皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
糸色女少さん |
|
---|---|
平均点: 6.41点 | 書評数: 174件 |
No.2 | 7点 | 生まれ変わり- ケン・リュウ | 2021/11/30 23:05 |
---|---|---|---|
難民、差別、いじめ、DVといった問題への人々の抵抗や無関心を、SF的想像力で昇華させた秀作揃い。これらの物語に通底するのは、世界にはびこる不条理への無力感である。
正論を掲げるだけでは何も解決しない世界。主人公たちは、時に現実的な解決策を見いだそうとあがく。しかし同じ思いを共有しながら解決の手立てで合意することが出来なかったり、超越的な第三者に頼ることしか出来なかったりと、作者は自らの手で状況を覆すことの困難さを、そこかしこに滲ませる。 マイノリティとして生きるとはどういうことか。これまで多くの日本人が無縁を装い、見ないふりをしてきたその痛みやままならなさが、じわじわと胸に迫ってくる。 |
No.1 | 7点 | 宇宙の春- ケン・リュウ | 2021/05/09 23:31 |
---|---|---|---|
巻末に収められた「歴史を終わらせた男―ドキュメンタリー」は、日本人なら避けて通れない歴史SFであり時間SF。
過去を(一度だけ人間の被験者によって)観測できる技術が開発された結果、葬りたい過去を観測されないために、各国が醜い争いを繰り広げるアイデアも面白いが(行き先の時代の主権はどの国に属するか論争になる)731部隊および歴史認識をめぐる生々しい議論と、その先の皮肉な展開が強烈なインパクトを持つ。 妻は日系の実験物理学者、夫は中国系の歴史学者(専門は平安時代の日本)という米国人夫婦を中心に据えることで、物語がさらに重層化されている。 |