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猫サーカスさん
平均点: 6.19点 書評数: 405件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.5 6点 消えた警官- 安東能明 2024/04/07 18:25
小幡巡査部長が突然失踪してから二年が経過した。当時二十九歳、昇進し、希望する部署への異動が叶ったにもかかわらず、ほどなく行方をくらましてしまったのだ。一体何が彼に起きたのか。その彼が三年前にパトロール先に残していた多数のメモが今になって発見された。柴崎警務課長代理は二人の仲間と共に小幡失踪の真相を追いつつ、ひき逃げや老人ホームでの不審死、交通事故、女子高生殺人事件などを解決していく。そうした彼らの活動を、四つの短編で描いている。単純そうな事件の奥に潜む、如何にも人間的でなお且つ病んだ心理をきっちりと炙りだす。その上で、最終話で小幡の物語を決着させ、締めくくる。全体で一つの物語としてもよく出来ている。

No.4 5点 出署せず- 安東能明 2023/01/09 18:29
警官の不正行為「折れた刃」、ひき逃げ事件の真相「逃亡者」、保護司が犯した殺人の深淵「息子殺し」、証拠の保管問題を巡る「夜の王」、五年前の女性店員失踪事件の再捜査「出署せず」の五編が収録されている。表題作は、二百ページを超える長さで、別の事件を重ね予想外の展開をたどる。物語の興趣が深いのは、刑事たちの使命と矜持と職務が絡まり、複雑な倫理があらわになるからだ。柴崎は警視庁で出世の階段をのぼっていたが、部下の拳銃自殺の責任を取る形で綾瀬署に左遷された。しかも今度は、年下の三十六歳の女性官僚・坂元真紀が署長に着任し、情け容赦のない決定を下す。反発を覚える現場の刑事たち。両者の要請に応え、刑務課課長代理の柴崎は悩みながら捜査をする。地味だが力強く読ませる。大きなどんでん返しはないが、小さな意外性と捻りがある。男の困難な職務が充分に描かれ、感情移入を優しくしてくれる。

No.3 6点 撃てない警官- 安東能明 2021/09/02 18:28
第63回日本推理作家協会賞短編部門受賞作「随監」を含む連作集。主人公柴崎は、本庁の総務部企画課に籍を置く警部。だが、あるとき部下が拳銃自殺し、その責任をとらねばならなくなった。そもそも拳銃を射撃訓練の許可を出したのは上司の中田課長だったが、中田はそんな電話をした覚えはないという。これは仕組まれた陰謀なのか。単に事件捜査の行方を追うだけではなく、描かれているのは警察内の出世競争、上司、同僚、部下との複雑な関係など、一般の企業でも見られる人間模様の醜い一面。警察ミステリの妙に加え、連作集としての展開にも目が離せない。エリートコースから脱落したという屈託を抱える柴崎の感情と行動があまりにも生々しい。「随監」は、あるコンビニで起きた傷害事件をめぐる物語。事件を扱ったのが地元交番の巡査部長だった。その広松というふてぶてしい態度の警官が極めてユニークなキャラクターなのである。リアルな警官たちの姿がこの一冊に詰め込まれている。

No.2 6点 広域指定- 安東能明 2018/06/12 20:00
いかに女性を登場させて活躍の場を与えるのかが、男くさい警察小説で重視されるようになってきたが、この作品も要所で引き締めるのが女性たち。意外性に満ちたプロットと柴崎の冷静沈着な行動もいいけれど、印象的なのは、頼りない高野巡査が前作「伴連れ」から一段と成長して信念の聞き込みをして証拠をおさえ、女署長坂元が要所で的確な判断をするところ。事件解決の後、犯人と向かい合い動機を深く探る過程も実に読ませる。

No.1 5点 限界捜査- 安東能明 2018/03/27 18:52
小1少女が行方不明となる場面で幕を開ける。そして失踪は誘拐事件へと転じたばかりか、恐ろしい悲劇へと向かっていく。警察捜査を本格的に描いた本作。一冊の本の中に、多くのテーマを含んでいる。その最大のものは<わが子に対する親の行いと巨大団地が生み出した犯罪>という側面。人が抱くさまざまな欲望の歪んだ形がそこにある。やりきれない悲惨な事件の裏表を描いた警察小説。

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猫サーカスさん
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採点傾向
平均点: 6.19点   採点数: 405件
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