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臣さん
平均点: 5.90点 書評数: 655件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.9 8点 高層の死角- 森村誠一 2018/04/17 09:40
森村誠一氏の代表的本格ミステリ作品と言えば、乱歩賞受賞作品でもある本作。

密室トリック、アリバイトリック、さらに暗号トリックもある。欲張りすぎで、きっと気負いはあったのかもしれないが、でもみなうまくはまり、どれも上質に仕上がっている。力作です。

特にアリバイトリックには、力が入れてある。
かなりのページ数を割き、一歩進んでもすぐには答えにたどり着けない多段階構成となっている。時刻表はたしかに出てくるが、それだけではなく、組み合わせ技であるところがすごい。
解決のかけらを小出しにしながら読書欲を持続させてくれるこの展開は、ほんとうに堪らない。これこそがすぐれたリーダビリティにつながっているのでしょう。

No.8 6点 野性の証明- 森村誠一 2012/02/27 10:31
森村氏の代表作とされる「人間の証明」が心を打つ作品だっただけに、本書のほうが一般的には人気が少し落ちるのかもしれませんが、個人的にはこっちのほうが好きです。
大量虐殺の生き残りの少女が自衛隊員と、巨悪とに立ち向かうというとんでもない設定で、驚愕のラストあり、サスペンス(アクションかな)ありの強烈なエンタテイメント・ミステリー作品です。ストーリーは素晴らしくかつ馬鹿げてもいますが、ここまでやってくれれば思う存分に楽しめます。もしかしたら海外でも通用するのでは、という気さえします。

証明シリーズ第1作「人間の証明」で新境地を切り拓き、第2作の「青春の証明」が普通っぽすぎたためか、3作目の本書ではまた決めてくれました。
「青春の証明」が普通っぽいと思い込んでいますが、実際どうだったか、実はまったく記憶にありません。ゴメンナサイ。。。

No.7 6点 刺客請負人- 森村誠一 2011/12/23 10:27
必殺仕掛人・藤枝梅安と同種の人斬り稼業モノ・連作短編集。
主人公は松葉刑部という人斬り浪人。別名は病葉(わくらば)刑部。この名前からはいかにも暗そうな人物を連想しますが、そうでもありません。たしかに病葉刑部には暗い陰と過去があり、物語の雰囲気も暗く、ハードボイルド風でもありますが、主人公の性格がゴルゴ13の東郷とはちがって、意外に人情味溢れるお人好しであるところは万人受けしそうです。

ストーリーは、刺客を請け負った主人公自らが対象の人物やその周辺を調べていくうちに、実は別の奴がワルだったというような話の流れになるのがほとんど。ワンパターンですが、そういうところにスリルやサスペンスがあり、ミステリー的にも楽しめました。
タイトルや表紙のイメージからだけだと幅広く読者に受けるとは思われませんが、テレビドラマ化もされていて、すくなくとも時代小説好きなおば様連中には人気があるのでは思います。

No.6 5点 東京空港殺人事件- 森村誠一 2011/12/17 15:02
二重密室という本格要素に、企業の争いを中心とした社会派要素を付加した読み応え十分な社会派本格ミステリーです。
本書を読めば、当時の森村氏は社会派の雄である松本清張に倣いつつも、本格要素を多く取り入れて自分流の本格ミステリを突き進もうとしていたのでは、という気がします。
いろいろとアラもあるのですが、『高層の死角』の後ということなのか、勢いのある本格ミステリという感じがします。企業がらみの社会派ミステリーは嗜好からずれていますが、最初に読んだ森村作品ということで思い出深く、懐かしいです。

No.5 6点 堕ちた山脈- 森村誠一 2011/11/10 10:54
「堕ちた山脈」・・・ベテラン・グループと初心者グループの山での対決。どちらも甲乙つけがたいほど陰湿で卑劣。上手いと思った。
「虚偽の雪渓」・・・被疑者は少ないが手掛かりが後出しなため容易には犯人を特定できない。短編だからこのぐらいは止む無しか。
「失われた岩壁」・・・ワルも命がけ。ここまでリスクをかけることもないのにと思うが…。必死な状況はよくわかる。ラストは想定内。
「憎悪渓谷」・・・短編CC物。本格ミステリで添付図といえば間取り図などの平面図が一般的だが、本作には人間関係図が載せてあった。これには驚いた(笑)。
「犯意の落丁」・・・よくあるミステリ・パターン。雰囲気は楽しめるので、短編だから許せるという感じかな。
以上、5編。

森村氏の山岳モノは初めて。解説によれば、森村氏の山岳短編は、山も俗界の延長にある、だから山好きだからといって高潔ではない、という考え方にもとづいているらしい。5編ともそんな感じがよく出ている。
「堕ちた山脈」「虚偽の雪淫」「失われた岸壁」、これら3編は山ならではの話で、シンプルながらも引き込まれ、楽しめた。一方、「憎悪渓谷」と、「犯意の落丁」とは山を舞台にするほどでもないと思うのだが…。そう思いながら読むと面白さも半減した。

No.4 6点 人間の証明- 森村誠一 2009/07/09 16:12
森村氏の代表作といえば、『高層の死角』と本作です。前者は本格派推理で、本作はどちらかといえば人間ドラマ風ミステリです。
当時、小説、映画ともにあれだけ話題になったのに、本サイトでコメントがゼロというのは、あまりにもさびしいですね。ミステリとは思われてないのかな。
30年以上前に、2作とも読んだ時点では、間違いなく『高層』派だったのですが、年を重ねた今なら、だいぶ嗜好が変わってきているので、果たしてどちらなのかわかりません。それに、本作はわずかに記憶に残っているのに、『高層』はほとんど記憶にありません。私の場合、本格物は読了時点で面白いと思っても、記憶には刻まれないのかもしれません(笑)。

さて、書評ですが、再読していないので要点だけです。
西条八十の詩や方言、外国人の訛りなど、細かな手掛かりから真相を手繰り寄せていく推理プロセスは読みごたえがあり、ストーリーとしては人間ドラマであるというものの、リアリティのある刑事物(社会派?)ミステリの要素を十分に備えているように思います。さらに犯人側にもスポットが当てられていて、清張の『点と線』に『砂の器』の要素を加味したような(逆かもしれません)欲張りな作品だったように記憶しています。当時は『高層』の印象があまりにも強かったので、森村氏らしからぬ作品だなと感じたものです。

No.3 4点 殺人の花客- 森村誠一 2009/06/08 12:54
偶然性に頼りすぎるきらいがあります。それに、氏の多くの作品にいえることですが、登場人物や雰囲気がクールすぎるのが、いまだに抵抗を感じます。
ただ、展開は巧みで読みやすく、森村氏の特徴が十分に出ている作品だと思います。ミステリとしては小粒でしたが、カタセタムというランの花粉の謎は興味深かったですね。

No.2 5点 エネミイ- 森村誠一 2009/04/08 12:27
別々の事件で命を絶たれた被害者たちの家族たちが偶然にも、とある喫茶店で出くわす。こんな偶然の設定ありですか?
タイトルどおり、敵に対する復讐物。
出版社の紹介では、「真の正義を問う社会派推理」とのことだけど、これだけリアリティがなければ、社会派という分類には入らないのでは?たしかに本格ではないけど。
でも、読み進むうちに、ぐいぐいと引き込まれていくので、まあいいか、という感じの印象です。

No.1 6点 真昼の誘拐- 森村誠一 2009/04/06 11:56
誘拐と殺人の2本立ての設定が面白く、テンポ、展開もよい。偶然が重なりすぎてリアリティには欠けるが、十分に楽しめるサスペンスミステリだと思う。
社会派、本格、時代小説、ノンフィクションと何でも書ける器用な作家だけあって、少々無茶なところがあっても、そんなことは、ストーリーと流れの良さで忘れさせてくれる。

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臣さん
ひとこと
あいかわらず読書のペースが遅い。かといってじっくり読んでいるわけではない。
好きな作家
採点傾向
平均点: 5.90点   採点数: 655件
採点の多い作家(TOP10)
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