皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
江守森江さん |
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平均点: 5.00点 | 書評数: 1256件 |
No.496 | 4点 | ハサミ男- 殊能将之 | 2009/10/15 21:56 |
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これだけのページ数を読むのに2時間強しか要しなかったのは私的に驚くべき事だった(文章が上手いと褒めている訳ではない)
そんなナナメ読みに近い読み方でも真ん中辺りでハサミ男の正体、模倣犯の正体の両方を察し、更に捻ってくると勝手に思いながら読み進めても捻りが無く愕然とした。 この手の作品で驚きが無く、再読する気すら起きないのは致命的な気がする。 ミステリ部分以外のサイコな世界に興味が無い為に褒めようがない。 普通に評価して世間の評価と乖離する辺り決定的にこの作者とは相性が悪い。 |
No.495 | 3点 | クライマーズ・ハイ- 横山秀夫 | 2009/10/14 12:48 |
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自分の「広義なミステリーマップ」内に位置できるか微妙な作品で「ミステリの祭典」なので3点にした。
一般小説としてなら作者の最高傑作と評されても納得できる。 映画・ドラマの両方を観てから原作をオサライしたので小一時間で読了した。 当時、一歩間違えば(前日に利用)墜落機に搭乗してただけに生々しい。 ※ここから余談 地下鉄サリン事件も一時間違いですり抜けた。 自分の強運に感謝・・・本当に強運なのか? 変な感慨に耽ってしまった。 |
No.494 | 6点 | 完全恋愛- 牧薩次 | 2009/10/13 03:20 |
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「真っ先」に作者の実績と年齢で過大評価されたと感じた。
「完全犯罪」云々、「完全恋愛」云々の書き出しは、作品に厚みを持たせる為に必要だが、察する読者には第一章終了で作者の狙い(ドンデン返し)に気付くジレンマがある。 しかも、一代記である事と三時代各々の事件を捨て駒にしドンデン返しを仕込んだが、上記ジレンマに加え脱力系で'驚き'が不発に終わる可能性も高い。 最初の事件はまさに捨て駒向きで、ここが読者の分かれ道。 第二事件は謎は大きく解決も素晴らしいが凶器の行方を放置した儘。 第三事件は伏線の回収は良いが謎自体がチープなアリバイ。 全編を通じての細かい伏線やミスリードは匠の技を発揮しているが驚きと連動するので私的に微妙な評価になった。 |
No.493 | 3点 | 7days wonder- アンソロジー(出版社編) | 2009/10/10 18:18 |
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紅桃寮・404号が「開かずの間」・7日間限定!の共通設定で書き下ろされたアンソロジー。
執筆陣も含めてラノベ・ミステリーで、設定に対する書き込みが甘い。 本格色の濃い谷原秋桜子作品に気付きの部分で見所はあったが全体的に大人が読むレベルには達していない。 中学生辺りのミステリー入門なら良いかもしれない。 |
No.492 | 5点 | 密室から黒猫を取り出す方法- 北山猛邦 | 2009/10/10 16:22 |
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気弱探偵・音野シリーズ第二弾の連作短編集。
私的に機械的トリックについては大技〜小技まで興味が薄い(特に、如何にも実行可能風に書かれながら無理っぽい物) それ故に作者の長編はデビュー作で離脱した。 しかし、このシリーズは機械的トリックを使用しているが、捨て駒扱いや脱力系なので気軽に読める。 前作に比べ本格度が緩く、最終話の書き下ろしでライバル探偵まで登場しキャラ立ちは強まった。 今作はミステリとして無難に纏まっているが、反面で印象に残らない。 |
No.491 | 4点 | CSI:科学捜査班~ダブル・ディーラー- マックス・アラン・コリンズ | 2009/10/10 11:38 |
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海外ドラマのノベライズでキャラは同一もストーリーはオリジナルな第一弾。
捜査過程とアクションが中心に描かれ、結末に至る過程もアメリカの司法制度が絡む。 初ノベライズな為か海外ドラマ的に無難な路線で、期待した科学的証拠をロジカルに突き詰める作品ではない。 これならドラマを観る方が確実に楽しめると思う。 |
No.490 | 5点 | 死角に消えた殺人者- 天藤真 | 2009/10/08 22:46 |
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純真なミステリ読者だった初読時には、タイトルから真っ当なフーダニットだと思いミスリードされた。
ヒロインに感情移入できず、天藤作品では珍しく癒されない。 どんでん返しな謎解きは素晴らしいが、それは天藤作品に求める本質ではない。 中だるみもするので採点は辛くした。 |
No.489 | 8点 | 成吉思汗の秘密- 高木彬光 | 2009/10/08 17:07 |
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歴史バラエティー番組の原点と云え、壮大なテーマを気軽に楽しめる三部作の一作目。
結論が出ないテーマを名探偵・神津恭介が犯罪捜査の手法と推論で追求した歴史推理小説で、高木彬光が新境地を切り開いた記念すべき作品。 中盤以降の白熱した討論は論理的で読み応えがある。 読者の発見から加筆された最終章の解釈で「強大な征服欲の源泉が愛した女性への遙かなる想いだった」に・・・石部金吉の神津自身で到達しなかったのも神の思し召しだろう。 国技・大相撲がモンゴル勢に席巻されている起源も、この辺りにあるのかもしれない。 |
No.488 | 7点 | 皆殺しパーティ- 天藤真 | 2009/10/07 06:56 |
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当時、高校生だった私は、この作品を読んで天藤真が教授をしている(と噂で伝聞された)千葉大文学部(デマだったらしい)を本気で受験し、弟子入り(ゼミ生)しようと決心した。
決心した途端に退官の噂が流れお先真っ暗になった。 そのせいか受験も失敗した。 今でも、そのトラウマを拭いきれない思い出深い作品。 天藤真は、高木・鮎川ゾーンとは別ゾーンでの自分のミステリ嗜好を代表する作家で万人にお勧め出来る。 |
No.487 | 6点 | 陽気な容疑者たち- 天藤真 | 2009/10/07 06:33 |
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ユーモア溢れる作風が軽いと思われた時代のデビュー作な為か埋もれていた。
更に、角川文庫化で少し注目された頃に同系統多作な赤川次郎がデビューし埋もれが長期化した。 しかし、そんな事は関係なく、非常に長閑で陽気な登場人物達に癒される。 天藤真作品には癒される為に何度も読んでしまう“そこらのミステリ”には無い魔力がある。 |
No.486 | 5点 | わが師はサタン- 天藤真 | 2009/10/07 06:07 |
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名義が共用ペンネームな作品なので作者の持つイメージとは遠い作品。
天藤真らしさを感じさせないのだから懐が深いと褒めたい所だが、作者に求めているテイストでは無いので作品自体は褒められない。 全集に収録されて嬉しいやら残念やら複雑な読後だった。 |
No.485 | 6点 | 犯罪は二人で- 天藤真 | 2009/10/07 06:01 |
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昭和テイストな、ほのぼの・ドタバタ・ユーモアをミステリーに絡めた作者の持ち味全開な作品集。
寡作でシリーズ作品を殆ど書いていないので短編3作とはいえシリーズ物が読めるのも楽しい。 この本の発売当時は埋もれた作品を網羅しての全集だったので非常に嬉しかった。 |
No.484 | 3点 | 探偵Xからの挑戦状!- アンソロジー(出版社編) | 2009/10/06 11:13 |
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NHKで、テレビ番組と携帯小説を連動させ、視聴(読)者挑戦した企画の小説を纏めたアンソロジー。
企画その物はミステリ読者以外の一般視聴者からも絶賛され2ndシーズンに継続中。 最初に、この手の企画に旧作をそのまま堂々と提供した山口雅也の姿勢を糾弾したい!(ミステリ作家失格だ!) 但し、作品自体は一番まともなのが皮肉で、それ以外の作品は挑戦物として突っ込み所だらけだったり、納得しかねる解答編が用意されていたりと悪い見本としてバラエティーに富んでいる。 DVDに文庫と、この"デキ悪"を商品化してお金にする姿勢にはホトホト呆れる。 企画だけなら嗜好のど真ん中なのだが、制作姿勢を糾弾する採点にした。 |
No.483 | 5点 | ダイヤル7をまわす時- 泡坂妻夫 | 2009/10/06 09:26 |
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ノン・シリーズな短編集。
問題編で読者挑戦する「ダイヤル7」も推理の本筋以外から犯人を察せ、その為に最後の捻りも驚きが薄い。 前半3編にフーダニットを配すミスリードで以降の作品で小さな驚きをもたらす構成は楽しめた。 しかし、どの作品もそれ自体が取り立てて褒める程ではないので短編集としては水準レベル。 取り分け正統派フーダニットでは作者の持ち味は出ないと感じた。 |
No.482 | 7点 | ジェネラル・ルージュの凱旋- 海堂尊 | 2009/10/05 07:42 |
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「ナイチンゲール〜」と舞台やキャラを含め同時進行で、その為シリーズ順に読み進める事が前提になる。
内部告発者は誰か?部分のみミステリーの範疇な医療系エンタメ作品。 キャラ立ち、ご都合主義ならではのストーリー展開、作者の理屈っぽさを昇華した討論場面等シリーズ読者には読み所満載で楽しめる。 一方、作者の主張に辟易したら、この作品まで読んで離れればよい分岐点と言える。 ※余談的追記 フジテレビ系で放送のドラマは、原作からキャラを借りた別物で、某海外医療ドラマのパクリにしか思えない。 |
No.481 | 7点 | 十二人の手紙- 井上ひさし | 2009/10/04 04:07 |
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大衆文学の巨匠が紡いだ"仕掛け"の書簡小説十二編にエピローグを加えた短編集。
現在の本格ミステリの主流とも言える一般小説にミステリの技法を溶け込ませた作品集でバラエティーに富む。 しかも、さり気なさ・仕掛け・切れ味と三拍子揃う精緻な技巧を堪能できる逸品。 各編を繋いで最後に堂々とミステリを主張するエピローグも秀逸。 惜しむらくは、書かれた時代が早過ぎミステリ読者に浸透せず埋もれた感がある事と“大きな驚き”を齎さない事だろう。 |
No.480 | 7点 | 黒白の囮- 高木彬光 | 2009/10/01 04:33 |
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近松検事(グズ茂)シリーズ(光文社文庫の作品紹介ではシリーズ第一長編となっているが実際は「黒白の虹」が第一長編)
自動車事故に見せかけるトリック看破~冤罪を晴らす為のアリバイ証明~時刻表を用いたアリバイ崩しを捨て駒とした展開の先に“読者挑戦”を付したフーダニットが待ち受ける構成で、作者の本格に対する情熱がほとばしる作品。 神津を起用せず新たな探偵役を構築し読者挑戦したのにも作者の狙いが潜んでいた!(解決編で狙いに触れている) しかし、好き故に高木作品を読み込んだ為か、作者の好きな犯人隠蔽技法(何度となく使用している)のアレンジだと察してしまった(私的事情なので採点には反映させていない) 証拠が後付けされる解決編が少々残念で満点(8点)には及ばないと判断した。 |
No.479 | 4点 | 半落ち- 横山秀夫 | 2009/09/30 00:06 |
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社会派ホワイダニット作品。
直木賞を逃した過程で挙がった問題について、ミステリーなのだからリアリティを追求すれば、手続き〜実行まで(当時の)行政の腰の重さを考えると作者を支持出来ない。 しかし、そこまで深く考えずにミステリーとしてでなく人間を描いた作品と捉えて読めば直木賞を逃した事が不思議としか思えない。 ※ファジーな選択で映像化作品に先に接してしまったが、さほど残念な思いはない。 採点はミステリーとして扱ったので低め。 |
No.478 | 5点 | ミステリアス学園- 鯨統一郎 | 2009/09/29 23:29 |
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手っ取り早い「本格ミステリ入門書」ではある。
一方ミステリ小説として読むと(初読時の自分)結末に本を壁に投げつけたくなる(図書館本だったので・・・) この結末で作者を代表的‘本格もどき作家’だと認識してしまい先に進めなくなった。 ※本格ミステリ度マップに既視感があったが、先日「本格ミステリー館」を再読して、先からアレンジ転用したと判明してスッキリした。 これに関しては、ミステリの普及と楽しさに繋がるので、他の評論等でもアレンジしてドンドン転用すれば良いと思う。 |
No.477 | 6点 | おさがしの本は- 門井慶喜 | 2009/09/27 23:04 |
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図書館の調査相談員を主役にした連作短編集。
図書館職員の日常業務的「本捜し」をミステリとして、図書館存続問題をロジカル・サスペンスとして平行して描いた作品。 本好きの理屈っぽさが嫌いでなければ非常に楽しく読める。 「本捜し」で扱われる作品に馴染みの無い作品が多いのがやや難点。 図書館ヘビーユーザーの自分には結構切実だった。 ハッピーエンドな結末で読後感も良い。 主人公をそのままに移動先での続編でも書いてほしい。 |