皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
りゅうさん |
|
---|---|
平均点: 6.53点 | 書評数: 163件 |
No.3 | 5点 | 殺意の集う夜- 西澤保彦 | 2012/01/22 14:30 |
---|---|---|---|
「事件の犯人自身が推理する」という趣向の作品。西澤作品の中ではSF設定でない作品ですが、それにも拘らず現実味がなくて、漫画を読んたような読後感でした。最後の1文によるどんでん返しのために無理した設定という感じです。2つの話が交互に語られる展開で、どう結びつくのかに興味は惹かれましたが。作中には、伏線らしきものや違和感を感じる箇所がいろいろと出てくるのですが、真相は複雑でわかりにくく、あまりすっきりとしていません。
意図せずに次々と人を殺してしまった万里が園子を殺した犯人を推理する過程が、個人的には一番印象に残りました。別荘に集まる人物にそれぞれ特徴を持たせていて、それが犯行の可能性を検討する条件となっているところが面白いと感じました。 (完全にネタバレをしています。要注意!) 最後の1文で驚かせるタイプの作品で、あらかじめそうとわかっていればその部分には気付きやすいかもしれません。万里と園子が同室であるというのが大きな引っ掛けになっていますが、普通はそんなことしないですから無理があります。また、登場人物が山荘に集まった理由がことごとく異常心理に基づくものだったというのでは、読者が真相を推理するのは難しいでしょう(一応、近辺で異常な事件が頻発していることが示されてはいますが)。 |
No.2 | 8点 | 人格転移の殺人- 西澤保彦 | 2011/12/28 19:23 |
---|---|---|---|
「七回死んだ男」と同様、設定のアイデアがすばらしく、ストーリー展開にもこの特殊な設定が十分に活かされていると思います。人格転移のルールはシンプルですが、それによって引き起こさる結果がややこしく、読んでいると混乱しそうです。私はこういったややこしい話が大好き(笑)なので、人格転移の過程を追いかけながら楽しく読むことが出来ました。江利夫とジャクリーンとの間で交わされる議論も論理性があって、楽しめました。「フィードバック<修正>」の章までの展開はほぼ推測どおりで、江利夫がこの章で気付いた事項や江利夫が〇〇されそうになる展開も予想どおりだったので、完全正解かと思いましたが・・・・・・。しかしながら、真相は意表を突くもので、最後にうっちゃられてしまいました。最終章で、江利夫がある事実からこの真相に気付いているのですが、その根拠にはあまり説得力を感じませんでしたが。真相を知ると、登場人物の顔ぶれや前半のエピソードなどが緻密に計算されていることがわかります。ややこしい設定にも拘らず、辻褄がきっちりと合っていて矛盾がありません。細部までよく練られた佳作だと思います。
(ネタバレをしています。注意!) 連続殺人の犯人はジャクリーンで、動機は人格転移を止めて自分の肉体に戻るためだと思っていました。「ジャクリーン(=ジャクリーン)」が「僕(=僕)」を殺そうとした瞬間に、再びマスカレードが起こり、最終的には「ジャクリーン(=僕)」が生き残ると予想していました。 |
No.1 | 9点 | 七回死んだ男- 西澤保彦 | 2011/01/10 16:27 |
---|---|---|---|
同じ日が9回繰り返される「反復落とし穴」という体質を持ったキュータローを主人公とした物語。SF設定で、本格ミステリとは思いませんが、優れたアイデアの作品です。「反復落とし穴」の繰り返しの中で、キュータローが次にどうやって殺人を回避しようとするのかを考えながら読むと楽しめます。真相には意表を突かれました。ラストのキュータローと友理さんとの対話の中で、すべて辻褄が合っていることが確認できます。キュータローが最後に抱いた大きな疑問も(私も疑問に思いましたが)、友理さんが見事に解き明かしてくれました。ユーモアにあふれた表現で、読んでいて楽しい作品です。
(追記 完全にネタバレをしています。 注意!) よく考えてみたら、おかしいと思いました。 主人公が死んでしまったら、リセットされずにそれで終わりではないでしょうか(SF設定だから、この真相でもありなのかもしれませんが)。「死んだ」ではなく、「気絶した」の方が良かったと思います。 |