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りゅうぐうのつかいさん
平均点: 6.29点 書評数: 84件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2 6点 水族館の殺人- 青崎有吾 2017/07/17 17:09
水族館の営業時間中に、職員がサメ水槽に転落して、サメに食べられるというショッキングな事件の発端、容疑者のアリバイが全員成立したのちに、一転して全員にアリバイがなくなるという展開、時計にまつわるロジックなどは面白いと感じた。しかし、アリバイトリックで使われた方法、犯人の動機など、疑問に感じる箇所があった。また、現場図が示されているにも拘わらず、現場の状況がわかりにくいというのが最大の難点。

①アリバイトリックの方法(アリバイトリックの方法は物語の早い段階で明かされている)
アリバイトリックで使われた方法は確実性や再現性に乏しく、正常な思考力を持った犯人であれば、このような不確実な方法を採用したりはしないだろう。はっきり言って、ショボいトリックだ。落下するまでの時間を犯人はどうやって知るなり、予測できたのだろうか。被害者の仕掛けへのもたせかけ方によって、仕掛けにかかる荷重が変わり、落下する時間が違ってくると思うが。また、トイレットペーパーの巻き方(巻く密度)によっても、落下時間は変わるはず。さらに、空調等で空気の流れがあれば、仕掛けに同じように水が落下するとも限らない。最悪の場合、すぐに落下してしまう危険性もある。
裏染が落下までにかかる時間を調べるために、このトリックの再現実験をしているが、杜撰すぎる。演劇部員が制作した模型を使った再現実験にどの程度の信憑性があるのだろうか。落下するまでの時間の推定方法もよくわからない。
『死体を支えるのに一キロあたり紙が何センチ必要で、それが何秒で溶けるかってのがわかれば、あとは計算できるから問題ない』
いったい、どんな計算式を使って、計算したのだろうか?「死体の重さ」と「それを支えるのに必要なペーパーの長さ」が必ずしも正比例するとは思えない。また、落下してくる水滴と紙が溶けるまでの時間との間にどのような関係があるのだろうか。
裏染がこのトリックを説明した時に、周囲の人間が大袈裟に感心するのだが、手前味噌というか、作者の自画自賛に感じた。

②犯行の動機
非常に意外で屈折した動機ではあるが、いくらなんでもこんな動機で人殺しをするというのは常軌を逸している。

ところで、犯人の足跡がドアの前まで続いていた理由について、どこかで説明されているのだろうか?

No.1 6点 体育館の殺人- 青崎有吾 2016/04/26 16:06
事件は、学校の体育館で起こった殺人事件1件のみで、事件を取り巻く状況はいたってシンプル。「読者への挑戦」を付けた本格志向の作品(もちろん、私は真相も犯人も全くわからなかった)。
この作品は、ロジックが売りのようであるが、確かに論理的な推理が示されている部分もあるが、強引な決めつけによるロジックの綻びも随所に見られる。
犯人の密室からの脱出は意外な方法ではあるが、危険すぎるし、この方法が使えるかどうかを記述内容だけでは読者に判断できない。
現場に残された傘の存在が大きな欺瞞になっており、解決編はなかなか読みごたえのある内容であった。


(ネタバレ)
裏染が示した、DVDとビデオデッキのリモコン切り替えの論理だが、他の理由も十分に考えられる。
たとえば、次のような理由だ。
①演劇部員が前日にリモコンでビデオの電源を切った際に、誤ってDVDの切り替えボタンを押した。
②事件のあった直前に、朝島がDVDを見て、それを他人に知られたくなかったので、コンセントをビデオの方に戻した。
また、犯人がDVDの内容を直ちに確認しなければならなかった理由も説得力に欠ける。確認せずに、2枚とも持ち出せば良かったのではないだろうか。犯人が映像関連に重点を置いて捜査が進められることを危惧したから、という理由を挙げているが、まるで説得力がない。
傘の論理に関しても、ブランド品だから置き忘れの傘ではないと決めつけているのは強引だ。たとえば、部室に置き傘をしているようなケースなら、ブランド品でも構わないはずだ。また、傘を2本持って出入りする生徒が防犯カメラに映っていなかったことから、学校の外に出て傘を入手した可能性はないと断じているが、折りたたみ傘で外に出て、戻ってくる時には折りたたみ傘を畳んでバッグに入れれば良いだけではないだろうか。帰りのときだけ、ご都合よろしく、備品室の傘を借用したことになっているのは、どうにもいただけない。

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りゅうぐうのつかいさん
ひとこと
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