海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

りゅうぐうのつかいさん
平均点: 6.29点 書評数: 84件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 5点 長い長い殺人- 宮部みゆき 2016/11/14 17:31
警察の捜査能力を信じ、捜査の限界を見極めた上で、警察を利用して行われた犯罪。新たな犯人像、犯行理由が提示されており、社会派ミステリ―としての要素を持つ犯罪小説であり、『模倣犯』につながっていく物語。「世間の連中は馬鹿ばっかりだ。俺と違って。俺の価値を誰もわかっちゃいない。」という犯人の不満は、昨今、かなり多くの人が持っているのではないだろうか。
ある目的のもとに行われた連続殺人を、関係者の「財布」を擬人化して、「財布」の視点で描き、それらの別々の話が一つの話につながっていくという手法が目を引いた。ただ、なぜ、「財布」視点なのかというのが疑問であり、「財布」であることには大した意味がなく、不自然さや突飛さを感じてしまう(最後の方に、合皮製と本革製の話が出てくるが、財布を選んだ理由としては弱い)。
犯人像なり、犯行理由にも、それほどの斬新さは感じられなかった。
また、「部下の財布」の章で、探偵が指摘した、部下に関するある事実だが、探偵の推理にはちょっと無理がある、単なる思い付きにすぎないと感じた。

No.3 8点 R.P.G.- 宮部みゆき 2016/05/17 22:28
親子の絆が希薄になった現代社会で、ネット社会に絆を求めて生まれた「仮想家族」。それによって、引き起こされた殺人事件。社会派ミステリーとして、ユニークな視点で問題提起がなされていると感じた。
物語の終盤になり、犯人が判明した時点では、ありきたりな真相で平凡な作品だと思ったが、文庫本の285頁まで読み進むと、世界が一変した。この事実は、全く予想だにしておらず、意表を突かれた。
ただし、犯人が所田良介を殺害した理由は理解しがたい。
タイトルが秀逸。疑似家族のR.P.Gのことだと思っていたら、それだけではなかった。

(ネタバレ)
あとがきで、作者は、地の文の中に真実でない記述があることを詫びているが、その部分を読み返してみると、自己紹介の後にそのことを使っているので、個人的には特に問題があるとは思わなかった。

No.2 6点 スナーク狩り- 宮部みゆき 2016/01/11 16:36
他者への恨みをリンクさせた、スピード感のあるサスペンス小説。木田クリニックで関係者が出会う場面が山場。ストップモーションのように感じさせる迫真の描写で、子供(竹夫)の存在がキラリと光っている。慶子が修治に説明した銃の取扱いに関する注意が、真相にうまく活かされている点が上手い。結末は悲惨で、やりきれない。カタルシスが得られず、まとめ方としてはあまり上手ではないと感じた。

No.1 5点 龍は眠る- 宮部みゆき 2015/11/03 15:20
「クロスファイア」と同様に超能力を持った登場人物の物語であるが、「クロスファイア」の方が超能力を持った人物の悲哀や生きにくさがうまく表現されていたのに対して、こちらは上滑りというか、切実に伝わってくるものがなかった。冒頭のマンホールの事件なども、現実にはありそうもない話だと感じた(車のエンジンが水をかぶるといけないからマンホールを開けるとか、ポルシェにマンホールを開けるためのヴァ―ルが積んであるとか)。他にも、不自然な設定がいくつかある(口がきけない七恵の家に電話があること、空き巣の調査に来た警察官が「大事なものはどこに隠していますか」と訊くことなど)。
また、宮部さんの作品でいつも感じることだが、男性がうまく描けていないと思う。総じて、実際の年齢よりも幼稚で、浅薄な印象を受けてしまう。
最終ページに近付くにつれて、真相も見当が付いてしまい、ミステリーとして特に取り上げるようなところはないし、最後まで読んでも、結婚対象として不適格の烙印を押された主人公が何かを掴んだとは感じられなかった。

キーワードから探す
りゅうぐうのつかいさん
ひとこと
好きな作家
採点傾向
平均点: 6.29点   採点数: 84件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(19)
東野圭吾(14)
宮部みゆき(4)
麻耶雄嵩(3)
横溝正史(2)
青崎有吾(2)
江戸川乱歩(2)
鮎川哲也(2)
ドロシー・L・セイヤーズ(2)
連城三紀彦(2)