皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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大泉耕作さん |
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平均点: 6.26点 | 書評数: 65件 |
No.3 | 5点 | 狂骨の夢- 京極夏彦 | 2012/06/02 20:58 |
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解決編に二百頁を要しており、やはり丁寧さは流石と唸らされ、なおかつ通常の作家との筆力の差は一目瞭然であり、それを一千頁も持続させ、しかも二カ月ほどで書きあげたというのだから並大抵のことでじゃあない。しかし・・・、前作の『魍魎』と比べてしまうとその差がついてしまう。一千ページを持たせるほどの展開と要素に欠けていた、と言ってしまえばそれまでですが、相変わらず漫画チックな登場人物が右往左往していることに読者が付き合わされていた感がしてしまう。
事件の真相自体は水準を越していると言えます。しかし、今回ばかりは荒唐無稽な「謎」が展開をせき止めてしまい、『姑獲鳥』や『魍魎』に見られた探偵小説味が薄らいでしまったような気がします。 筋合わせがこのシリーズの醍醐味的なモノなのですが、筋合わせは中々のものです。 |
No.2 | 5点 | 魍魎の匣- 京極夏彦 | 2012/01/29 21:31 |
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匣の様に分厚い。
紙で作られた匣だ、こりゃ・・・ この作品の持ち味を一貫させるとどうしても、あのような動機やロジックなどにならざるを得ないことは前作『姑獲鳥の夏』でも予め証明されているし、真相をどうのこうの言っていたら埒が明かない。ただ、探偵小説的に些か不安定なところがあることに変わりはないし、前作のように事件中の人間の一貫性があり納得の行くような個人の解明が成されていないこと(これは独断でありますが)が要因となってあんまり腑に落ちなかった。 しかし、小説としては大いに評価されるべき点は多いように思います。文章力とか世界観など。 前作と変わらず演出の巧みに驚かされます。特に今回は伏線や京極堂の薀蓄、事件の背景も兼ねてその空気は始終一貫したまま千ページに及ぶ文章によって保ち続ける筆力には脱帽します。 この作品で幾らか体力消耗しましたが、また機会があれば是非とも触れてみたいシリーズです。 |
No.1 | 7点 | 姑獲鳥の夏- 京極夏彦 | 2012/01/04 21:54 |
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京極夏彦ははじめてです。
解決の章におよそ百ページ費やされた分、非常に丁寧な解決となっていて好印象を持ちました。 が、探偵小説としては推理の余地がないため幾らかがっくり。しかし、これはもともとロジックがどうだ、こうだの小説じゃないですし、書評は難しい・・・。 世界観は横溝正史に似たようでありながら独特の雰囲気を作り出し、読者が寛大に見ればすんなりと入り込める世界になっています。 プロットも著者が暇つぶしに書いたものしては、本業のヘタな文士たちに比べて抜群に巧妙で、学もあります。読んでも損はないと思います。 ミステリとしての評価は前者の皆さまのいう通り大分落ちますが・・・。 |