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臣さん
平均点: 5.90点 書評数: 660件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.12 9点 悪意- 東野圭吾 2019/12/02 13:17
最後の「解明」の章は少々駆け足すぎる感がある。
この種の構成からすれば、解明はどんなふうにでも作れる。
伏線も軽く書くか、適当であってもよい。
とにかく、こういう手法だと、どんな真相も、どんな動機も話の中に作り込める。それに、なんどでもひっくり返すこともできる。
ずるいような気もするなぁ。
といった種々の欠点はあるが、とはいえ、こういう構成で真相をヴェールで包み込む方法を考え出した東野氏は天才的といえる(ただ、すべてが新規創出とはいえないが)。

それと、加賀恭一郎の教師時代と、わずかだがリンクさせた点もよかった。そこが加賀モノらしさなのか?こういうところは上手い。

とにもかくにも東野作品のなかでは、出来はピカイチだろう。
「容疑者Xの献身」や「白夜行」があまりにも騒がれすぎなので、本書は隠れた名作的なところもあるが、個人的には堂々たる名作と評価したい。

No.11 7点 夜明けの街で- 東野圭吾 2019/09/18 10:48
不倫話とミステリーの組み合わせ。
だいじょうぶかな、奥さんにばれないかな、とけっこうドキドキした(笑)。
恋愛・不倫モノはミステリー(サスペンス)に通じるところがあって楽しめた。

中盤ごろのある段階で、○○が探偵役で、不倫関係はこういう結末を迎えるのでは、と予測したが、まさにそのとおりだった。
ただ、真相そのものや、事件において○○や△△、××がどういう立場の人物なのかまでは想像できなかった。
トリックがあるわけでもなく、不手際なところも多々あり、ミステリー的にみればイマイチかもしれないが、面白くするためのプロット作りの巧さは抜群だと思う。
かなり上出来の作品ではないだろうか。

東野さんも素晴らしい恋愛モノが書けるのですね。
女性を描くのが下手だとか、女性の心理がわかっていないとかの声も聞かれるが、これだけ面白ければ問題なし。
クリスティーの男女モノの『ナイルに死す』や『検察側の証人』には及ばないが、こんな風に楽しませてもらえれば、個人的には大満足。
それに復讐物の要素があったのもよかった。

恋愛がベースになっている『容疑者Xの献身』は、マイナス面がどうしても気になって7点にしたが、本作はプラス面だけを見て7点にした。

No.10 7点 真夏の方程式- 東野圭吾 2016/08/04 09:35
さすがの安定感。安心して読める。この作家さんの作品は、ほんとうにはずれがない。

湯川は玻璃ヶ浦滞在中に事件に遭遇する。被害者は元警視庁の刑事。
まず玻璃ヶ浦で知り合った少年・恭平との深交に魅かれた。子ども嫌いらしさゆえの恭平への接し方が自然でよかった。夏らしさもよかった。
一方の恭平は視点人物の一人。その心情、心境はやや子どもらしさに欠けるのでは、と思っていたが、案外こんなものだろう。むしろ小説のテーマに合っているようにも思う。

湯川、草薙の個別の捜査活動によって、徐々にあきらかになっていく事件の真相と背景。過去の人間関係がキーになるのはありがちだが、その流れと物語の組み立て方がうまい。犯人当てはどうでもよいと思っていたら・・・
そして、最後に魅せる適度なヒューマニズム。
湯川が大学の先生じゃなく、小学校の教師に見えた。

トリックは湯川物らしさがある。小学生レベルの理系トリックだが、かなり気に入っている。

個人の評価基準に照らせば6点だが、『容疑者X』よりも好きなので、この点数。

No.9 6点 探偵ガリレオ- 東野圭吾 2014/09/01 13:27
読者が謎解きに挑戦することを前提とした作品ではないし、種明かしされた後でも、そうだったのかと唸るような作品でもない、ということを知って臨めば、マイナス点も少なく、理系、文系に関係なく楽しめるはずだが。

実は本書のような理系トリックはそれほど好きではない。理系のくせにわからないから、というのが本音だが。
でも、この短編集は、理系トリックに徹底的にこだわってチャレンジしたことに意義がある。作者の自己満足も多少はあるかもしれないが、個人的には、東野さん、よくやった、と賞賛している。
それに、捜査の過程を十分に描写して、犯人当てをする余地を残してくれているのはうれしい。伏線を見つけて楽しむ方法もあれば、キャラを楽しむ方法だってある。理系短編でこれだけの楽しみ方ができるなんてすごいこと。だから、理系ミステリーだからという理由だけで評価を下げるつもりはない。

ということで、評価は標準超え。
もしかして、トリックは理解できないながらも、潜在的な理系の血が騒いだのかもしれない(笑)。
出来は多少の差がある。『離脱る』はミステリーとしてはいまひとつなのだが、けっこう好みだ。トリック(とはいえないが)もわかりやすくていい。

最後に
理系ミステリー、理系トリックという用語が一般化しているが、個人的には、自然科学(系)ミステリー、自然科学(系)トリックと呼びたい。ただ、「自然科学ミステリー」だと、「〇〇の科学の謎を探る」みたいな、NHKのドキュメンタリー番組と勘違いされそう。

No.8 7点 容疑者Xの献身- 東野圭吾 2012/06/26 10:22
純愛物語とミステリが融合した作品です。ミステリに堪能し、純愛ドラマに感動したという意見が多数のようです。さすが東野さん、話はほんとうにおもしろい。

でもねぇ。

純愛を感動ネタにしているところが、ちょっとやりすぎに感じるんですよね。「愛は殺人よりも重い」なんてのは現代では通用しません。江戸時代の話にすればよかったのにという気がします。いっそのこと勧善懲悪で結ばなければよかったのにとも思います。
それに、レクターなみの頭脳を持った犯人が敢行する大トリックと、純愛部分とは、謎解き部分で背景が開示してあるとはいえ、あまりにもアンマッチというか、バランスが悪いというか、物語に酔いしれるところまではいきませんでした。
しかも、この大トリックはかならず破綻をきたします。詰めが甘いですね。天才なのにもっと完璧にすべきです。警察がたよりなさすぎとも言えますね。
まあでも、トリック自体の奇抜さは素晴らしいです。

超人気作品を選んで、300件目の書評としました。

No.7 5点 回廊亭の殺人- 東野圭吾 2011/07/18 01:26
意外な真相、技巧的な叙述。たしかにテクニック的にはすぐれた作品ですが、いくら真相が意外でも、これでは犯人当てとしての面白みはありません。フェアぎりぎりを狙って技巧に走りすぎたかなという印象です。一人称小説なのになぜ、というひっかかる点もあります。ただ、読者を飽きさせない物語性とサスペンスはさすがといわざるを得ません。

No.6 7点 卒業−雪月花殺人ゲーム- 東野圭吾 2011/04/20 10:17
(ちょっとネタバレ)
密室トリックはまったく好みではない。雪月花ゲーム・トリックはまだましだが、種明かしでは、実は○○がカードを準備したとか、××が隠し持っていたとか、パズルとしてはフェアじゃない気がした。それとも、与えられた図面や説明だけでパズルを解こうとした読み手側に問題があったのか。あくまでもミステリ小説なので、全体を読むべきなのでしょうね。

トリックには多少批判的ですが、青春ミステリ好きにはたまらない内容です。6人の学生の役割分担もよくできているし、人物描写もなかなかのものです。6人という人数も多すぎず適度です。
それにしてもこのサイトでは、どうしてこんなに点数が低いのでしょうか。本格ミステリに対しては、厳格にミステリ要素のみで判断している方が多いということでしょうか。なんとも哀しく切ない青春群像におおいに惹かれたので、得点は高めです。

No.5 8点 赤い指- 東野圭吾 2011/01/13 15:39
親子、家族(特に介護問題)をテーマとした社会派・倒叙ミステリです。
さすが東野さん。読ませるストーリー展開には感心します。テーマがテーマだけに、もう少し重く読みにくくしてもよかったのでは、と思うぐらいです。
メインストーリーのラストにはもちろん気持ちよく驚かされましたが、加賀親子について同一テーマで並行してサブストーリーを展開させ、オチまで付けたのは、心憎いほどのテクニックです。
正月のテレビドラマもなかなかの秀作。父親役の杉本哲太が好演していました。

No.4 6点 名探偵の掟- 東野圭吾 2009/12/24 15:10
本格ミステリの書き手、読み手に通じる暗黙のルールを示すことが本書の趣旨だとすれば、すべてに納得でき、その結果楽しめました。しかも、パロディで茶化して笑わせてくれるので二度美味しいです。
本書が出た当初、すぐに購入し、その後何度も読み始めるのですが、そのたびに、あまりのばかばかしさと、メタミステリの構成とに嫌気がさして途中で投げ出していました。今回趣旨がわかって、やっと読了できました。ミステリとしての出来はともかくとして、これだけ楽しめればある程度の評価はできますね。

(余談ですが)本書や、メタミステリの一種とされる読者への挑戦(特にクイーン)など、あからさまに読者へ問いかけるものは、物語に入り込むタイプの私にとって、興醒めし読む気が失せてしまうので好きになれませんでしたが、ミステリファンなら、こだわりなくなんでも読むべきですね。歳とともに、何でもOKのミステリ嗜好にもなってきましたし(笑)。

No.3 6点 11文字の殺人- 東野圭吾 2009/08/19 10:03
たしかに火サスそのものですね。(長年、火サスで培われた)直感によって、早々と犯人も分かってしまいました。真相はチープすぎます。余韻も残りませんでした。でも、ページを繰る手が止まらないほど楽しめたことも事実です。アリバイトリックもシンプルで良かったです。とにかく、あっという間に読めたってことが、素晴らしいエンターテイメント小説の証拠だと思いますよ。買って読むのは勿体ないかもしれませんけどね(笑)。

No.2 6点 眠りの森- 東野圭吾 2009/06/25 16:03
バレエ団というクローズドな空間での殺人事件を取り扱った作品です。
こういう設定は好みだし、ミステリとしてもまずまずの出来だし、読後感も悪くはなかったのですが、なぜか印象は薄いです。好みの問題なんでしょうね。評価が分かれて当然、という感じの作品でした。ただ、この作品も再読要かな?

No.1 8点 放課後- 東野圭吾 2009/06/25 16:02
青春推理は好きな分野。予想を裏切らず、ストーリーもトリックも上質で、まとまりの良いバランスのとれた作品でした。乱歩賞は伊達じゃないと思います。
動機に問題があるという評価が多いようですが、全く気になりませんでした。というよりも、違和感がなかった、という記憶しかありません。でもみんなの書評を見ていると、再読の必要がありそうだなと感じました。再読後、再評価するかもしれません。

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臣さん
ひとこと
あいかわらず読書のペースが遅い。かといってじっくり読んでいるわけではない。
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平均点: 5.90点   採点数: 660件
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