皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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tider-tigerさん |
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平均点: 6.71点 | 書評数: 369件 |
No.8 | 5点 | ホプキンズの夜- ジェイムズ・エルロイ | 2019/08/14 17:44 |
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~変装が得意なロス市警のハーゾグが失踪した。ホプキンズの捜査によりハーゾグが六人の警官の言動をさぐっていたことが判明する。その六人の中にはかくいう「ロイド・ホプキンズ」も含まれている。この頃小さな酒屋で三名もの犠牲者を出す強盗事件が発生する。ホプキンズはこの二つの事件には繋がりがあるのではないかと考えはじめる。~
1984年アメリカ。原題は『Because the Night』ブルース・スプリングスティーンに同タイトルの曲があるが関係は不明。 『血まみれの月』に続くロイド・ホプキンズシリーズの二作目。エルロイというと母親の事件が取り沙汰されがちだが、本シリーズに母親の翳は見えない。むしろ父子関係に焦点が当てられている。 ロイド・ホプキンズはIQ170とかいう設定になっているが、これはあまり意味のない設定だった。頭の良さよりも頭のおかしさでキャラが立っている。この人物はエルロイという人間を露悪的かつ誇張して体現しているような気がする。 物語は前作『血まみれの月』と同じく異常心理系ではあるが、こちらの方がストーリー性に富み、よくまとまっている。『血まみれの月』は犯人が人を殺すまでの心理的な過程が細密に描かれるも、話がいささか単調で、犯行も非常に杜撰で、ホプキンズは根拠のない思い込みで動いている。正直なところ瑕疵が目立った。 今作『ホプキンズの夜』はツカミはいいし、ホプキンズの捜査にそれなりの根拠が伴い、犯人に近づいていく過程が緻密になって、敵方との頭脳戦もらしくなっている。ただ、話がどうも派手にならず、内にこもってしまうのが難点。また、ラストもうまくまとめきれていない印象。 なかなか面白いが、(エルロイにしては)爆発力がない。 前作より向上した部分はあるものの失ったものは大きい。 エルロイファンはよりコントロールされた本作よりも、作りは雑だがエルロイらしさが無駄に横溢する前作『血まみれの月』に軍配を上げるのではなかろうか。 だが、エルロイは後退したわけではない。少しずつ前に進んでいる。 ホプキンズ三部作は面白いが、必要なパーツを少しずつ入手する過程であったようにも思える。『血まみれの月』『ホプキンズの夜』でそれぞれパーツを入手し、シリーズ三作目『自殺の丘』でエルロイは最後のパーツをつかんだ。すべてのパーツを手に入れて、念願だった自作『秘密捜査』の焼き直しに着手する。もちろんそれは出世作『ブラック・ダリア』であった。 |
No.7 | 7点 | アメリカン・タブロイド- ジェイムズ・エルロイ | 2017/11/01 20:41 |
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悪い奴やちょっと悪い奴やすごく悪い奴がケネディ一家の周囲に群がる。金、殺し、情報、利権が飛び交い、大きな渦となって一つの時代を作りつつあった。裏切り、そして、三人の男たちが、アメリカ史上最大の殺しに向けて動き始める。
『アメリカが清らかだったことはかつて一度もない』 エルロイファンには有名なこの一文で幕を開ける、アンダーワールドUSA三部作の第一作目。 ロイド・ホプキンズ刑事三部作の書評をちまちまと始めようかと思っていたのですが、トランプ大統領がツイッターでJFK関連の機密資料を公開するとか言い出したので急慮本作を。 シリーズがLAからUSAと変わり、そのとおりに物語のスケールは大きくなります。エルロイには国家とかそういう大きな話はして欲しくなかったのですが、予想に反してかなり面白かった作品です。エルロイ入門編としても悪くないかもしれません。 ノビー(落合信彦氏)の諸作ではケネディ兄弟=アメリカの英雄でしたが、本作では弟はともかく兄は女好きの日和見主義者でしかない。 アメリカの正義といえばまずはケネディ神話が思い浮かびますが、その神話を粉砕する話です。 またしても主要人物は三名で、そのうちの一人の造型が今までに見られなかったパターンでユニーク。三人の力関係の移り変わりも興味深く、脇を固める連中も相変わらず面白い。 特に良かったのは、歴史的事実を踏まえながら、ケネディへの憎しみがいかに醸成されていったのかを丹念に描いているところ。マフィアとかCIAとかではなく、個人レベルの憎しみを大きな渦へと変換していく。 また諜報、殺しの世界におけるプロの不安定さ。時計のように仕事をこなす組織の歯車ではなくて、良くも悪くも人間としての不確定要素をきちんと描いているところ。 さらに特記すべきこととして、あの人物が登場しない。JFK暗殺を描いた作品で、この人物が登場しないというのは前例があったのでしょうか。これは解説を素直に読めばドン・デリーロが同じ事件を描いた作品『リブラ~時の秤』にエルロイが『やられてしまった』からだと思われます。 ケネディ大統領誕生~暗殺までの流れをまったく知らない方は実在、架空の人物の区別、なにが事実でなにが創作なのかが非常にわかりづらいかもしれません。 ケネディを単なる一人の人間にまで引きずりおろしたのは良しとして、その手法がワイドショー的でやや安易だったのが少々気になりました。 どの部分が事実かと頭を捻るよりも、JFK暗殺において裏でこのような暗躍があったのかもしれないなあと、そんな風に楽しむべき作品でしょう。 そして、USA三部作はエルロイ第二の頂点(私見)『アメリカン・デストリップ』へとなだれこみます。 個人的にはLA四部作の方が好きなので、本作は7点としておきます。 |
No.6 | 8点 | ビッグ・ノーウェア- ジェイムズ・エルロイ | 2016/05/09 18:07 |
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新年早々に発生したホモ絡みと思われる猟奇殺人事件の犯人を追うダニー・アップショー保安官補、赤狩りで名を上げようとするマルコム・コンシディーン警部補、暗黒街の始末屋バズ・ミークス。この三人の行く道が絡み合い、友情が育まれ、協同戦線が張られます。やがてホモと赤が絡み合い……
視点人物であるこれら三名のうち、キャラが面白いのはバズですかね。深みがあるのはアップショー。アップショーの追っている事件も面白い。コンシディーン主体の赤狩りの話は日本人にはいま一つピンとこないかも。コンシディーンパートは家族小説の趣も、ちこっとあり。 私はいきなり死体を転がす話よりも、序盤で下地を作り、それから動き始める話の方が好きなので無問題なのですが、第一部は多少退屈に感じる方もいるやもしれません。安心して下さい、一部の終わりくらいからぐいっとテンションが上がります。 三人のうち、誰を軸にして読むのか。 LAコンフィデンシャルではエドかバドかで迷いますが、本作ではダニー・アップショーに軸を置いて読むことを薦めます。 甘くはありませんが、しみじみとした余韻があり、読後感は良い話だと思います。ちなみに本作を読まずにLAコンフィデンシャルを読むと、LAのプロローグの意味がまるでわからずということになります。 LA四部作の中で、もっとも驚きのあった作品でした。ミステリ的な意味ではありませんが。 読者のテンションが上がるシーンが多く、お肌に悪そうな緊張感が最高です。構成も前作ブラックダリアよりはるかに良い。ホモとアカと暗黒街が綺麗に収斂していく。ただ、コンシディーン警部の家庭の話がちょっと消化不良気味。 タイトルBig Nowhereの意味が判明したときに、すべてが夕闇に溶け込んでいって、なんだか自分が静かに狂っていくような気がしました。いや、それほど凄いことでもないのですが、酷く感じ入ってしまいました。 とある動物が小道具として登場しますが、使い方が巧妙というわけでもないのに物凄くインパクトがある。 エルロイの作品では悪徳警官ばかりが出てきますが、本作のコンシディーンとアップショーは比較的まともな部類です。 エルロイの出世作とされるブラックダリア、映画化されたLAコンフィデンシャル、異様な文体と某作家さんのとち狂った解説で有名なホワイトジャズ。これらの谷間に埋もれて地味な印象の本作ですが、実は最初に手に取るべきは本作だと思います。ブラックダリアがダメだというエルロイファンはけっこういると思いますが、本作がダメだというエルロイファンはあまりいないと思われます。 LAコンフィデンシャルVSビッグノーウェア 完成度は本作よりもLAコンフィデンシャルの方が上だと思いますが、その理由はLAは…… 1事件の裏の陰謀が深く、スケールが大きい。 2視点人物の三人が別個に調査をし、それらすべてを重ね合わせることにより真相が浮かび上がるというその構成が非常に緻密で素晴らしい。 3最初に激しい対立があり、その後、友情が育まれていく、その過程が複雑で緊迫感があってリアル。 ブラックダリアVSビッグノーウェア miniさんは三人称多視点小説の利点をあげて物語の奥行きを重視、本作に軍配を上げていらっしゃいましたが、私は一人称小説の利点を。文体に変化をつけやすく、視点人物の生の声が聞こえてくること。三人称小説は文体に変化をつけるのが難しい。 物語に奥行きを持たせるには多視点が有利ですが、語り口の工夫や登場人物の心情、情念の表現には一人称の方が断然有利です。 まあなにを言おうとも小説の出来はブラックダリアよりもビッグノーウェアの方が二枚くらい上なんですよね。 以下蛇足ではありますが。 好き嫌いだけで順位をつけるなら、ブラックダリア>ホワイトジャズ>ビッグノーウェア>LAコンフィデンシャルとなります。私は一人称小説の方が好きなのかも。ホワイトジャズの採点を低め(7点)にしたのは二つ理由があります。 どう考えても万人に薦められるようなものではないこと。ビッグ、LAを未読だと感動が半分くらい薄まってしまうこと。ホワイトジャズには最高にかっこいい一行(二行になるのかな?)があるのですが、本作とLAを読んでいないとその一行にこめられた意味がまったくわかりません。 LA四部作の書評終了。なんだか寂しい。 |
No.5 | 6点 | レクイエム- ジェイムズ・エルロイ | 2016/04/28 19:41 |
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探偵業の傍らに車の回収業も請け負っているフリッツの元に俺の妹の身辺を調査しろという依頼が舞い込む。依頼主の職業はキャディとのことさが、この男には常軌を逸したところがある。だが、金はたんまりと持っているようだった。調査をするうちに、フリッツはこの男が自身と過去にちょっとした接点があったことを知る。
エルロイのデビュー作です。 チャンドラーやロスマクを読んで小説の書き方を学んだというだけあって、私立探偵を主人公とした古典的ハードボイルドを踏襲した小説でした。普通に読めて普通に面白い。ただ、私はLA四部作を先に読んでしまったので、面白かったけど拍子抜けという奇妙な感想を持ちました。 それでもエルロイらしさの萌芽はありました。主人公に捜査を依頼するキャディがけっこう凄まじい。後の作品に登場するアクの強い連中に優るとも劣らない存在感があります。過去に縛られたやや分裂傾向のある主人公もエルロイらしい人物造型です。 誇張、極端から極端へ、二律背反、エルロイの特徴は既に現れています。 読みやすさという観点からエルロイの入門作を選ぶのなら、私は本作を薦めます。 ディープなエルロイらしさをいきなり味わいたい方はビッグノーウェアからどうぞ。 ビッグノーウェア→LAコンフィデンシャル→ホワイトジャズ この三作は順番通りに読むことを強く推奨します。ブラックダリアはどこで読んでもOKです。 エルロイのいいところ 妄執と情念→ブラックダリア ヒリヒリするような緊張感、皮膚感覚→ビッグノーウェア 精緻なプロットと高い完成度→LAコンフィデンシャル 破滅への疾走とそれに伴う文体意識→ホワイトジャズ その他のいいところ 会話がいい。リアリティがある。会話というのは本来は省略が多く他者には意味がわかりづらいことが多々あるが、省略どころか会話を膨らませて読者にいろいろと説明しようとする書き手が多過ぎる。説明が必要なのはわかるが、会話としてのリアリティを保つ工夫をして欲しい。 会話繋がりで、尋問シーンが読ませる。エルロイの尋問というと暴力で吐かせるイメージがあるが(確かに暴力や脅しも頻繁に用いられるが)、話術で吐かせるテクニックもなかなか。警察ものは尋問シーンが極めて重要だと思うが、それをうまく書ける作家はあまり多くない。 主人公や主要人物がやたらと人を殺す が、なんの罪もない人間が虫けらのように殺される場面は人があれだけ死ぬわりには非常に少ない。悪人たちが勝手に殺し合う。 悪人のことを描くが、悪人を賛美はしない。ヤクザや不良が格好良く綺麗に描かれている作品よりよほど健全だと思う。 感情移入しづらい人物を多く配置する。主人公でさえある種の卑劣さ、受け入れがたい欠点を持っている。なにがいいところなんだと言われそうだが、いいところだと私は思う。 高度な技術で綿密に計算されたプロットを組むも、暴走して制御不能になっている部分も散見される。そこが面白い。 悲しい終わりはあっても、不思議なことに読後感はそんなに悪くない。 エルロイは厳格な法治国家を理想としているように思えてならない。そして、彼は自分が無法な世界から逃れることはできないとも思っている。母を殺害された時点で、彼は地獄の住人となることを運命づけられた、そんな気がしてならない。 |
No.4 | 8点 | LAコンフィデンシャル- ジェイムズ・エルロイ | 2016/04/23 14:01 |
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ナイトアウルの虐殺なる事件に関わった三人の警察官の物語です。三人はそれぞれが過去に傷を持ち、エリート、肉体派、猟犬と三者三様。誰を軸にして読むかで悩みました。この三人が激しく反目しながらも、やがて一つの目的に向かうことになるのですが、非常に複雑精緻なプロットにも拘わらず、人物造型は一貫性が保たれ、なおかつLA四部作の中では読みやすい部類(私見)。陰謀も奥深い。
エルロイ作品の中でも屈指の完成度を誇るものだと思われます。真っ先に映画化されたのも頷けます。 ただ、完成度は高いのにどことなく薄味に感じてしまうのは自分もminiさんと同意見。 その理由を自分なりに推理してみます。 作者の心情としては肉体派警察官バドに思い入れがある(その理由はブラック・ダリアや秘密捜査などにも登場したモチーフ 母の死です)。しかし、バドはややこしい陰謀を解き明かしていくのが得意なタイプではなく、バドに焦点を当て過ぎると話が進まない。鼻の利く猟犬タイプのジャックも必須ですが、やはり、プロット上は頭脳明晰なエドが主人公でしょう。故にLA四部作の中では頭で描いている部分が一番多い作品のように見受けられました。こうした葛藤がエルロイの筆を鈍らせたというか滑らせたのではないかと? その証拠に(なるのか?)終盤ではエドがまるでバドのようになっていました(笑) ※人物造型の一貫性がなくなってしまったわけではありません。 いずれにしても、これだけ高度な技術で組み上げられた作品ですから、薄味だなんてことを言うとバチが当たりそうですね。 最後に気になった点 とある人物(二名)の死がどうも、呆気なさ過ぎて悲しい。 過去の事件の真相が作り物めいているというか、やり過ぎというかで腑に落ちない。 |
No.3 | 6点 | 秘密捜査- ジェイムズ・エルロイ | 2016/04/13 03:20 |
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有能だが野心の強いフレディ巡査は捜査課の刑事を目指しており、先走った行動が目立つ。フレディは知り合いの女性が扼殺された事件で単独で捜査を行い、犯人と思しき男を突き止める。警部補ダドリー・スミス(後の作品にも登場する)の指示の元、その男に暴力的な尋問を行い自白を取ったのだが、それは取り返しのつかない過ちであった。
エルロイの二作目にして、エルロイらしさは随所に見られるも、まだエルロイじゃないといった印象の作品(故にこの点数)。その証拠に読み易い。LA四部作以降の作品よりも初期の作品の方が完成度が高いと考える人がいても不思議ではない。 特筆したいのはブラック・ダリアとの共通点。まず物語の構造が非常によく似ている。人物造型も殺されたシングルマザーの看護婦はアル中で男の出入りが激しく、エルロイの母親を思わせる。その息子の人物像にはエルロイと重なるところがあるように思える。ラストが甘いところまでそっくりだ。ブラックダリアに思い入れのある方には一読を薦めたい。 さらに、作中でブラック・ダリア事件(実在ではなくエルロイが後に創作した架空の事件のほう)について言及がある。本作執筆時点でブラック・ダリアの構想が作者の内にあったのかもしれない。 初期作品できちんと書く技術の修養をしたうえで、いかに自分らしく書くかを模索した結果があのLA四部作なのではないかと想像する。 「小説は技術で書くものではない」まったく同意できない意見だが、仮にエルロイがこれを言ったとしたらそうだよねと頷くしかない。 |
No.2 | 7点 | ホワイト・ジャズ- ジェイムズ・エルロイ | 2015/06/22 21:16 |
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好き嫌いはともかくとして「いかに書くか」を突き詰めたエルロイの一つの頂点だと思います。エルロイはLA四部作で米文学史に名を残す作家になったと思います。
悪徳警官クラインが巨悪に翻弄され破滅していくさまを電文調の独特な文体で綴った物語です。説明が極力排除され、主人公の独白というかその時その時の思考を連ねていく文体で、それだけではあまりにもわかりづらいので新聞記事の引用なんかを入れて全体像をつかみ易くする工夫をしています。ので、そういう部分を読み飛ばすとわけがわからなくなるおそれがあります。気をつけて下さい。 エルロイを狂犬と呼ぶ人もいるようです。本書のあとがきでも、エルロイは狂っているみたいなことが書かれていました。 うーん、自分にはそうは思えないのですが。作中から法が厳格に守られる世界へのエルロイの憧憬が仄見えるのは気のせいでしょうか。 本書の序にロス・マクドナルドの引用があります。 ――要するに、わたしには生まれた土地があり、そこの言葉から離れられないということだ。―― これはエルロイの真情であると自分は感じました。こういう人を狂犬などと呼ぶのは抵抗がありますね。 |
No.1 | 9点 | ブラック・ダリア- ジェイムズ・エルロイ | 2014/06/01 15:20 |
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個人的には読みやすい文章とは思えませんでした。
構成も下手だと思いました。 焦点定まらず読み筋が掴みにくい作品でした。 主要人物の名前がブライチャートとブランチャード、途中でどっちがどっちだかわからなくなったりもしました。「どっちがどっちでも構わないんだ、どっちも俺なんだよ」と作者が囁いているような気がしました。 ブラックダリア事件という実際に会った猟奇殺人を題材にしていますが、作者に猟奇趣味はないであろうと確信しています。 この作品でエルロイは自分の母親を汚し、殺しました。だが、それを徹底することはできませんでした。 自分はこの小説のラストを甘いと感じましたが、その甘さが生まれた理由はエルロイが母親に対する気持ちを作品に反映させてしまったからではないかと思います。 これは技術ではなく情念で書かれた小説だと思います。 棺桶に入れて欲しい一冊です。 支離滅裂な書評で申し訳ありません。 |