皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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小原庄助さん |
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平均点: 6.64点 | 書評数: 267件 |
No.2 | 6点 | 化け札- 吉川永青 | 2018/05/29 09:21 |
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主人公は、戦国武将の真田昌幸。衰亡する武田家を見限ってから、徳川家の大軍を撃破した第一次上田合戦までの激動の時代が、硬質な筆致でつづられている。
戦乱の世で成り上がるために、何度も主君を変えた昌幸を、トランプの一種である「「天正加留多」で、他のすべての札に変えて使える化け札(ジョーカー)に擬し、その生き方を表現した作者の着眼点が優れていた。 さらに複雑怪奇な時代情勢を簡潔に説明しながら、昌幸の神算鬼謀を際立たせた、ストーリーもお見事。実在人物のみならず、下原村の新平という愉快なキャラクターを創造し、庶民の視点を挿入しているところも、注目すべきポイントだろう。 |
No.1 | 6点 | 治部の礎- 吉川永青 | 2018/03/15 09:18 |
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戦国小説ファンには御馴染みの、石田三成が主人公。ただし、作者の創出した三成像は極めて斬新なものである。
羽柴秀吉に仕える石田三成は、本能寺の変以後、天下人への道を歩む主君のために尽くしながら、自分の目標を明確にしていく。それは、秩序による天下の平安である。正論を貫く三成は、たくさんの敵を作りながら、己の理想を目指す。 秀吉の中国大返しから、関ケ原の戦いまで、本書はよく知られた戦国の歴史がつづられている。しかし三成の目標と、それに基づく人物像によって、各エピソードが新たな意味を持って、立ち上がってくる。ここが大きな読みどころだ。 そしてラスト、勝者になった徳川家康へ向けて三成は、国家と為政者のあるべき姿を語る。ここまでの物語を読んできた人は、現代の日本にも通じる三成のメッセージを、重く受け止めることになるだろう。 |