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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.466 5点 証拠の問題- ニコラス・ブレイク 2010/06/13 15:21
著者の処女作で、シリーズ探偵・ナイジェル・ストレンジウェイズの初登場作品。
学園ものミステリで、予備校教師で友人の殺人容疑を晴らすべくナイジェルが乗り出すというストーリーです。
古い訳文のせいもあると思いますが、探偵役をはじめとする登場人物像があまり伝わってこないので、少々読むのに苦労しました。要は証拠重視の警察捜査を皮肉ったということでしょうか。
凶器の隠し場所トリックは、以前に推理クイズで読んだ気がして、この作品が元ネタかと思った。

No.465 7点 家蝿とカナリア- ヘレン・マクロイ 2010/06/13 15:03
ベイジル・ウィリング博士が探偵役を務めるシリーズ第5作。
原題は"Cue for Murder"で直訳すれば「殺人の手掛かり」ですが、そのものズバリの手掛かりを意訳して邦題としているのが何とも挑戦的です。
プロローグのカナリアを鳥籠から解放する謎の行動が、劇場の殺人事件にどう結びつくのか最後まで読者の興味をつなぐ構成が優れていて、派手な展開がなくても正統派の古典本格を読んだという満足感を得られました。

No.464 6点 オリンピックの身代金- 三好徹 2010/06/12 21:19
犯罪サスペンス、身代金シリーズの第3弾。
今回、泉の標的はロス五輪で、競技運営そのものではなく、オリンピックの衛星放送の妨害です。身代金がシリーズを重ねる毎に増えて30億円で、トラック1台分の札束をどのように奪うのかも面白い点です。
最後は完結編らしく爽快感を味わうことができます。

No.463 6点 モナ・リザの身代金- 三好徹 2010/06/12 21:06
犯罪サスペンス、身代金シリーズの第2作。
今回、泉の標的は政府主催の「モナ・リザ展」ですが、名画の強奪はあっけないので、知的ゲーム小説としては物足りない感じを受けます。
対峙する政府に政商フィクサーが絡んでくるプロットは面白いのですが、前作と比べると緊密度に欠ける気がします。

No.462 7点 コンピュータの身代金- 三好徹 2010/06/12 20:49
コンゲーム風の犯罪サスペンス、身代金シリーズ三部作の第1作。
銀行のコンピュータ室に忍び込んだ主人公の泉ら二人の身代金10億円奪取と脱出方法を推理し楽しむ知的ゲーム小説で、この少し後に登場した岡嶋二人の小説に似たテイストがあります。
当時、こういうタイプのミステリは海外では多数書かれていますが、国内だと他に山田正紀が思い浮かぶぐらいで、先駆性は評価できると思います。

No.461 8点 黒い画集- 松本清張 2010/06/12 20:24
ミステリ中短編集(新潮文庫版)。
清張の初期短編は非ミステリを含めてハズレがないですが、一冊選ぶとなると完成度が高い本書が最右翼でしょうか。
「遭難」は二人の人物の心理的闘争が非常にサスペンスに溢れていて読み応えは編中随一。「坂道の家」は典型的な清張節で男の転落を描く。「天城越え」は抒情的情景描写と意外な真相が印象に残る。
ほか、意外な凶器消失トリックの「凶器」、「証言」「寒流」「紐」の計7編が収録されています。

No.460 6点 殺人ドライブ・ロード- 井沢元彦 2010/06/12 18:53
アリバイ・トリックがちょっと意表を突く本格ミステリ。
いつもの歴史の謎+現在の殺人事件という得意のプロットではなく、真正面から読者に挑戦するような凝った本格編だと思います。序盤から丁寧に伏線が張られていて、一応の真相は読めると思いますが、もう一段階上の真相まで到達できる人は少ないのではないでしょうか。

No.459 6点 終末曲面- 山田正紀 2010/06/12 18:28
著者の第1短編集。
近未来冒険サスペンス小説のサビの部分を切り取ったような尖鋭的で濃い作品がそろっています。
人類終末間近の緊迫感と派手なアクションが光る「贖罪の惑星」、怒涛の暴力場面とタイトルの意味が印象的な「燻製肉のなかの鉄」などハードな作品が多いですが、コンピュータ技師たちが次々と失踪していく真相が人類の終末に結びつく静かな恐怖を描いた「終末曲面」が一番読ませます。

No.458 5点 凶運の手紙- 仁木悦子 2010/06/12 18:07
ミステリ短編集(角川文庫版)。
檪究介くんの探偵譚「花は夜散る」や仁木悦子もの「初秋の死」のシリーズものは手堅い出来で、SF風の「一日先の男」は異色作ですがオチが分かりやすい。
個人的ベストは小学一年生の女の子のいじらしい心情が見事に描かれている「金ぴかの鹿」です。

No.457 6点 消えた乗組員(クルー)- 西村京太郎 2010/06/12 17:47
海の十津川警部シリーズ。
大型クルーザーから乗組員全員が消失するというマリー・セレスト号事件を彷彿とさせる発端の謎の提示が魅力的なため、グイグイ物語に引き込まれました。その真相が常識的なもので物語の終盤に入る前に明かされても、十津川が証拠を求めて各地を巡る捜査状況が丁寧に描かれていて結構楽しめました。
犯人の設定に不満もありますが、本格編としてではなく警察サスペンスものとしてまずまずの出来だと思いました。

No.456 4点 薔薇を拒む- 近藤史恵 2010/06/12 17:30
人里離れた湖畔の別荘館を舞台にしたゴシック風のミステリ。
デビュー直後のいくつかの作品を思い起こさせる設定で、17歳の青年の一人称で語られるストーリーは青春恋愛ミステリの趣もありますが、あまり斬新さが感じられなかったです。
過去と現在の恋愛の秘密と二人の身寄りのない青年が別荘主の援護をうける理由が最後に結びつきますが、すんなりと受け入れるのが難しい真相でした。

No.455 5点 おもしろ砂絵- 都筑道夫 2010/06/09 21:16
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第8弾。
本格ミステリの趣向が益々弱くなっていて、長屋のアウトローたちの活躍もあまり見られません。
発端に不可解な謎を提示した作品もありますが、証言者が嘘をついていたりで、腰砕けの真相が目立ちました。

No.454 5点 まぼろし砂絵- 都筑道夫 2010/06/09 20:59
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第7弾。
マンネリを嫌って趣向を変えた作品が目立つのですが、オカルト風の「熊坂長範」や「ばけもの寺」は本格ミステリから離れてしまっていて、本末転倒という感じです。
しかし、「人ごろし豆蔵」は初期の不可能興味を追求した作品に匹敵する読み応えのある密室殺人もので、編中のベストでしょう。

No.453 5点 かげろう砂絵- 都筑道夫 2010/06/09 20:40
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第6弾。
プロットが既読感のある作品が散見されますが、首切断の動機が意外な「水中花」や、ありきたりながら江戸時代ならOKなアイテムを使ったトリックの「ぎやまん燈籠」は、まずまずの出来ではないかと思います。

No.452 5点 きまぐれ砂絵- 都筑道夫 2010/06/09 20:20
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第5弾。
収録作は、「長屋の花見」「舟徳」「高田の馬場」「野ざらし」「擬宝珠」「夢金」と並んでいて全編が落語を元ネタとした異色編です。
作者が楽しんで書いたことはわかりますが、ミステリの趣向としてはあまり大した出来のものがありませんでした。
落語好きなら、もう少し楽しめたかもしれませんが。

No.451 6点 みずほ荘殺人事件- 仁木悦子 2010/06/09 18:46
ミステリ短編集(角川文庫版)。
家族や町内のほんわかした人間関係を描いて、コージー的で暖かな印象がある作者のミステリですが、本書は濃いめの本格編が多く収録されています。
特に幻影城に掲載された「最も高級なゲーム」が顕著で、犯人当てで凝った仕掛けは従来の作者のテイストを逸脱しています。
ほかにも、表題作や「肌さむい夏」も現場見取図を掲載するなど、ディープな本格編で楽しめました。

No.450 4点 殺人はちょっと面倒- 小泉喜美子 2010/06/09 18:20
ミステリ短編集。比較的長めの短編4作収録されています。
女性誌に掲載された作品が多いためか、女性の複雑な心の揺らぎを描いた作品が目立ちます。
表題作の、恋人に裏切られた若い芸者のいじらしい決断や、「夜のジャスミン」の復讐のために住みこんだ家政婦の最後の行動などは、意表を突くというより肩透かしで、ミステリとして読むと期待はずれの感じを受けます。

No.449 5点 賭の季節- 佐野洋 2010/06/08 18:40
初期の長編ミステリ。
美人女優の双子の妹が姉に化けて、大会社の御曹司との結婚計画から姉の殺害計画まで発展していくストーリー。いかにも陳腐なサスペンス風で、計画の発案者である女優のマネージャーの思惑はミエミエと思いきや、結構ヒネリのあるミステリでした。
あいかわらず短めの長編なのであっけないですが。

No.448 3点 今宵、バーで謎解きを- 鯨統一郎 2010/06/08 18:13
桜川東子が探偵役を務めるバー・ミステリの第3弾。
今回はギリシャ神話を材料にマスターらヤクドシトリオが提出する現在の事件を推理するというパターン。
もう読むまいと思いながらも、つい手を出してしまう鯨統一郎のいつもながらのヌルい作品で、まじめに書評するのも憚れます。
もう読むまい。

No.447 6点 七色の密室- 佐野洋 2010/06/07 23:20
ミステリ連作短編集。
著者の短編集は「連作」のケースが非常に多い。同じ主人公を登場させる連作もありますが、本書の「密室」ように同一のテーマを設定した連作短編集が多いように思います。
タイトル通り密室もの7編が収録されていて、ストレートな本格編から倒叙形式のものまで、トリックだけでなく構成もバラエテイに富んでいて飽きさせない工夫がされている点が好印象でした。

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