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猫サーカスさん
平均点: 6.21点 書評数: 385件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 9点 天使のナイフ- 薬丸岳 2021/11/29 19:05
カフェ店の店長である桧山は、刑事の訪問を受ける。刑事は四年前、妻の祥子が殺された時の担当だった。犯人は十三歳の少年三人で、十四歳未満のために刑事責任は問われず、そのうちの二人は林間学校の合宿程度の拘束しか与えられない児童自立支援施設への送致だった。人一人殺して、その程度なのか。何よりも見事なのは、テーマである少年法を多角的に捉えていることだろう。厳罰にすべきなのか、それとも子供の人権を守り、更生に期待を寄せるのか。そんな厳罰派と保護派との相克を、桧山がつぶさに検証する。本書の最大の魅力は、この倫理の煉獄ともいうべき境地が、関係者たちの隠された肖像とあいまって一段と深まることだろう。決して理想に走らず、かといって総花的にもならずに主題を追求する。ストーリー展開は二転三転し、終盤はどんでん返しの連続。まさにミステリ的興奮がみなぎっている。伏線の張り方は周到で、人物像にも陰影がある。デビュー作とは思えないほど目配りがよく、細部が充実している。

No.3 6点 ハードラック- 薬丸岳 2018/02/01 18:59
いわゆるネットカフェ難民だった若者が主人公の犯罪サスペンス。いったん社会からはじかれ転落すれば、這い上がるのが困難となる現実をはじめ、ネットを通じた匿名のつながり、どこか安易な犯行など、ここに描かれているのは、極めて現代的な犯罪の形なのかもしれない。主人公は信じた相手から裏切られるなど不運に見舞われるばかりか、殺人犯に仕立てられてしまう。スリリングな導入部が身に迫り、彼の運命の行方を追わずにはおれない。意外性に富んだ話運びの巧みさで、最後まで一気に読ませる。

No.2 6点 誓約- 薬丸岳 2017/12/04 18:11
罪を犯した少年時代を隠して生きる男に、過去の亡霊が襲いかかる物語。男は殺人事件の濡れ衣を着せられて逃走しながら、次第に真相に迫り、予想だにしなかった真犯人と驚きの動機を知ることになる。テーマは少年を取り巻く環境の苛酷さと心の弱さ、罪の償いと許しであり、最終的には人の善性に対する信頼と愛がうたいあげられて、胸を熱くする。一歩間違うと人生譚に堕しかねないが、作者は非常な現実を見据えているから、苦みのきいた温かさが生まれている。

No.1 5点 神の子- 薬丸岳 2017/11/29 19:42
詐欺グループの一員として活動し逮捕歴のある町田は、常人離れした知能と記憶力の持ち主。町田を取り巻くさまざまな人物の視点から語られる本作は、一種の群像劇ともいえるでしょう。町田と関わらざるをえなくなったり、窮地から助け出されたりした者たち、それぞれの複雑な内面や感情の起伏などが書き込まれているため、どんどん物語に引き込まれてしまう。さらにホームレスの少年・稔の行方をめぐるエピソードや町田に異常な関心をしめす謎の人物の存在など、物語は重層的に展開し、思いも寄らないクライマックスをむかえる。このクライマックスが個人的には好みでは無いが、読み応えの大きい犯罪ミステリ。

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猫サーカスさん
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採点傾向
平均点: 6.21点   採点数: 385件
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