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江守森江さん
平均点: 5.00点 書評数: 1256件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.656 3点 正義の四人/ロンドン大包囲網- エドガー・ウォーレス 2010/03/13 15:55
何かのコラムで「読者挑戦物」の先駆けと紹介されていたので読んでみた(←騙されたorシリーズ他作のどちらか不明)
冒頭の案内書きでスリラーとジャンル分けされた通りな作品だった(案内人の名がレッド・ヘリングには笑った)
活劇作品も嫌いではないが、書かれた時代故か先の展開が読めてしまう。
先の読めるスリラーなんてスリリングさの欠片もなく褒めようがない。
最後のハウダニットも(古典的名作の転用多数であながち馬鹿に出来ないが)藤原宰太郎の推理クイズレベルだった。
陳腐なスリラーなので知っていれば読まなかった。
※余談
ミステリー云々は置いといて「正義とは?」「どちらが正義なのか?」は人類永遠のテーマかもしれない。
アルカイダだって当人達は「正義」だと思って行動しているのだろう(注:テロを正当化したコメントではありません)
※これは本音
アメリカに絶対的正義があるとは思わない!
もっとも日本が絶対正義とも思えない。

No.655 4点 悪魔の口笛- 高木彬光 2010/03/12 18:44
初期の神津恭介シリーズで、少年向け故に埋もれていたが復刊した(もう一作の復刊作品は芦辺拓編「少年探偵王」に収録済←そちらで書評もした)
冒頭からいきなり怪人Xと神津恭介が遭遇して如何にも少年向けらしく展開する。
話半ばで明かされる怪人X=ロボットのSF設定は活劇に味付けを齎すが謎の解決としては褒められない。
その後に展開する宝捜しや首領の正体は作者らしさが嬉しいが、大人にはミエミエ過ぎた。
本来なら3点だが、小学校低学年からのミステリへの入口としての復刊意義を考慮し1点加点した。

No.654 5点 走る捜査線- 島田一男 2010/03/11 17:49
国鉄からJRに民営化された時期の作品で鉄道公安官から鉄道警察隊への移行に伴いこのシリーズが書かれた。
基本的には旅情ミステリーになる。
ドラマ化が一人歩きする典型例で主人公の清村公三も公三郎に変えられ、原作数をオーバーした今では原案・島田一男とさえクレジットされなくなった。
小説の方も鉄道公安官シリーズに比べパワーダウンした事に加え、作者の年齢による取材力の衰えから3作でシリーズ終了した模様(詳細不明)
このシリーズ終了以降の作者は、筆力の衰えと極度のマンネリ化で単なる量産作家になってしまい残念だった。

No.653 3点 アルキメデスは手を汚さない- 小峰元 2010/03/11 00:18
リアルタイムに、描かれた世代と同世代なので、学校の図書室にもあり、クラス内でも評判になった。
当時の私は本格ミステリとして鮎川哲也・天藤真・高木彬光、大人の世界は梶山季之にドップリだったので何ら楽しめなかった。
ミステリーとしては薄い内容で、学生風俗としても時代に飲み込まれ、今では凡作に成り下がった。

No.652 4点 完全試合- 佐野洋 2010/03/10 23:36
プロ野球の優勝争いに誘拐を絡め内幕を描いた作品。
些細な事を考えずに読めば非常にスリリングな展開で楽しめる。
でも、本来なら報道協定とかで有り得ない設定な為にリアリティを欠いてしまう。
その辺でミステリーとしては低評価なのだろう。
野球小説分野では高評価なのが皮肉だと言える。

No.651 5点 特ダネ記者殺人事件- 中津文彦 2010/03/10 22:57
この作品が発表された当時の私は、本格ミステリよりも島田一男のブン屋物が一番好きだった時期で、良い後継者が出現したと思ったのだが・・・・・・。
シリーズ化すらされずブン屋物もこれ一作で終わってしまった。
楽しく読めた事で残念な思いが増幅した作品。

No.650 2点 夜の深海魚- 木谷恭介 2010/03/10 22:45
ソープランドがトルコ風呂と言われていた頃の風俗小説なのでポリシー通り2点。
但し、作者が旅&風俗ライターをしていた事と、この作品の令嬢捜しが後の旅情ミステリー量産に繋がる点で取り上げる。
ベッド・ディテクティブならぬマット(泡踊り)・ディテクティブな作品は世界でも数少ない(梶龍雄作品にもあるらしい)
※卑近な余談
学生時代、寮内で作者の「トルコ風呂ガイド」が回し読みされ、紹介された同じトルコ嬢に突撃した○○兄弟が続出したとの伝説があった。

No.649 6点 扼殺のロンド- 小島正樹 2010/03/10 15:33
自称名探偵・海老原シリーズ第二弾(海老原登場自体は三作目)
謎また謎の連打に結末の捻りを組み込む怒涛の展開な作風から、今回はやや落ち着いた。
各章毎で計3つの大きな謎が提示され、ゆったりと検討される過程はオーソドックス。
最初に提示された「内臓抜き取り」&「高山病」の謎は、現実味が薄くバカミスだが破壊力はある。
二番目の密室&幽霊トリックは、フーダニットの手掛かりの為の付け足しな感じは否めない。
三番目の密室トリックの気付きは、倉知・某作品の焼き直しだが悪くない。
総じて謎とハウダニットに関しては合わせ技一本と言ったところか。
※ここからネタバレ注意!!
しかし、捻ったフーダニットは、「十三回忌」同様にプロローグからミスリードを仕込む小賢しさ故、逆に犯人が透けてしまい驚きが薄まり残念(小泉喜美子の某作品が思い浮かび一気に犯人到達してしまった)
それでも、エピローグからプロローグに戻る構成は(新鮮味を欠くが)上手い。
あと一歩突き抜ければ傑作をものに出来そうなだけに、作者には「プロローグにミスリードを仕込む誘惑」の呪縛から解放されてほしい。

No.648 4点 Anniversary50- アンソロジー(出版社編) 2010/03/10 05:46
新たなる半世紀に向けて!カッパ・ノベルス創刊50周年記念作品。
綾辻・有栖・大沢・島荘・道尾・宮部・森村・横山・他一名(田中だけじゃ判別不能)の豪華執筆陣。
しかし「50」をテーマにした緩い縛りすら効果的に利用しない作品ばかり。
光文社への義理で仕方なくやっつけ仕事しました的作品が揃ってしまった。
本来なら最低手前な3点だが、横山「臨場」のシリーズ継続が嬉しい、巻末のカッパ・ノベルス・リストは眺めるだけでも懐かしい(合わせて+1点)と救いはある。
それでも、わざわざ買う程の物ではないと断言する。

No.647 4点 袋綴じ事件- 石崎幸二 2010/03/10 00:48
出版当時「密室本」なんて企画にワクワクしたが、わざわざ袋綴じにする必要性を感じない作品ばかりだった。
今までで一番真っ当な本格ミステリになったが、相変わらずミエミエな伏線をダミーにした構図は狙いが透ける。
作者に求める「アンチ・ミステリとして本質を射抜くギャグ」が削られ気味で逆に評価を下げたい。
自分が高校生の頃の購買部では焼きそばパンは一番人気だったが、女子高生が通貨代わりに賭の対象にする程の人気だろうか?
それが、この作品で一番のミステリーな気がする。

No.646 4点 翔んでる警視正- 胡桃沢耕史 2010/03/09 11:41
シリーズ継続に合わせて主人公の岩崎白昼夢(さだむと読む)も警視から警視正に出世し、結婚、更には息子も誕生する。
ミステリーから国際謀略阻止(今なら公安警察)方向に事件もシフトしマンネリ化した。
平成篇まで書かれたが作者が亡くなるとともに忘れ去られた。
量産シリーズは作者が長生きして書き続けなければ生き残れない事を痛切に感じる。
その意味で西村京太郎御大は偉大だと思う!

No.645 5点 翔んでる警視- 胡桃沢耕史 2010/03/09 11:29
エロ作家&翻訳家の清水正二郎が「直木賞」を受賞する為に娘と息子からとったペンネームで復活し、ベストセラー作家の地位を築いたシリーズ。
最初の数冊はさほど注目されなかったが、コミカルな警察物ミステリーとして楽しかった。
その後、注目されて出版社が変わり「新・翔んでる警視」としてシリーズ継続した。
一時期古本屋の特売コーナー御用達作品だったのが懐かしい。

No.644 5点 富豪刑事- 筒井康隆 2010/03/09 11:08
先日、ベランダ改修工事の都合で物置を撤去した。
中にあった段ボール箱の詰め替え時(廃棄&トランク・ルームに仕訳)にドラマ作品(深田恭子が可愛い)を録画したテープが出てきた。
早速観て、図書館に出向き原作もおさらいした。
主人公が男だった。
正統派な解決方法をおちょくったアンチ・ミステリーだと思って読んだので楽しかった。
ミステリーに軸足を置いた作家に、こんな作品は書けない事を踏まえて書いてしまう辺り作者は凄い。

No.643 5点 彫辰捕物帖- 梶山季之 2010/03/07 23:12
色(女)と技(推理)に冴えをみせる刺青師・彫辰が江戸の町を舞台に活躍する連作短編シリーズ。
最初は、その一~その四で出版されたが、復刊では上・中・下に纏め直された(その為、書評では一冊扱いにした)
各話で張り形・媚薬・男色などなど江戸風俗に事件を絡め上手く纏めている。
シリーズが進むに連れて作品の謳い文句が好色時代小説から異色時代小説になった辺りもミステリーしている事を伺わせる。
短編としても短めなので事件のからくりや謎解き自体は薄味なのが惜しい。

No.642 4点 長く短い呪文- 石崎幸二 2010/03/07 22:34
この作品に関しては概要が記憶に残っていた。
最後まで事件らしい事件が起きずに、「呪い」の真相とその先の捻りを推理し未然に防ぐ名探偵ぶり。
しかし、使い古された利き腕(左右)や双子をアレンジしてもミエミエ過ぎた。
本格ミステリとしてだけなら最低レベル手前な3点だが、導入部での日本史に絡めたミステリ解釈ギャグの数々(小野妹子&小野小町→叙述&伏線、鎖国→密室、平城京→館物など)は爆笑物だった(+1点)
笑う為だけに存在するミステリーは、ある意味貴重なのかもしれない!

No.641 6点 あなたがいない島- 石崎幸二 2010/03/05 08:03
半分過ぎまで事件らしい事件は起こらず、エピローグでの捻りを含めても本格ミステリとしてはお粗末なレベルなので、これまた内容が記憶に無かった事に納得した。
しかし、ギャグにまぶした会話をアンチ・ミステリとして捉えるなら秀逸で、笑いが止まらない。
クリスティーも、ここまで笑いのネタにされれば草葉の陰で苦笑するしかない。
とあるブログで「誤植トリック」を笑いのネタにした書評を読み、再度爆笑したのでそのブログを賞賛して1点加点した。

No.640 6点 写楽おんな秘図- 大下英治 2010/03/04 21:35
「歌麿おんな秘図」の続編で、タイトルと主人公・歌麿の後半生記である事から、作者が提示する大胆な仮説は推測出来る。
基本的には男女のまぐわい描写を主体にした艶本なのだが、その合間に書かれた上記仮説の時代考証や作風考証は、まさに上級の歴史ミステリーだと云える。
特に、まぐわい描写にまぶした作風考証を、図書館にある浮世絵作品集で実際に確認して唸ってしまった。
作者のサービス精神と作風の幅広さには感嘆する。

No.639 2点 歌麿おんな秘図- 大下英治 2010/03/04 21:24
ハッキリと艶本に分類される作品で、歌麿の前半生記なのだが、続編で提示する仮説が歴史ミステリーなので取り上げる。
よって採点はポリシー通り2点。
硬派なドキュメンタリー小説に真骨頂のある作者だが、師匠である梶山季之ばりに男女のまぐわいも見事に描いている。
時代考証に基づいた登場人物達なので、実際の男女関係まで想起させて、まぐわい描写以外が結構面白い。
※余談
この作品から派生した浮世絵の勉強?でTSUTAYAの屋号の原点が蔦屋重三郎にあると知った。

No.638 3点 夜の調査員- 阿部牧郎 2010/03/04 05:45
巨人軍の宮崎キャンプに仕組まれた陰謀を、スポーツ紙の記者が‘夜の調査’で暴く官能サスペンス。
よくぞ、こんなエロ作品に当時の巨人軍が長嶋茂雄まで実名使用を許可したものだ。
その辺が一番のミステリーかも知れない。
確かスポーツ紙連載だった筈で、スポーツ紙と球団との馴れ合い具合まで考えさせる辺りは、違う意味で凄い。
※余談
「朝まで休みなく」と云う東スポ連載作品ではプロレスラーが実名登場しナンパテクに利用されていてエロ小説なのに笑ってしまった。

No.637 5点 日曜日の沈黙- 石崎幸二 2010/03/04 04:52
「≠の殺人」を読む前に、出版早々に読んだが面白かった印象のみで内容が定かでないブランク以前の4作を再読する事にした。
本作はメフィスト賞を受賞したデビュー作。
「殺人?イベントの意味」と、その先の「究極のトリック」を本格ミステリとして評価するなら泡坂妻夫の出来損ねレベルだろう。
故に内容が定かでなかった事にも納得した。
しかし、名前を入れ替え出版しても問題ない(区別出来ない)ミリア&ユリの、ギャグにまぶしながら本質を射抜く会話は、アンチ・ミステリとして素晴らしい(東野圭吾「名探偵の掟」より鋭いかも)
特に、高木彬光が世界一短いミステリは2行と随筆に書いていたが、それを1行に短縮したネタ(後のメフィスト賞作で深水が最大限に膨らませた)とそれの出版方法(都筑の某作のアレンジ)は爆笑ものだった。
ギャグと皮肉タップリな批判部分を楽しむ作品だと認識すれば非常に面白い。
再読して良かった。

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江守森江さん
ひとこと

※「読書(ミステリ)は趣味で娯楽」「相容れない主張(嗜好)は、どこまでも平行線」を標榜している。
※多くの作品に接する努力として、映像化作品で済ます等々、ファジーな方法を常に模索している(本質的...
好きな作家
高木彬光、天藤真、平石貴樹、古野まほろ (ミステリーに限定しなければ一番は梶山季之...
採点傾向
平均点: 5.00点   採点数: 1256件
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