皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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糸色女少さん |
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平均点: 6.41点 | 書評数: 174件 |
No.4 | 8点 | 天涯の砦- 小川一水 | 2024/08/24 21:52 |
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高軌道宇宙ステーション望天で起こった爆破事故によって、閉鎖環境下に閉じ込められてしまった十人のサバイバルを描き出す、ハードSF&サスペンス。
酸素は限られ、内部に生存者がいることさえも伝えられない極限状況下。その上、生存者は偏屈な医者、エゴイストの女、変わり者の制御環境科学者と癖のある者ばかりで、中には今回の事件の関係者と思われる人物もいる。 度重なる気密破戒によって環境は悪化し、一人また一人と死者が増える中、空気に食料、宇宙服をかき集め、通信手段を模索していった過程を、科学的にほぼ正確に描いていく。二十一世紀末が舞台で、未来の宇宙建造物や、月社会と地球社会の対立といった側面も書き込まれていて、サスペンスだけでなくSF的にも素晴らしい。 |
No.3 | 8点 | 天冥の標X 青葉よ、豊かなれPART3- 小川一水 | 2019/06/10 21:04 |
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「Ⅰ メニー・メニー・シープ」から10年。21世紀初頭から29世紀に至る壮大な未来宇宙叙事史を描き切った著者に、感謝したい。
人類は、謎の感染症「冥王斑」や地球環境の悪化に苦しみながらも、ロボット工学や宇宙開発によって活路を開いてきた。月や火星への移民、新たな生存環境に適合するための人体改造や、それに伴う性愛の多様化、感染症への対応を巡る政治的分断、知的生物との出会いなど、シリーズを通して人間の在り方を考えさせられるテーマが展開。その果てに人類は自分たちが、銀河全体を襲う宇宙規模の脅威に直面していることを知る・・・。 人類の卑小さを見せつけられる場面も多いが、どんな困難に直面しても常に「理解しがたい他者」との共存を探り続ける人々の姿は感動的で、不寛容が覆いつつある私たちの社会に対するアンチテーゼのようでもある。 |
No.2 | 8点 | 天冥の標Ⅶ新世界ハーブC- 小川一水 | 2018/11/02 19:58 |
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未来世界での生き残りのための戦いを描くシリーズ第7巻。太陽系全体に意図的にまかれた病原体により、人類社会は破滅しかけている。そんな中、宇宙船事故の生き残りと、都市の地下シェルターに避難していた子供たちが合流してのサバイバルが続く。
極限状態にあっても「最悪の中での最良」を選択すべく、人々は組織を立て直し「社会」を機能させようとする。本書にはいい意味での政治的戦略思考への意識があり、絶望の中でも輝く気概の美しさと切なさがある。また本シリーズに散りばめられていた数々の謎が、次第に集約されて壮大な絵の全体像が浮かび上がってくるのは感動的。 |
No.1 | 8点 | 天冥の標Ⅱ 救世群- 小川一水 | 2017/11/17 21:34 |
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「メニー・メニー・シープ」に続く<天冥の標>シリーズ第二巻。ただし、はるか未来の植民惑星のドラマを描く前作とは一転、ほぼ現代の日本を主舞台に戦慄のメディカル・サスペンスが語られる。
主人公は国立感染症研究所附属病院の医師、児玉圭吾。パラオの小島で未知の感染症が発生したとの連絡を受け、同僚と現地へ飛んだ彼は、恐るべきウイルス性疾患、「疫病(ディジーズ)P}(のちの「冥王斑」)のアウトブレイク(突発的な発生)に立ち会うことになる。 タイトルの「救世群」とは、冥王斑から奇跡的に回復した患者群のこと。ウイルス保有者として差別にさらされる彼らがたどる苛酷な運命が中盤の軸になる。 日本のパンデミック・スリラーとしては、おそらくもっともリアルでもっとも読ませる小説ではないか。話は完全に独立しているので、前作を未読の方もご心配なく。 |