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kanamoriさん
平均点: 5.89点 書評数: 2426件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.9 6点 柳生十兵衛死す- 山田風太郎 2010/07/07 23:30
柳生十兵衛三部作の第3作。
十兵衛が室町時代にタイムスリップするという設定自体もはや忍法帖シリーズとは言えないでしょう。相当後期の作品で、作者も忍法帖に飽きていたことを如実に現しているプロットです。
主人公よりも、世阿弥などの能の世界の興味で書かれたような作品でした。

No.8 8点 魔界転生- 山田風太郎 2010/07/07 23:30
柳生十兵衛三部作の第2作。
山風忍法帖の中で一般受けナンバーワンは本書でしょう。当初のタイトルは「おぼろ忍法帖」でしたが、映画化もありインパクトがある作中に出てくる忍法名に改題されたようです。
他の忍法帖と大きく異なるところは、設定自体が忍法魔界転生による剣豪たちの蘇生にありますが、物語中の活劇は忍法ではなく、剣劇が主体という本格的な剣豪小説の趣が強い点でしょうか。
天草四郎をはじめ宮本武蔵、荒木又右衛門など多彩な敵役の魅力も見逃せません。

No.7 8点 柳生忍法帖(上・下)- 山田風太郎 2010/07/07 23:30
柳生十兵衛三部作の1作目。
山風忍法帖はページ分量が多い作品ほど面白いというのが定説のようです。本書も大作ですが、忍法帖と銘打たれるほど忍法が出てこない点では異色です。
千姫の命を受けた十兵衛が、7人の女性の敵討の助太刀をするというのがメインプロットで、伝奇時代小説を思わせる波乱万丈の謀略戦が読みどころ。奇想天外さがない分、往年の時代小説ファンにも抵抗なく受け入れられる内容です。

No.6 7点 妖異金瓶梅- 山田風太郎 2010/07/07 23:29
中国宋代を時代背景にした艶笑譚を元ネタにした連作ミステリ。
連鎖式短編集を読んでいくうちに、いつの間にか長編ミステリに変貌していきます。豪商の妻と7人の妾の間で次々と殺人事件が発生する様は、だんだんマンネリ感が漂ってきて、ミステリ趣向よりも、ある女性の人物造形に引き込まれる創りになっています。

No.5 7点 明治断頭台- 山田風太郎 2010/07/07 23:29
山風の明治ものと言えば、史実の隙間に大胆なフィクションを織り込んだ謀略系の時代小説が大半ですが、本書は連作式の本格ミステリとなっています。
各編とも明治時代ならではの奇抜なアイデアに機械トリックを多用しているところが異色で、しかも最終話で単なる本格編ではないことが判明します。最後に作者のメッセージが現れている点では、他の明治ものに通じるところがあります。

No.4 8点 名探偵篇「十三角関係」- 山田風太郎 2010/07/07 21:54
ミステリ傑作選2(光文社文庫)。
著者唯一のシリーズ探偵・荊木歓喜先生ものの集大成。
表題作の長編「十三角関係」は、タイトル通りの複雑な人間関係の中に組み込まれた構図と、真犯人の動機の凄まじさが非常に印象に残る傑作。
短編の中では、「帰去来殺人事件」がずば抜けて面白い。探偵が事件とどのように関わるかという命題はクイーンを彷彿とさせ、差別用語がトリックに繋がるところは「獄門島」を連想しました。

No.3 8点 本格篇「眼中の悪魔」- 山田風太郎 2010/07/07 21:32
ミステリ傑作選1(光文社文庫)。
タイトルの”本格篇”は、必ずしも内容に沿っているとは思いませんが、次の”名探偵篇”とのかね合いでしょうか。とにかくファンには贅沢なラインナップです。
「誰でも出来る殺人」は、短編の連鎖式による長編ミステリで、現在の新本格もしくは折原一が書いたと言ってもいいほど先駆的なプロットで、最終話でのサプライズもお約束の構成。
夏目漱石とホームズが競演する「黄色い下宿人」はいまやパスティーシュの古典名作でしょう。
「厨子家の悪霊」のドンデン返しの連続技もすごいですね。

No.2 9点 甲賀忍法帖- 山田風太郎 2010/07/05 18:48
徳川三代将軍の座をめぐる甲賀忍者10名VS伊賀忍者10名の代理忍法勝負。
山風忍法帖の第1作だけあって、(忍法帖の中では)オーソドックスな構成ながら、後のシリーズに出てくる同類の奇天烈な忍法アイデアを惜しげもなくつぎ込んだ正に忍法帖の原点。
数えてみると合計20回の忍法合戦を組み込んでいて、いずれも意表をつく決着に終始しています。
また、バトルゲームの面白さに酔わせておいて、最後に忍者の哀切な運命を描いて終える物語の創りも脱帽です。
過去何度も復刊を繰り返す、世代を超えたエンタテイメントの傑作です。

No.1 5点 悪霊の群- 山田風太郎 2010/03/24 23:12
名探偵神津恭介と荊木歓喜が共演、となると読まずにおけません。
プロット考案は高木彬光で、山田風太郎が執筆したと解説にありますが、この合作は成功したとは言えません。
当然、名探偵同士の推理合戦を期待しますが、歓喜先生が中心となった通俗スリラー風のストーリーで、終盤に神津が出てきてオシマイ。二人の対決は肩透かしの感で残念です。

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