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ALFAさん
平均点: 6.66点 書評数: 171件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 6点 陰陽師 女蛇の巻- 夢枕獏 2024/04/24 08:18
この巻で第一巻から実に31年経過。
晴明も博雅もすっかりジジイに・・・なってはいない。変わらず酒を愛で、「ゆこう、ゆこう」と徹底したワンパターン。
初期の謎解き要素は影を潜め、怪異とあっさりとした真相開示で一種のホラーファンタジーに。淡いエンディングは禅味すら感じさせる。
そんな中、辛口の逆説が効いて怖いのは「相人」。現代的な主題である。

賀茂保憲が連れている黒猫の名をわざわざ「沙門」と紹介していて引っ掛かったが多分「MON CHAT」かな。漠先生、別の巻では月の満ち欠けを司る仙人の唸り声を「むーん、むーん」としてたし。

No.3 6点 陰陽師 龍笛ノ巻- 夢枕獏 2023/10/13 11:17
このシリーズ、晴明と博雅が主役とすると酒は重要な脇役になる。
書き出しはたいてい晴明の屋敷。二人が季節の風情を愛でながら飲んでいる。
肴は鮎であったり、焼いたキノコに味噌を添えたものであったり・・・読んでる方が思わず飲みたくなる。
二人とも酒飲みのお手本のような品格ある飲み方である。
ひとしきり飲むと、「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった。・・・ここは徹底したワンパターン。
 
この巻のお気に入りは「飛仙」。中途半端な通力しか持たぬ仙人が引き起こしたトラブルを晴明が後始末してやる話。
ことが収まって、晴明に酒をごちそうになった仙人が、バルーンのように浮き上がって帰って行くシーンはなんともいえず可笑しい。「こういう生き方も、淋しいながら、そこそこには楽しゅうござりまするぞ・・・」

No.2 7点 陰陽師 飛天ノ巻- 夢枕獏 2023/10/07 09:33
あとがきに作者は「ぼくの好きな、晴明と博雅の話の、二巻目である。」と記している。
この二人のホームズ、ワトソン関係はたしかにシリーズを通しての大いなる魅力。ツンデレキャラの晴明はまさにホームズ、一方の博雅はワトソンより存在感がある。武士とされているがこれは鎌倉以降のいわゆる侍ではない。平安貴族の武官という意味で、官位も晴明より上。太刀と笛の名手で、ピュアな人柄が晴明といいコンビになる。

二人の関係はかなり濃い。
「おれは晴明が好きなんだ。たとえ、おまえが、妖物であってもだよ。だから、おまえに刃なんか向けたくはない・・・俺に正体を明かすときにはだな、ゆっくりと、驚かさないようにやってもらいたいんだよ。そうしてくれるんなら、おれは、大丈夫さ。」(第一巻) 晴明が、冗談まじりに博雅を驚かせたときのセリフである。ブロマンスなどと言ってしまってはかえって趣を損ねるだろう。

この巻でのお気に入りは、可愛い怪異「天邪鬼」と、よく知られた逸話を織り込んだ「鬼小町」。7話からなる連作短編集。

No.1 8点 陰陽師- 夢枕獏 2023/09/26 09:23
ドラマ、アニメ、さらにはフィギュアスケートでも知られた作品だが、原作は初めて。
一種のファンタジーかと思っていたらなんと本格の謎解きだった。6話からなる連作短編で、安倍晴明がホームズ、太刀と笛の名手である源博雅がワトソン役。
たいていは博雅が、酒の肴を手土産に謎を持ち込んでくる。
まずは庭の風情を愛でながらの静かな酒宴。各話ごとに移り変わる季節の情景描写がいい。
謎を話題にひとしきり飲んでから、では「ゆこう」「ゆこう」と出掛けていく。このワンパターンも心地いい。
お気に入りは「鬼のみちゆき」。ホラーのロジックが見事に通っている。

ところで分類がホラーではなく歴史ミステリで登録されていて不思議に思ったが、闇が身近に存在したこの時代を思えば深く納得。

長く続く作品なのでゆっくり楽しもうか・・・

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ALFAさん
ひとこと
物理的な合理性、心理的な整合性、生き生きとした情景描写などがバランスした作品が好きです。
好きな作家
アガサ クリスティー、クリスティアナ ブランド、連城三紀彦、G.K.チェスタトン
採点傾向
平均点: 6.66点   採点数: 171件
採点の多い作家(TOP10)
宮部みゆき(23)
アガサ・クリスティー(20)
松本清張(15)
連城三紀彦(14)
三津田信三(13)
青山文平(7)
横溝正史(7)
夕木春央(5)
G・K・チェスタトン(5)
夢枕獏(4)