皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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臣さん |
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| 平均点: 5.91点 | 書評数: 676件 |
| No.9 | 7点 | 枯草の根- 陳舜臣 | 2026/10/01 11:11 |
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| 微妙だな。何十年ぶりかの再読でストーリーは一切覚えていない。だからあのときの興奮がよみがえってきてもよさそうなのに、それはほぼゼロ。
たしかに後半の陶展文の勢いはすごいのに、なぜだろう。 社会性も描きたいし本格派でもありたいという、昭和のミステリー性がプンプンとしすぎるからなのかな。告白書にたよっているところもちょっとね。 それにミスディレクションはほどほどにしておいたほうがいいのかな、という感じもある。 とはいえ、昭和の2時間ドラマによくあった、企業の汚職とかを描いて大風呂敷をひろげながら話を大きくして、それはたんなるめくらましで犯人はじつは近所のおばさんだった、というようなストーリーにくらべるとだいぶまし。 それに謎解きはしっかりしているので、評点はこんなところ。 ちょっと期待しすぎた。「炎に絵を」の再読は期待どおりだったのにね。 評価が変わってしまったいちばんの原因は、好みの変化によるものなのかもしれません。 |
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| No.8 | 7点 | 北京悠々館- 陳舜臣 | 2017/05/25 17:10 |
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| 清国とロシアとの秘密協定に絡むスパイ・ミステリー。スパイ役は日本の書画骨董商・土井策太郎。
息もつかせぬサスペンス、ハラハラ、ドキドキの連続、というほどではありませんが。 この作者のミステリーは、国際色豊かで、いかにも壮大そうなものもあり、おそらく解説を読んだだけでは敬遠する人も多いのではという気がします。でもどんなタイプのミステリーであれ、たいてい本格要素が盛り込んであり本格ファンには喜ばれると思います。 本書も、いちおうは本格です。 悠々館での密室殺人、25万円の消失が主たる謎。300ページのボリュームで提起される謎としてはやや小ぶりですが、それを著者の得意分野による物語性で十分にカバーしています。 国際政治絡みの雇われスパイに浮世離れした骨董商の見習い青年を使ったり、後半には小気味のいい謎解きをするもう一人の主人公・張紹光を登場させたりと、人物設定にこの作者のうまさを感じます。 殺人トリックは可もなく不可もなし(というよりもこんなの飽きちゃったという感じかな)ですが、ミステリーとしての締めくくり方がちょっと変わっていて(いちおうどんでん返しあり)、けっこうお気に入りです。 |
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| No.7 | 6点 | 黒いヒマラヤ- 陳舜臣 | 2016/02/29 10:18 |
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| ヒマラヤの高峰カンチェンジュンガの架空の麓町・カムドンで、主人公の毛利は友人のカメラマン・長谷川と会う予定だったが、そのとき彼はすでに車の転落事故で死んでいた。
『第三の男』か、と思わせるようなドラマチックな冒頭。それはちょっと大げさだが、それでも、これはと期待を抱かせる出だしである。 インドの活仏が遺した宝石を巡る連続殺人の謎解きが主題となっている。 だから本格派ミステリーにはちがいないのだが、巻き込まれ探偵の毛利も狙われるし、そもそも秘宝が絡んでいるから、冒険サスペンス小説風でもある。 ということで楽しみどころは満載のはずなのだが、ちょっと違う。 まず、宝石の争奪戦ということで、『マルタの鷹』を連想し、決してドタバタ劇ではないのに、そう見えてしまうこと。裏の解説に詩的文体とあるが、物語の内容にあまりにもかけ離れた感があること。 しかも視点が多すぎて、違和感があるなぁ。 という理由で、よかったのはアリバイ崩しぐらいか。それだけあれば十分ではある。異国情緒を楽しめたのもよかったかな。 ラストは、こういう小説なら、これは有りかなという感があり、気にならなかった。 大昔に読んだことがあるが、記憶に残っているのは冒険物語ということだけ。今回再読してみて、中途があまりにも本格風なのにびっくり。でも読み終えるとやはり、冒険風味が勝ちすぎな気がした。 |
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| No.6 | 10点 | 炎に絵を- 陳舜臣 | 2011/11/10 13:32 |
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| 今回は、E-BANKERさんに倣った、初の節目(250番目)書評です。
父の生前の汚名をそそいでくれとの病床の兄からの依頼を主人公の葉村省吾が受けるところから、物語が始まります。葉村家の歴史を背負って動き出す省吾。でも当の本人は明るく能天気なほどの好青年で、全く気負いはありません。前半では、この青年が探偵ごっこのように調査をしながら、読者を飽きさせない程度に話が進んでいきます。 ところが後半にさしかかるころ発生する突然の事件をきっかけに、省吾は葉村家にまつわる謎の渦の中に飲み込まれていき、最後は驚愕の真相へたどり着きます。 巻き込まれ型の素人探偵が真相へとひた進む、サスペンス性ゆたかな、この壮大な推理ドラマには興奮を覚えます。 陳氏の出世作『枯草の根』とくらべると、今までは、わずかな記憶だけをたよりに、かなりいい加減に、本書がすこし上と判断していましたが、今回の再読で結着を見ました。 本書に関し記憶しているのは、興奮して読んだことと、読後数年間、余韻がつづいたことだけ。筋については、主人公が必死にもがきながら謎を追う情景が記憶にあるだけでした。 でも興奮と余韻は記憶どおり、本物でした。 2年ほど前、ディヴァインの『兄の殺人者』を読んだとき、本書と似ているような気がしたのですが、実際はかなり違います。家族愛が背景にあり、兄が登場するという点では一致しますが、筋も、興奮の程度も全然違っていました。 主人公とその恋人の性格は記憶とは違ってとても明るく、意外な気がしました。彼らの性格と、謎の重苦しさや悲劇性とのギャップが本書の魅力の一つなのかもしれません。現代風な主人公や、柔和でゆったりとした物語の雰囲気は、陳ミステリーの特徴のようです。 |
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| No.5 | 7点 | 白い泥- 陳舜臣 | 2010/04/30 13:13 |
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| 寒天の積荷の中から死体が出てくる話です。舞台は神戸の貿易商社。いかにも陳氏らしい設定です。結末はやや暗めながらも意外性はばっちり。トリックと謎解きもよくできています。いつものように人物造形が上手いので印象は良く、暗めの結末によるいやな後味よりも上手い小説を堪能できたことの満足感が記憶に残っています。
ところで、神戸が舞台なのに、なぜ探偵役として陶展文を登場させなかったのでしょうか?登場させていれば話がもうすこし明るくなったろうし、みなに好まれる作品になったと思うのですが。。。 |
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| No.4 | 5点 | 六甲山心中- 陳舜臣 | 2010/03/26 15:13 |
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| 神戸周辺を舞台とした短編ミステリー集。表題作ほか、「染められた骨」「三角犯罪」「幻の不動明王」「骨を洗う女」「ぼくらは逃げた」が収録してあります。
陳氏の作品はおおむね人物造形がよくできていますが、本書は短編のせいか、人物は長編ほど丹念に描かれていません。内容はタイトルどおりやや暗めで(暗いのは好みだったりする)、後味もあまり好くありませんが、ストーリーの切れ味だけは好かったですね。 氏の著作には『枯草の根』『炎に絵を』『神獣の爪』など秀作ミステリが数多くありますが、それら主要なもの以外のほとんどのミステリが街の本屋で入手しにくくなっているのは残念です。 |
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| No.3 | 8点 | 神獣の爪- 陳舜臣 | 2009/07/31 17:57 |
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| 6編よりなる短編集で、そのうち後半の2編は陶展文シリーズです。安楽椅子探偵物、ユーモア物、本格物と種々そろっています。いずれの作品も、ストーリーが十分に練られているという印象を受けます。うち2編についてコメントします。
表題作は、謎を解くのは刑事ですが刑事物といった感はなく、その刑事が私的に入手した25年前の盗難事件の情報をもとに、とある復讐の謎を解き明かす、というどちらかというと安楽椅子探偵物に近い推理小説です。謎解きロジックはすこし乱暴な感じもしますが、短編なので、むしろそのぐらいのほうが面白みがあります。4編目の「描きのこした絵」は本格ミステリで、仕掛けとして大掛かりなトリックと、物理的なトリックとが用意されています。大掛かりなトリックは少し無理はありますが、やはり短編なら、このぐらいのほうが楽しめるように思います。これら2編は、ほんとうに秀作です。 |
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| No.2 | 6点 | 虹の舞台- 陳舜臣 | 2009/06/22 14:54 |
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| 陶展文シリーズも本作が終盤なんでしょうか。探偵役である陶展文もやや老いて、ストーリー自体もゆったりとした、落ち着いた感じがします。もっとも陶展文は安楽椅子探偵なので、シリーズのどの作品を読んでも、ある程度そんな印象を受けますが。。。
物語の背景にはインド独立があり、歴史ミステリーっぽいところがあって興味が惹かれましたが、謎解きには物足りなさを感じます。陶展文が襲われるというサスペンス展開が案外読みどころかもしれません。 |
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| No.1 | 7点 | 柊の館- 陳舜臣 | 2009/05/11 19:53 |
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| 神戸の船会社宿舎の異人館「とんがり屋敷」を舞台にしたミステリで、そこに勤めるメイドの思い出話を連作短編に構成した形式をとっています。メインの謎は最初に起こった殺人事件で、短編ごとにも個別の謎があり、短編ごとに完結するとともに、最終の短編で最初に起きた殺人事件が解決します。
30年ほど前に読んだときは、連作ミステリという形式が初めての体験で、その形式に驚き、さらに古き良き時代のゆったりとした、とげとげしさの全くない空間で、とうてい起こりえないような殺人事件が発生することのアンマッチ感に驚くとともに、殺人事件があったことさえ忘れてしまうほどの、そのあまりにも柔和な雰囲気に浸りながら、最終話では最初の事件が解決したことに唖然とした記憶があります。ミステリ経験が浅かったころで、自分で全く推理することなく、読了していました。 特別な仕掛けはなく、異色ミステリという程度であって、氏のミステリの中では決してベストとはいえませんが、氏の柔らかな筆使いが典型的に表れた作品だと思います。 そして、その後、中国歴史物を含め、陳氏の作品には長年にわたり楽しませてもらいました。 |
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