皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
名探偵ジャパンさん |
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平均点: 6.21点 | 書評数: 370件 |
No.9 | 5点 | スクイッド荘の殺人- 東川篤哉 | 2022/09/11 20:15 |
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烏賊川市シリーズのみならず、作者としてもかなり久しぶりの長編なのでは?
あまりに長編を書かなすぎて腕が鈍ってしまった……とは思いたくありませんが、数十年前ならいざしらず、令和の世にこれはさすがに厳しいです。バラバラ死体のトリックは面白いものがあっただけに、ここだけ取りだして短編に仕上げた方がよかったかも? 物語の舞台となる「スクイッド荘」が「イカの姿に似ている」というのも、トリックに関わるわけではなく、ただのネタに過ぎず、ここはかなり残念に思いました。 |
No.8 | 6点 | 君に読ませたいミステリがあるんだ- 東川篤哉 | 2022/07/06 17:21 |
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「鯉ケ窪学園シリーズ」まさかの復活!
じつに7年ぶりくらいの新作で、しかも前作までの登場人物は誰も出てきません。もう新シリーズとして立ち上げたほうが良かったのでは? 相変わらず安定の東川節が今作も炸裂。正直、どんでん返しと驚愕のラストがこれまでにないほど幅を利かせている現在のミステリ界において、場違い的な普通さですが、こういうものもありなのでは。むしろなくしてはいけない気がします。 |
No.7 | 7点 | 探偵さえいなければ- 東川篤哉 | 2017/12/01 22:02 |
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シリーズ最新作(2017年現在)ですが、作風はもちろんのこと、鵜飼探偵も流平くんも、初登場以来まったくブレません。時がいくら流れて時代が変遷しようと、彼らと、彼らが住む烏賊川市だけは、ずっとこのままなのでしょう。
非常にグロテスク、かつ犯人が悲惨な目に遭う「とある密室の始まりと終わり」もいいですが、何と言っても本短編集の白眉は「ゆるキャラはなぜ殺される」でしょう。 ゆるキャラ探偵剣崎マイカ、まさかの再登板。これは私も含めた、全烏賊川市シリーズファンが待ち望んでいたのではあるマイカ。 あらゐけいいちの描く、かわいらしく味のある表紙イラストも、もはやシリーズには欠かせない存在となりました。 |
No.6 | 7点 | 密室に向かって撃て!- 東川篤哉 | 2017/12/01 21:51 |
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本格にユーモアの皮をかぶせたこのシリーズの作風は、この頃から今まで、全然変わっていません。本作も、書かれてから十五年も経っているとは思えないほどです。
このシリーズで私が好きなのは、キャラクターやその言動はふざけていても、事件自体は本格(しかも、キャラクターや作風にマッチするような「日常の謎」ではなく、ガチガチの殺人事件)を貫いているところです。銃弾の数や、それが撃たれた場所をあぶり出す推理はあくまでロジカルで、それらを担保する物証もきちんと、しかもかなり早い段階から出してきてフェアです(砂浜で見つけた、あれは、もっとうまく処分するべきだったのでは? とは思いますが)。 このシリーズ、数年前に実写ドラマ化しましたけれど、ほとんど話題にはなりませんでしたね。ガチのミステリ好き以外の、もっと一般層にも読まれてよいシリーズだと思います。 |
No.5 | 6点 | 純喫茶「一服堂」の四季- 東川篤哉 | 2015/02/19 17:05 |
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「ガンダム」後のリアルロボットアニメ。あるいは、「ストⅡ」後の対戦格闘ゲーム、あるいは、「エヴァンゲリオン」後の、謎ばらまきアニメ。
ヒット作の生まれたポイントには、二匹目のどじょうを狙おうと、我も我もと押しかけるのが世の常で、ミステリ界も例外ではない。 そもそもホームズの大ヒットが後の名探偵ブームを生み出し、現在に至っているのだから。 店の美人店主がお客の持ち込む事件を聞いて謎を解く、安楽椅子探偵もの。今もっとも熱いミステリジャンルではないだろうか。 「この東川篤哉が、二匹目(三匹目とかそれ以上かも)のどじょうになってやろうではないか」と、堂々と立ち上がったのかどうかは知らないが。 この手の作品が、ともすれば安易な「キャラ萌え」に傾向しがちであることに、「本格ミステリとは、こういうものだ」と、我らが東川篤哉が叩きつけた挑戦状。それが本作である。 そもそも扱う事件すべてが、人が死ぬ血みどろの殺人事件。事件の惨劇度は回を追うごとにエスカレートしていき、最終話でその汚れ具合は頂点に達する。 そして迎える大団円。これには賛否両論出てくるだろうが、私は、作家、いや、ミステリ作家、東川篤哉の矜持を感じた。その気になれば、もっとこのシリーズで商売できたはずだ。 「流行り物に乗ったけど、俺、ミステリ作家だからね」 そんな作者の声が聞こえてくるような潔い結末だった。 |
No.4 | 6点 | 密室の鍵貸します- 東川篤哉 | 2015/01/19 17:29 |
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ドラマで観賞後だったため、トリックなどは既知の状態で読んだ。
あくまで本格、あくまでミステリに徹し、そこへ、「少しかけ過ぎ」とも思えるユーモアというスパイスを振った本作は、何とも独特な味わいのある作品となった。 新本格が市民権を得て幾年。その新本格に影響されて書かれた作品に、解説で有栖川が語ったような「本格ミステリを出汁にして遊ぶ」ような作品が多い中、(「脱格」というネーミングはこの手のスタイルを的確に表現している)本作の作者は、数少ない「正当派本格ミステリ書き後継者」と呼べるのではないだろうか。 デビュー作を読んでみて改めてそう感じた。 妙にパーソナリティを持った三人称の語り手(お前は誰なんだよ 笑)も、普通にやっては「ふざけてるのか」と言いたくなるが、東川作品では許せてしまう。 これも有栖川の言葉だが、「ユーモアというのは、作るのが難しい割に、シリアスや浪花節より低く見られがち」で、決して利益率(?)の高い仕事とは言えないのだが、デビュー作からそこに挑戦し、今もそのスタイルを守り続けている作者の心意気は凄い。 |
No.3 | 6点 | 魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?- 東川篤哉 | 2014/12/20 11:25 |
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いつテレビ朝日で金曜夜にドラマ化してもおかしくない、ライトな短編集。
魔法で犯人に自白させ、そこから証拠固めというほぼ一貫したスタイル。犯人特定に至るプロセスを大幅に短縮できるこのシステムはいいのだが、ひとつ問題がある。それは「その魔法による自白は常に100%不可謬なのか?」という点だ。 魔法も万能ではなく、万が一の確率で犯人でない人物に自白をさせてしまったのだとしたら。主人公たちは冤罪を作るために一生懸命証拠捜しをするという、笑えないある意味現実的(?)な事態になってしまう。 これを防ぐために作者が取った小説としてのシステムがいわゆる「倒叙もの」である。冒頭で犯人が犯行を行っている場面を読者に見せて、「間違いなくこの人が犯人ですよ」と宣言しているのだ。 だから、読者は後に魔法使いが指摘する犯人が、間違っていないと認識でき、安心して読み進めることができるのだ。 しかしこれは作品世界の外にいる我々読者だけが知りうること。作中人物の主人公刑事が、魔法使いの魔法をまったく鵜呑みにしてしまっているのは少し問題だと思うが、そんな重箱の隅をつつくような作品ではない。作者特有の7割笑って3割すべるギャグとともに気軽な気持ちで楽しみたい。 |
No.2 | 6点 | 館島- 東川篤哉 | 2014/07/21 15:19 |
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屋上(展望室)の形状の説明があった時点で、「もしかして」と思ったが、「いや、それはあまりに荒唐無稽すぎるだろう」と思っていたのだが、実際の仕掛けはこちらが考えていたものと違ったので、まあ、納得した。(私は屋上のネジ穴に実際にクレーンか何かで巨大なドライバーを突き刺して回すのだと思っていた)
最初の段階で、どうも建物の外観を把握しずらかったので、外観図を入れてくれればいいのに、と思ったのだが、それを入れたら一発で見抜かれてしなうからやらなかったのかと、ここでも納得。 あれだけ巨大な物体を動かすのは甘くないと思うが、(福岡ドームの開閉でも20分かかるという。あと動力とか)そういう突っ込みを入れるのは野暮だ。(じゃあ言うなよ) この大胆で豪快なトリックを素直に楽しみたい。 |
No.1 | 6点 | ここに死体を捨てないでください!- 東川篤哉 | 2014/07/17 20:36 |
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ドラマは観ていたが、作者の実作を読むのはこれが初めて。でも、これはドラマ化難しいだろうな(笑)
ギャグとミステリの融合を評価されている作者だが、これを読んだ限りでは、少々、少々なのだが、スベってるような感じを受けた。作品の中では新しいもののため、「こうすりゃ笑うだろ」という計算が透けて見えすぎというか。変に慣れているような印象。 しかし、笑いは好みの問題だから、ミステリのトリックや仕掛けなどと同じに、万人が賞賛する絶対的なものを作ることは無理で、そう考えると作者は困難な道を進んでるなと思った。 |