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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1843件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.11 9点 女王国の城- 有栖川有栖 2017/02/20 10:06
 江神の台詞にもあるように、〈ペリハ〉にはあまり効き目がない。“捜査を混乱させるためのフェイクの手掛かり”をあまり自由に解禁すると、犯人は(というか作者は)ホワイダニットをぶっちぎって幾らでも奇天烈な事件現場を無意味に作り出してしまうではないか。蛇足だと言う気もするが、しょーもないダイイング・メッセージを持ち出してしまうのはそれこそクイーンの血を継ぐ悪癖か。
 読書の楽しさにじっくり浸れるこの長さはありがたい。やはりこのひとは文章がさりげなく上手い。 

No.10 6点 虹果て村の秘密- 有栖川有栖 2016/10/31 10:51
 有栖川有栖らしい、そしてジュヴナイルらしい、丁寧で好感の持てる作品。綺麗なロジックが披露されている。
 ただ、足跡の件はやむにやまれず発生した状況であるのに対して、喧嘩の件は余計なアリバイ工作を試みてそこから足が付いてしまった形なわけで、“綺麗に解いて見せるために作者が付け加えたネタ”というわざとらしさが否めない。犯人が殺害現場で望遠鏡を(午後9時過ぎに!)覗いた理由にもう少し必然性が欲しかった。

No.9 6点 鍵の掛かった男- 有栖川有栖 2016/03/08 10:58
 仮に本当に自殺だったとして、“間違いなく自殺である”という証明はなかなかハードルが高いのではないか。その場合、調査の引き際をどう設定するかが重要だが、その点について言及しないまま依頼を引き受けてしまったので、“おいおいアリス、大丈夫か”と思った。

 あと印象に残ったのが“猿真似をする技量もないのを糊塗するためにオリジナリティを求め、自意識を垂れ流すだけの下手な小説を書いてしまう勘違い野郎にも愛しみを覚えます”という影浦の台詞(作者の小説観を反映していると解しても良いだろう)。下手なオリジナリティより猿真似の技量を上位に置くか。有栖川作品を思い返してみると理解出来なくも無い(いや、メフィスト賞あたりに対する批判?)。

No.8 3点 スウェーデン館の謎- 有栖川有栖 2015/06/24 08:59
 何か変だ。大いにネタバレするが、遺体移動のトリックに関して。
 母屋にいた犯人は、どうやって離れに眠り込んだ酔っ払いがいることを知ったのか?

 (また、重りの代わりなんて何でもいいわけで、いつ目を覚まさないとも限らないリスキーな人間を使う必然性は乏しいのでは?他人の眠りの深さを外側から測ることは出来ないのだから)

No.7 7点 怪しい店- 有栖川有栖 2015/01/13 10:50
 どの短編も良いが、中でも「ショーウィンドウを砕く」で描かれる加害者の動機の微妙な心理に説得力を感じた。が、安易なミスをポロッとやっちゃうのは如何なものか。「潮騒理髪店」は旅行記のような面白さはあるがミステリ的には少々強引な気がする。
 そしてやはり全篇に亘って、文章のさりげない巧みさが素晴らしい。

No.6 7点 論理爆弾- 有栖川有栖 2013/05/17 10:39
この犯人像は、本格ミステリに誠実に向き合ってきた作者だからこそ、ひとつのネタとして有効。“探偵を禁じられた世界”という設定に対して“フェアプレイで解きようのない動機”をぶつけるという制約によって、却って妙なリアリティ及びミステリに対する批評性が生じている。

No.5 7点 江神二郎の洞察- 有栖川有栖 2013/01/31 19:40
有栖川有栖作品の登場人物たちが交すどーでもいいような与太話って、なんでこんなに楽しいのだろう!
 
 ところで、作中の“新年号イニシャル予想”で、江神はRを除いてNを残していた。しかし、“音読み”ということを前提にすると、な行は少なく(例えば、音読みがヌで始まる漢字は奴・怒などいずれも“ヌ”と発音するものが数個あるのみ)、ら行は意外と多い。ということでここは逆にすべきであった。

No.4 6点 赤い月、廃駅の上に- 有栖川有栖 2012/09/11 18:29
 失礼ながら、ミステリというお約束の要素を除外しても、これだけ巧みな小説を書けるのだなぁと感心した。
 本業との距離感という点で、綾辻行人の『深泥丘奇談』を髣髴とさせる短編集。
 図書館のシール云々というくだりは作者のリアルなぼやきだろうか。

No.3 7点 真夜中の探偵- 有栖川有栖 2012/08/08 16:10
 ミステリとしてよりも、主人公の成長物語として、また架空の社会を描いた幻想味のないファンタジーとして、楽しみました。

No.2 5点 高原のフーダニット- 有栖川有栖 2012/05/04 11:06
 「オノコロ島ラプソディ」……馬鹿みたいなトリックだが、その理由の、“嘘はつかせないから”と共犯者を説得する、という発想はリアルだと思った。“人恋しいから、金を貸した”との意見も含蓄に富む。
 尚、アリスを驚かせた松本ちえこの「ぼく」はYouTubeで探したら聴けました。

 「高原のフーダニット」……双子の名前が紛らわしい。犯人の行動があまりに即断即決&怖いもの知らずな気もするが、そこはまぁ人それぞれ?

No.1 7点 闇の喇叭- 有栖川有栖 2010/10/15 10:36
 戦争云々の書き方はやや紋切り型な気もするが、「こういうことを言っておきたいんや」という作者の思いは伝わって来たと思う。
 殺人事件の背景が、ラストで説明されるまでほとんど表に出てきていない点がイマイチ。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1843件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(99)
西尾維新(72)
アガサ・クリスティー(68)
有栖川有栖(51)
森博嗣(49)
エラリイ・クイーン(47)
泡坂妻夫(39)
歌野晶午(29)
小林泰三(29)
島田荘司(24)