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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1938件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.106 5点 日曜日には鼠を殺せ- 山田正紀 2025/03/12 13:22
 絶体絶命難攻不落呉越同舟裏切り必至――みたいな短編をこの作者は幾つも書いており、それでは物足りないからもうちょっと引き延ばそう、と言うことで中編の祥伝社文庫に一冊、とまぁそれ以上のものではない。あの人が自ら身を投げ出すのは意外だったけど、基本設定が弱い(舞台になる “恐怖城” の情景がイメージ出来ない)ので後半の展開もあまり驚けない。漫画の原作には良いかも。

No.105 8点 翼とざして- 山田正紀 2025/01/31 13:05
 記憶喪失は “安易” でコレならOK? と突っ込みたくもなるが、山田正紀ミステリにしては自家中毒を起こさず走り切った。まぁ “アイデンティティの揺らぎ” は何度も使ってるネタだから、たまにはビシッと決めないと。犯人の気持にはグッと来たね。最大の謎はサブタイトル?

No.104 5点 ふたり、幸村- 山田正紀 2025/01/24 12:09
 告白するが、“真田信繁と真田雪村は別人だったと言う話” と言われてもピンと来なかった。歴史には弱いんです。
 伝奇ものとしても写実的な歴史ものとしても中途半端。別人説だけを歴史の流れの中に投げ込んで、無理無く融合させる為に敢えて深入りは避けた、と言う感じ。
 “子役と動物には勝てぬ” とか言うそうで、馬のキャラクターが良し。第三章、神鷹の視点を利用した飛躍もスリリングだった。邪推するならこれが『屍人の時代』の元ネタになったのかも。

 あ、ここにもシェイクスピアが……。

No.103 5点 サブウェイ- 山田正紀 2025/01/18 14:05
 幾つかのエピソードが並ぶが、パズルのピースのように上手く嵌まり合うことは無く、残念ながら雰囲気だけで終わってしまった。
 地下鉄駅で死者に会える云々の都市伝説を、登場人物が皆かなり本気で信じているようなのが異様。既に片足突っ込んでいる者ばかり何故か集まる世界観が怖い、とは言える。物語ではなくそういう空気の “絵” だね。

No.102 6点 創造士・俎凄一郎 第一部 ゴースト- 山田正紀 2025/01/10 17:12
 あっちでもこっちでも殺意が芽生える不穏な街。俎凄一郎と言うのは『篠婆 骨の街の殺人』にチョロッと名前だけ挙がった “とき” みたいな存在か。多分その頓挫した “街シリーズ(?)” の雪辱戦として、同じ講談社ノベルスで立ち上げた新シリーズだが、結局また1冊きりで立ち消え。まったくもー。

 微妙に螺子の緩んだようなエピソードが続く。摑みどころのない描写は話が進むにつれますます曖昧になり、雨に打たれて迷い込む街は更に荒涼とし、足下はどんどん覚束なくなる。“何度も死ぬ犯人” は、トラウマで精神が歪んだと理屈を付ければ何でもアリじゃないかと揶揄したくもなるが、薄暗い街の空気と相俟って背筋が薄ら寒くなった。
 複数の事件が意味ありげに並ぶだけで未整理のまま終わってしまったので連作長編としての納まりは悪いが、決してつまらない作品ではない。雰囲気は『篠婆 骨の街の殺人』よりも『氷雨』に通じる?

No.101 6点 篠婆 骨の街の殺人- 山田正紀 2025/01/03 11:34
 列車内の事件そのものはそこまで重要ではなく、背景となった歴史と心情がメイン。スケールの大きな動機、その前で立ち竦む主人公。“著者のことば” で『神狩り』に言及しているのも納得である。
 それとの繫がりを鑑みても、謎としてより魅力的なプロローグの “窯から出て来た骨” をもっとフィーチュアしてはと思う。が、話の順番としてそうもいかないかな。惜しい。

 それとは別に、全5冊で構想したものの1冊で頓挫したシリーズ、と言うことで未処理の伏線が散らばっているのが何とも切なく。兵どもが夢の跡、って感じだ。

No.100 7点 長靴をはいた犬 神性探偵・佐伯神一郎- 山田正紀 2024/12/06 12:02
 事件全体の構図は面白くも背筋がゾッとさせられる。
 その中心に位置する、“他者に対する無意識下での影響力” みたいな事柄は、先行作品後続作品色々思い当たるのであって、それだけでは弱い。しかし説得力強化の裏打ちがしっかり為されており、それも含めて “神性探偵” ならではの事件になっている点が強い。

No.99 7点 デッドソルジャーズ・ライヴ- 山田正紀 2024/11/29 12:54
 山田正紀はこういう感じの連作長編を幾つか物しており、既視感は正直あるのだが、本作は “死” の定義を揺るがすガジェットと、レプタイルの存在によるエロティックなテイストが読みどころ。今時なら強引に特殊設定不条理ミステリ(笑)と呼べなくもない。ボブ・ディランから荻野目洋子まで、サントラ盤でも作りそうな勢いで引用している。え、ファンなの?

No.98 6点 仮面- 山田正紀 2024/11/13 12:36
 犯人と被害者、現実と回想、書き手と読み手。様々な境界線が融解融合する騙りに楽しく幻惑された。記号論的転換によるホワイダニットも、この世界観なら説得力充分イヤ寧ろ斯くあるべしと言う感じ。タマネギの件をダミーに使ってしまうとは贅沢な。
 ▲▼を用いたアレは戴けない。あまりにあからさまだし、テキストが長過ぎ。

No.97 7点 虚栄の都市- 山田正紀 2024/11/08 12:37
 「いったい、何なのだ……」

 この呟きに全てが凝縮されているようだ。流れ来て流れ行く、その一部分を切り取っただけのような、全然完結していないじゃないかと言う物語は、山田正紀の(特に初期)作品には割と見られる形態で、つまり本作、実はSFなんじゃないかなぁ(フレッド・セイバーヘーゲン『バーサーカー』シリーズみたいな)。
 冷酷にバタバタ死ぬ反面、小さなエピソードで人々に “顔” を与える手法が、ここでは取って付けた感じではなく効果を発揮していると思う。アクション系と政治的な題材も上手く並走して、意外と盛り沢山。

No.96 7点 阿弥陀- 山田正紀 2024/10/18 10:59
 “巨大な密室” は、その密室性の完全さについて読者は確信しづらい(ので、作品の謳い文句としては逆効果なのでは?)。本作の真相だって、要は抜け道があっただけと言えなくもない。ただ、そのちょっとした脱力感へ導く為に謎を丁寧に解体する手捌きが格別。派手な装飾は無いのに脳細胞が刺激される。♪とぼけた顔してバンバンバン~、と言う感じだ。

No.95 7点 復活するはわれにあり- 山田正紀 2024/09/13 12:03
 ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムでアクションをやってみたかったのだろうか。半身不随のおじさんがハイテク車椅子で大暴れ。感動ポルノにしてたまるかと言わんばかりのキャラクター造形はドロッと爽やか。主人公の不自由さが却って火事場の馬鹿力のように全体を引っ張って、かつてのスーパーアドベンチャー・シリーズのパワーを再生させている。
 惜しむらくは、“サイボイド” と言う特殊なガジェットが、見た目にせよ動き方にせよイメージしづらい。作者の筆も健闘してはいるが、あまり詳しく説明的な描写をするとスピード感が損なわれるので止むを得ないか。

No.94 7点 ファイナル・オペラ- 山田正紀 2024/08/09 11:49
 山田正紀は神だけでなく仏も狩るのか。
 物語の核がなかなか定まらないのは大問題。ようやく見えてきたのは堅固な構築物ではなく川面に揺らぐ影のようだった。多重解決をあそこまで繰り返してしまうと、残る真相はもうアレしかない、と言う形で先が読めてしまうのには困ったな。
 過剰な表現も強引な暗合も呑み込んで作者が突き刺したかった一つの祈り。つまり狂気とは狂った世界に対する正常な反応である。儚き者よ、物狂え。

No.93 7点 マヂック・オペラ- 山田正紀 2024/08/01 13:34
 歴史には疎いので……勉強になりました。それはつまり、“定説を引っくり返した妄想” に驚くだけの素養が足りないと言うことであって、架空の国の戦争系ファンタジーでも読んでいるような気分だった。

No.92 7点 ミステリ・オペラ- 山田正紀 2024/07/26 12:25
 え、これSFじゃないの? ミステリである以上投げっ放しには出来ないのであって、必ずプロローグに立ち戻らねばならない宿命がこの長さと相容れるのか。“ミステリ” と掲げられたタイトルだけを命綱に谷底へいざ降下。 

 確かに神の扱いは神シリーズ(SF)よりも『神曲法廷』(ミステリ)に近いだろうか。不穏な戦時下の空気感は呪師霊太郎シリーズや『機神兵団』。平行世界説は『花面祭』『螺旋』。個人的には、目立たない作品だが『宿命の女』を想起した。更にヴァン・ダイン『僧正殺人事件』へのこだわり(笑)。
 山田正紀マナーの集大成みたいな感じで、それ故に既視感も強い。面白くしたいなら得意技を全部投入すりゃいいんだろ! と良くも悪くも開き直ったか。濃度の割に読み易く、しかし読んでも読んでも終わらないので胃もたれ必至。このバランス感覚の欠如こそ山田正紀、ではある。
 “これ” はそもそも何なのか? と言う謎に埋もれて殺人事件が単なる徒花みたいに見える。と言う事実こそがコンセプトの勝利を物語る。

 ただ――ごちゃまぜのスープが黄金の一滴に “化ける” 瞬間が、ついに訪れなかった。これだけやられても、私は “理解” を手放して飛び降りることは出来なかったのである。

No.91 7点 氷雨- 山田正紀 2024/07/12 12:08
 サスペンスフルなハード・ボイルドではあるが、パーツの組み合わせ方が結構パズラー的で、そこが良い。石投げ勝負は名場面。
 主人公の妻子に対する思いが、結局は “自分に都合の良い範囲” に落ち着いてしまった感があり残念。そこはちょっと説教臭く感じた。妻がこの結婚で得たのは苦労だけみたいなのに……。

No.90 8点 螺旋- 山田正紀 2024/07/05 12:35
 序章を読んで “え、これSF?” と訝ったのだけれど、実際には現代社会の生活者視点と神学的象徴論の二重写し。ともすれば頭でっかちな観念論に陥りそうなところ、見事な反転と共にきちんと着地している。
 単なる物理的トリビアではなく、そのときにそれが起きることで “奇跡” たり得ている “史上最長の密室” トリック。それに対抗するかのような “××に対するペテン”。この物語はまるで “神シリーズ” のアナザー・サイドだ。

No.89 7点 渋谷一夜物語(シブヤンナイト)- 山田正紀 2024/06/14 12:58
 発表順ではない作品配列がなかなか効いているんじゃないか。サスペンスから少しずつ捩れて条理が失われ、徐々に足場がズレて行く感覚で意識がキーンと冷えるようだった。“幕間” で一旦リセットしたのが異化効果と言えなくもない。平均値の高さ故に却って突出して目立つ作品は無いが、「死体は逆流する」の “動機” が出色と言うか何と言うか。

No.88 7点 イリュミナシオン 君よ、非情の河を下れ- 山田正紀 2024/05/24 14:08
 作中で語られる五人の物語には読み応えがあるけれど、それを支える外枠の部分は上位の物語と言うより構造の説明でやや動きに欠ける。とは言え学術用語を駆使した時空バトルは散文的で逆説的に詩的(かもしれない)。前年の『オフェーリアの物語』に続いてアルチュール・ランボーをサンプリング。嵌まってたのかな~?

No.87 6点 オフェーリアの物語- 山田正紀 2024/05/24 14:06
 呪師霊太郎シリーズの種子を、言の葉の影響力強めの特殊な土壌に蒔いて着床させたもの? 諸々の概念が宙に浮かんだような、それとも、上下感覚を曖昧にしたまま、謎が謎であると言う一点をよすがに頁は進む。人形に似た人間の物語。ところで表紙の人形は切り絵なんだってさ。

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虫暮部さん
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