 東川篤哉 | 2017/11/10 15:11 |
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なかなか面白いです。
色メガネで見てしまいそうなタイトル装丁で、文体かなり軽いですが、ちゃんと本格ミステリしています。ユーモアって書くの大変(ギャグ漫画家は必ず病む)なのにあえてこれで行こうとした作者はすごい。一時期、難しい漢字のおどろおどろしいタイトルと文体を用い、中身はミステリより雑学知識多めで黒い表紙の作品が流行り、そういうのが格調高いという出処不明の価値観がありますが、ユーモアのほうがずっと好感が持てます。読みやすいし。 惜しむらくは、長編としてはネタが薄いこと、それを引っ張るためのドタバタ劇になっていることでしょうか。 それから、死体発見時に発見者が自分の首を絞めるような行動を「ついやってしまう」のですが、本筋にあんまり影響無いにしろ、今時の読者にとっては発見者に同情する気持ちより「何やってんだよ面倒くせぇな…」とストレスになるだけなのでやめた方が。 |