皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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kanamoriさん |
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平均点: 5.89点 | 書評数: 2426件 |
No.686 | 8点 | 警視庁草紙- 山田風太郎 | 2010/07/10 18:09 |
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警視庁創設まもない明治初期を舞台に、新警察体制相手に挑戦する面々を描いたコンゲーム風連作時代小説。
元南町奉行所の面々が川路大警視をはじめとする新体制側をおちょくる数々の策略が痛快です。 当時の有名政治家や文豪が思わぬところに顔を出す読者サービスも満点で、時代の雰囲気が実によく出ていると思いました。 新体制VS旧体制という構図の行く末は予測がつくものの、非常に余韻の残る終り方です。 |
No.685 | 7点 | 妖説太閤記- 山田風太郎 | 2010/07/10 18:09 |
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アンチ・英雄譚の傑作です。
豊臣秀吉を扱った歴史小説は多々あり手垢のついた題材といえますが、異常な征服欲の源が、若い時に見染めた信長の妹・お市の方への恋慕だったという基本アイデアのみで、極悪人・秀吉の人物造形を書き変えています。 本能寺の変をはじめとする数々の裏エピソードは、おもわず惹き込まれる迫真性に満ちていました。 |
No.684 | 7点 | 叛旗兵- 山田風太郎 | 2010/07/10 18:09 |
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関ヶ原で敗れた上杉家の堅臣・直江兼続と前田慶次郎以下直江四天王の権謀術中を描いた謀略時代もの、大河ドラマ「天地人」より断然面白かった。
忍法帖ものの様なテイストの破天荒さに加えて、実在の有名人が多数登場し史実の隙間を突く歴史ものの楽しさを味わう事が出来ます。さらに、最後にある仕掛けを施すなど謀略ものとしても一級品だと思います。 |
No.683 | 8点 | 太陽黒点- 山田風太郎 | 2010/07/09 00:26 |
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現代(と言っても昭和40年前後)を時代背景にしたミステリとしては山田風太郎の最後期の作品です。
章題が、第1章「死刑執行1年前」から始まってカウントダウンしていきますが、語られていく内容は章題とは無関係と思われるような、清貧な勤労大学生の男女の”青春の蹉跌”といったような物語。 その文芸小説の様相が、最終章で一挙に崩れさる仕掛けは山風お得意の構図な訳ですが、なかなか衝撃的でした。まさか序盤に語られる日露戦争のビスマルク宰相の陰謀が、真相に直結するとは思いませんでした。 「真犯人」の動機が特異で現在ではピンとこないかもしれませんが、著者のエッセイなどを読んでいれば納得できるものです。 なお、廣済堂文庫の帯と裏表紙の紹介文は完全なネタバレをしているので注意が必要です。 |
No.682 | 6点 | 忍法八犬伝- 山田風太郎 | 2010/07/08 18:45 |
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馬琴の「南総里見八犬伝」を下敷きにした、その何代か後の里見家の同様のお家騒動。
家宝の八つの珠「忠・孝・悌・仁・義・礼・智・信」が、くノ一忍者によって偽物にすり替えられるが、偽珠の文字が「淫・戯・乱・盗・狂・惑・悦・弄」というのが笑える。 八犬伝の世界を巧く忍法帖にアレンジしているのはさすがです。 |
No.681 | 5点 | 忍法忠臣蔵- 山田風太郎 | 2010/07/08 18:45 |
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忠臣蔵の討ち入りに実は忍者たちが関わっていた、というお話。
裏・忠臣蔵ともいうべきアンチテーゼ作品は、他の作家も何冊か書いていますが、忍者によるアプローチはユニーク。 ただ、忍法帖そのものの荒唐無稽さが発揮されていないのは残念です。 |
No.680 | 6点 | 忍びの卍- 山田風太郎 | 2010/07/08 18:45 |
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徳川家光の時代を背景に、公儀忍び組の統一問題が絡んだ陰謀劇。
甲賀、伊賀、根来の三派の代表に加え、大老の命を受けた柳生流剣法の使い手の4人がまさに卍状に絡み合っています。 ほとんど4人の争いに焦点が絞られていますので、人物造形も比較的ていねいに描かれていて読みやすい。 今作も、最後に忍者の宿命と悲哀が浮かび上がります。 |
No.679 | 6点 | 外道忍法帖- 山田風太郎 | 2010/07/08 18:44 |
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切支丹の隠し財宝を巡る三つ巴の忍法合戦。
あまりに多数の忍者が登場し名前を覚える前に死んでいきます。なにせ、伊賀忍者15名×甲賀忍者15名×切支丹童女15名が入り乱れています。 「甲賀忍法帖」などの使い回しの忍法であったり、戦いがあっけなく決着するケースが多々あり、合戦ゲームとしてはいまいちですが、財宝をめぐる伝奇ものとして楽しめました。 |
No.678 | 7点 | くの一忍法帖- 山田風太郎 | 2010/07/08 18:44 |
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大阪城落城後の千姫を守る5人の女忍者と徳川家康傘下の伊賀忍者5人の忍法合戦。
もちろん女の武器を用いた忍法が読みどころ(笑)ですが、原作は映画ほどエロチックではありません。 秀頼の落し胤を宿した5人の女忍者たちの行く末は明白ですが、史実を覆す終盤のサプライズには、きっちり伏線が張られていたのはさすがです。 |
No.677 | 8点 | 風来忍法帖- 山田風太郎 | 2010/07/08 00:19 |
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風来坊の7人の香具師たちVS風魔忍者という構図で、忍法帖本来の楽しさを満喫させてくれる隠れた傑作です。
どうしようもない風来坊の男たちが、麻也姫というヒロインに出会って心機一転、困難なミッションに挑むというストーリーは、後の山田正紀に見られる素人VSプロのアクションものに影響を与えたに違いありません。 主役格の7人の男たちが個性豊かで、読むほどに魅力に満ちて来るのは不思議な感覚です。 |
No.676 | 6点 | 伊賀忍法帖- 山田風太郎 | 2010/07/07 23:57 |
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傑作「甲賀忍法帖」と対になるタイトルですが、内容に直接の関連はありません。
飛び抜けた能力がない一人の伊賀忍者VS松永弾正率いる根来忍者衆というのが対立の構図で、主人公の置かれた立場上感情移入しやすいかもしれません。 |
No.675 | 6点 | 柳生十兵衛死す- 山田風太郎 | 2010/07/07 23:30 |
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柳生十兵衛三部作の第3作。
十兵衛が室町時代にタイムスリップするという設定自体もはや忍法帖シリーズとは言えないでしょう。相当後期の作品で、作者も忍法帖に飽きていたことを如実に現しているプロットです。 主人公よりも、世阿弥などの能の世界の興味で書かれたような作品でした。 |
No.674 | 8点 | 魔界転生- 山田風太郎 | 2010/07/07 23:30 |
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柳生十兵衛三部作の第2作。
山風忍法帖の中で一般受けナンバーワンは本書でしょう。当初のタイトルは「おぼろ忍法帖」でしたが、映画化もありインパクトがある作中に出てくる忍法名に改題されたようです。 他の忍法帖と大きく異なるところは、設定自体が忍法魔界転生による剣豪たちの蘇生にありますが、物語中の活劇は忍法ではなく、剣劇が主体という本格的な剣豪小説の趣が強い点でしょうか。 天草四郎をはじめ宮本武蔵、荒木又右衛門など多彩な敵役の魅力も見逃せません。 |
No.673 | 8点 | 柳生忍法帖(上・下)- 山田風太郎 | 2010/07/07 23:30 |
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柳生十兵衛三部作の1作目。
山風忍法帖はページ分量が多い作品ほど面白いというのが定説のようです。本書も大作ですが、忍法帖と銘打たれるほど忍法が出てこない点では異色です。 千姫の命を受けた十兵衛が、7人の女性の敵討の助太刀をするというのがメインプロットで、伝奇時代小説を思わせる波乱万丈の謀略戦が読みどころ。奇想天外さがない分、往年の時代小説ファンにも抵抗なく受け入れられる内容です。 |
No.672 | 7点 | 妖異金瓶梅- 山田風太郎 | 2010/07/07 23:29 |
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中国宋代を時代背景にした艶笑譚を元ネタにした連作ミステリ。
連鎖式短編集を読んでいくうちに、いつの間にか長編ミステリに変貌していきます。豪商の妻と7人の妾の間で次々と殺人事件が発生する様は、だんだんマンネリ感が漂ってきて、ミステリ趣向よりも、ある女性の人物造形に引き込まれる創りになっています。 |
No.671 | 7点 | 明治断頭台- 山田風太郎 | 2010/07/07 23:29 |
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山風の明治ものと言えば、史実の隙間に大胆なフィクションを織り込んだ謀略系の時代小説が大半ですが、本書は連作式の本格ミステリとなっています。
各編とも明治時代ならではの奇抜なアイデアに機械トリックを多用しているところが異色で、しかも最終話で単なる本格編ではないことが判明します。最後に作者のメッセージが現れている点では、他の明治ものに通じるところがあります。 |
No.670 | 8点 | 名探偵篇「十三角関係」- 山田風太郎 | 2010/07/07 21:54 |
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ミステリ傑作選2(光文社文庫)。
著者唯一のシリーズ探偵・荊木歓喜先生ものの集大成。 表題作の長編「十三角関係」は、タイトル通りの複雑な人間関係の中に組み込まれた構図と、真犯人の動機の凄まじさが非常に印象に残る傑作。 短編の中では、「帰去来殺人事件」がずば抜けて面白い。探偵が事件とどのように関わるかという命題はクイーンを彷彿とさせ、差別用語がトリックに繋がるところは「獄門島」を連想しました。 |
No.669 | 8点 | 本格篇「眼中の悪魔」- 山田風太郎 | 2010/07/07 21:32 |
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ミステリ傑作選1(光文社文庫)。
タイトルの”本格篇”は、必ずしも内容に沿っているとは思いませんが、次の”名探偵篇”とのかね合いでしょうか。とにかくファンには贅沢なラインナップです。 「誰でも出来る殺人」は、短編の連鎖式による長編ミステリで、現在の新本格もしくは折原一が書いたと言ってもいいほど先駆的なプロットで、最終話でのサプライズもお約束の構成。 夏目漱石とホームズが競演する「黄色い下宿人」はいまやパスティーシュの古典名作でしょう。 「厨子家の悪霊」のドンデン返しの連続技もすごいですね。 |
No.668 | 6点 | 夏の魔法- 北國浩二 | 2010/07/07 18:39 |
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南国の離島を舞台にした恋愛ミステリ。
長編2作目ですが、デビユー作と比べて格段に文章がうまくなっていることに驚く。 特殊な病気に罹患した主人公の女性の心情描写には惹き込まれますし、島の情景描写も目に浮かぶようです。それだけに、ミステリとしての結末の付け方に若干の不満が残りました。 |
No.667 | 5点 | リバース- 北國浩二 | 2010/07/07 18:26 |
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物語が中盤以降に別の様相を呈してくるプロット創りの巧みさは評価できますが、ミステリの仕掛けとしては、伏線が丁寧過ぎるため真相が透けて見えるのが残念です。
現在流行りのタイプのミステリ趣向では、他の秀作と比較すると、どうしても分が悪い感じを受けます。 |