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nukkamさん
平均点: 5.44点 書評数: 2813件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.24 4点 ティー・ラテと夜霧の目撃者- ローラ・チャイルズ 2024/03/19 10:21
(ネタバレなしです) お茶と探偵シリーズ第24作で2022年に発表されました。連続殺人事件を扱っているのは多分シリーズ初の試みです。「アッサム・ティーと熱気球の悪夢」(2019年)で3人死んでいますがあれは熱気球を墜落させて乗員3人を同時に殺しているので「連続」とは言えないでしょう。コージー派ミステリーではありますがコージーブックス版の巻末で解説されているように暗く重苦しい雰囲気が作品個性となっており、序盤でセオドシアが嵐の日に殺人を目撃する場面のサスペンスが秀逸です。明るく華やかな場面とのコントラストも決まっています。サスペンス重視のためか謎解きは残念レベルで、本格派推理小説の推理を期待する読者には好まれないであろう解決になっています。終盤のミステリー劇が完全におまけ演出なのも惜しく、ここを何とか謎解きに絡めていればなあと思いました。

No.23 3点 クリスマス・ティーと最後の貴婦人- ローラ・チャイルズ 2022/12/13 07:14
(ネタバレなしです) 2021年発表の「お茶と探偵」シリーズ第23作のコージー派ミステリーです。クリスマスイベントシーンが豊富で、お茶やお菓子の充実ラインナップに加えて華やかなデコレーション描写にも力が入っていて実に祝祭的な雰囲気です。しかしミステリーとしてはがっかりです。このシリーズは読者が犯人当てに挑戦できるような謎解き伏線を用意しているタイプでないのは先刻承知ですけど、それにしても唐突に明らかになるこの真相はアンフェアにも程があると不平を言いたいです。これは大幅減点せざるを得ません。

No.22 4点 ハイビスカス・ティーと幽霊屋敷- ローラ・チャイルズ 2022/01/28 11:40
(ネタバレなしです) 2021年発表のお茶と探偵シリーズ第22作のコージー派ミステリーです。幽霊屋敷イベントの最中に起きた殺人事件ということで「ジャスミン・ティーは幽霊と」(2004年)を連想される読者がいるかもしれません。テーマパークの幽霊屋敷と同じような雰囲気なのでホラー要素は全くありませんが。これまでのシリーズ作品でもヘリテッジ協会(とティモシー・ネヴィル会長)が時々登場していますが、本書では容疑者の大半が協会関係者というのが作品個性になっています。(警察の警告をまたも無視して)いつも以上に気合の入っているセオドシアがいくつかの手掛かりを発掘しては警察と共有しつつ、警察からも引き換えに情報を入手とアマチュア探偵としては上出来の捜査だと思います。とはいえ犯人はこの人と確信するところまでは至らず推理による解決ではないし、誰も真相についてきちんと説明してくれないのでこちらは消化不良です。

No.21 4点 ラベンダー・ティーには不利な証拠- ローラ・チャイルズ 2020/12/11 22:52
(ネタバレなしです) 2020年発表の「お茶と探偵」シリーズ第21作です。冒頭の謝辞で「まだまだたくさんの<お茶と探偵>シリーズをお届けすると約束します!」と意気盛んで、よほどの人気シリーズなんでしょうね。今回は狩猟パーティーの最中の銃殺事件の謎解きです。定番のお茶やお茶菓子の描写は変わらずの充実で、デビュー作から発揮されている洗練された文体も安定しています。謎解きが残念レベルなのも相変わらずで(笑)、あの人を疑いこの人を疑いと焦点が定まらないのはまあ謎を深めようとしていると好意的に捉えますがあまりにも棚ぼた式の解決にはもはやあきらめのため息しか出ません。

No.20 4点 アッサム・ティーと熱気球の悪夢- ローラ・チャイルズ 2020/01/24 20:47
(ネタバレなしです) 2019年発表の「お茶と探偵」シリーズ第20作のコージー派ミステリーです。今回はお茶というよりお茶会の紹介になっていますがこれがなかなか興味深く、終盤でのボザールのお茶会描写はいい雰囲気を醸し出しています(結局シークレット・シッパーはお茶会に来たんでしょうか?)。そんなわけで「お茶」に関しては合格点なのですが、肝心の「探偵」に関しては...困りましたね(笑)。ドローンを熱気球に衝突させて被害者を墜落死させるというのが珍しく、これで3人もの死者が出るのですが誰が狙われたのかについてはあっさり絞り込まれてしまいます(死者の1人は登場人物リストに載せてさえもらえません)。犯人の行動は矛盾だらけで、犯行後すぐに逃げなかったのは不審に思われたくないからというのは理解できますが、そのくせ結構目立つ振る舞いを繰り返して馬脚を現しています。推理による解決要素がほとんどなくて謎解きとしては物足りないです。

No.19 5点 セイロン・ティーは港町の事件- ローラ・チャイルズ 2019/03/30 17:16
(ネタバレなしです) お茶と探偵シリーズはどの作品もお茶やお茶菓子の描写がたっぷりですが英語タイトルは必ずしもお茶が使われているわけではありません。しかし日本の出版社はお茶タイトルにこだわったようで、日本語タイトルは全てお茶を使っています。そして2018年発表のシリーズ第19作の本書ですが英語原題はセイロン・ティーは使われておらず、「Plum Tea Crazy」です。だけど英語原題が「Steeped In Evil」(2014年)のシリーズ第15作を国内で「プラム・ティーは偽りの乾杯」というタイトルにしたもんだから本書の日本語タイトルにはさすがにプラム・ティーは使えなくなってしまいましたね。内容の方は序盤からセオドシアが犯人と思われる人物を追跡し、その後も次々と事件が起きる展開でサスペンスは十分です。過去の恋人たちは物語の添え物程度でしたが、今の恋人のライリー刑事からはちゃっかり捜査情報を入手して探偵活動もますます充実、逃げる容疑者もいれば押しかけてくる容疑者もいたりとにぎやかです。それだけに決着が残念レベルなのが惜しいです。終盤になって新証人が登場して都合よく犯人の嘘を暴き、まだ証拠として十分と思えないのに犯人が馬脚を現して強引に解決されてしまいます。いくつかの小事件も同じ犯人の仕業なのかはっきりしません。

No.18 5点 オレンジ・ペコの奇妙なお茶会- ローラ・チャイルズ 2018/07/15 03:49
(ネタバレなしです) 2017年発表の「お茶と探偵」シリーズ第18作のコージー派ミステリーです。作家となる以前に作者は(規模は不明ですが)会社を設立して最高経営者を務めていた経歴があり、本書で被害者を殺す動機として財務上の不正疑惑や出資金の横領疑惑が可能性として浮かび上がるのは(真の動機かはネタバラシしませんけど)昔の経験を活かしたのかもしれません。そこがコージー派としては少し敷居が高い気もしますが、代わりに事件をいくつか発生させてこのシリーズとしてはサスペンスが高いです。セオドシアが犯人に気づく証拠を土壇場まで伏せていたり殺害機会について説明不足だったり本格派推理小説としては問題点も少なくありませんが、10章で重大な犯罪につながるおもな動機として「復讐、政治思想の違い、お金」と語っているのは興味深いですね(CIAの専門家の記事の引用らしい)。昔のミステリーでは恋愛のもつれが動機になり事件解決後に誰かさんと誰かさんが結婚してめでたしめでたしという締めくくりが珍しくなかったですが、最近のミステリーではほとんど見なくなったように思います。

No.17 4点 ロシアン・ティーと皇帝の至宝- ローラ・チャイルズ 2017/12/22 09:35
(ネタバレなしです) 2016年発表の「お茶と探偵」シリーズ第17作のコージー派ミステリーで、英語原題の「Devonshire Scream」は12章でドレイトンが説明しているデヴォンシャー・クリームにひっかけています。扱われているのは普通の殺人事件ではなく宝石強盗です(しかも集団犯行)。巻き添えで死者も出ますが被害者は登場人物リストに載せてもらえないというあまりな仕打ちです。とてもアマチュア探偵が手を出すような事件に思えないところは「アール・グレイと消えた首飾り」(2003年)を髣髴させますが、セオドシアは根拠薄弱な理由で容疑者を増やしていきます。FBIまで捜査に参加しますが、これに不満なティドウェル刑事がいつになくセオドシアに協力的な態度ですね(笑)。盗み聞きに家宅不法侵入と違法な捜査を繰り返すセオドシア、最後はおとり捜査まがいのことまでやってます。今回はとても名探偵とは思えませんが、それでも事件が解決されるのはとてつもない強運なのか犯人グループがあまりにお馬鹿なのでしょうか(ほとぼりが冷めるのを待つことができないのか)?

No.16 5点 アジアン・ティーは上海の館で- ローラ・チャイルズ 2017/02/16 08:54
(ネタバレなしです) 英語原題が「Ming Tea Murder」の2015年発表の「お茶と探偵」シリーズ第16作のコージー派ミステリーです。チャールストンにわざわざ移築された18世紀の中国の茶館で起こった殺人事件にセオドシアが巻き込まれます。アジア風を意識した演出はそれほど強くなく、どちらかといえば後半の大人のハロウィーンの雰囲気の方が印象に残りました。コージー派らしく謎解きはあっさり目ですが、それでもセオドシアが動機だけでなく手段(凶器)についても捜査しているのがこのシリーズとしては珍しいです(少々中途半端になってしまいましたが)。サスペンスの盛り上げ方もなかなかで、近作ではおなじみになりましたがセオドシアの犯人追跡シーンも劇的です。最後にちょっと危ない場面がありますが意外な人が助けてくれましたね。

No.15 5点 グリーン・ティーは裏切らない- ローラ・チャイルズ 2016/09/05 00:51
(ネタバレなしです) セオドシア・ブラウニングを探偵役にした「お茶と探偵」シリーズの2002年に発表の第2弾です。アマチュアゆえやむを得ないところはあるのですが例によって動機探しが探偵活動の中心となり、具体的な証拠となるとかなり後半にならないと出てこないし、しかもコージー派によくありがちな(推理の不十分な)パターンで犯人が明らかになります。とはいえ風景や小物類の描写にセンスの良さを感じさせる文章力は心地よく、午後のお茶を飲みながら優雅に読書を楽しむのには好適の一冊だと思います。

No.14 5点 イングリッシュ・ブレックファスト倶楽部- ローラ・チャイルズ 2016/07/20 04:51
(ネタバレなしです) 「お茶と探偵」シリーズも2003年発表の本書でシリーズ4作目になりますが作品の質という点では過去3作品と同じレベルで安定しており、シリーズファンなら安心して読めると思います。この作者の優雅な文章表現は個人的に大好きな部類に入るのですが謎解きが相変わらずなし崩し的解決に終わってしまうのはもう少し何とかならないかなあ。犯人が誰でもよかったように思ったのは私だけでしょうか(笑)。

No.13 5点 ロンジン・ティーと天使のいる庭- ローラ・チャイルズ 2016/07/15 12:10
(ネタバレなしです) 2007年発表の「お茶と探偵」シリーズ第8作で、18章や終盤ではアクションシーンがやや目立っているもののコージー派の気楽に読める雰囲気は損なわれていません。前ぶれ的な推理もなく犯人の正体が唐突に判明してそこからばたばたと真相が明らかになる展開は謎解き好き読者には不満も多いでしょうが、このシリーズはどの作品も解決パターンが似たり寄ったりなのでそこはあきらめましょう(笑)。

No.12 5点 ブラッドオレンジ・ティーと秘密の小部屋- ローラ・チャイルズ 2016/07/02 09:07
(ネタバレなしです) 2006年発表の「お茶と探偵」シリーズ第7作です。このシリーズはどうもミステリーとしての感想が書きにくく、今回はお茶よりも料理の描写の方が印象的だったとかセオドシアが激昂しているのが珍しいとかティドウェル刑事が(口調は相変わらずぶっきらぼうだが)粋な計らいを見せたとか謎解き以外の部分ばかり記憶に残っています。ほんと、これでもう少し謎解きがちゃんとしていればねえ...(笑)。

No.11 5点 ホワイト・ティーは映画のあとで- ローラ・チャイルズ 2016/06/24 08:26
(ネタバレなしです) 2008年発表の「お茶と探偵」シリーズ第9作で、シリーズ作品の中でもサスペンスに富み事件解決場面もアクション豊富です。セオドシアのロマンス描写もこれまでになくたっぷりと描かれています。もっとも私はこのシリーズの優雅で繊細な雰囲気が好きなので今回のやや派手目な演出には少々違和感を感じましたが。

No.10 4点 カモミール・ティーは雨の日に- ローラ・チャイルズ 2016/06/04 04:20
(ネタバレなしです) 2005年発表の「お茶と探偵」シリーズ第6作で、ランダムハウス文庫版の巻末解説ではこれまでの作品とは違うように評価していますが謎解きとしては特に変化は感じません。強いて挙げるなら容疑者数が少ないので早い段階で犯人の見当がつきやすいことでしょうか。セオドシアの日常の人間関係に関しては前作「ジャスミン・ティーは幽霊と」(2004年)を読んだ人はちょっと驚くかもしれない変化が起きていますが、問題の人はドレイトンやヘイリーに比べると影が薄かった人物なので正直どうでもよかったです(笑)。

No.9 5点 プラム・ティーは偽りの乾杯- ローラ・チャイルズ 2016/05/29 09:31
(ネタバレなしです) 2014年発表の「お茶と探偵」シリーズ第15作はワイナリーのワイン試飲会で死体が見つかる事件を扱い、ワインに関する描写があるのが特長ですがやはりこのシリーズならではのお茶に関する描写の方に力が入っているように思います。今回は依頼人と親しい関係にあるためドレイトンもセオドシアと一緒に(少しだけですが)探偵活動に参加してますが、質問が露骨過ぎて容疑者を怒らせたりと空回りしています(笑)。24章で真の動機と真犯人に気がついたセオドシア、あまりに強引な証拠の確認(失敗したら大問題です)から逃げる犯人の追跡まで怒涛の勢いです。ここ数作での派手な追跡シーンは作者のお気に入りパターンになったんでしょうか?

No.8 5点 ジャスミン・ティーは幽霊と- ローラ・チャイルズ 2016/05/26 15:22
(ネタバレなしです) 「ゴースト・ウォーク」が開催されたジャスミン墓地で殺人が起きる、2004年発表の「お茶と探偵」シリーズ第5作です。マンネリと言えばマンネリですがお茶や菓子の魅力的な描写、ユーモア溢れる軽妙な会話、そして物足りない謎解き(笑)がお約束のごとく読者に提供されています。これまでも推理よりは幸運(?)で真相に到達しているセオドシア、名探偵としての評価がどんどん高まっていてシャーロック・ホームズ扱いですね。これだけ死体に遭遇していたらむしろ死神扱いされてもおかしくないのではと突っ込みたくなります(笑)。

No.7 5点 ウーロンと仮面舞踏会の夜- ローラ・チャイルズ 2015/10/12 23:48
(ネタバレなしです) 2009年発表のお茶と探偵シリーズ第10作のコージー派ミステリーで、(巻末解説で紹介されているように)真相の意外性という点ではこれまでのシリーズ作品で上位に位置づけられると思います。しかしながら謎解き手掛かりが十分に提供されていないプロットでは意外というよりも唐突感の方が強く、本格派推理小説ファン読者の支持は集めにくいかも。セオドシアのロマンスが思わぬ雲行きになっているのが新鮮で、ストーリーにサスペンスを与えています。もっともこれまでのシリーズ作品を読んでいないと効果は半減かも。

No.6 5点 スイート・ティーは花嫁の復讐- ローラ・チャイルズ 2015/07/21 01:43
(ネタバレなしです) 2013年発表のお茶と探偵シリーズ第14作のコージー派ミステリーです。「オーガニック・ティーと黒ひげの杯」(2011年)でセオドシアは犯人を追い回していましたが、本書でもまたまたティドウェル刑事の制止を聞かずに犯人を追跡しています。本書でのセオドシアは名探偵とは到底思えないのですが、作中人物たちはすご腕の素人探偵と大絶賛です(笑)。まあ終わりよければ全てよしというのがコージー派では定番ではあるのですが。

No.5 4点 ローズ・ティーは昔の恋人に- ローラ・チャイルズ 2014/09/23 13:11
(ネタバレなしです) 2012年発表のシリーズ第13作です。謎解きは大いに問題ありで、第17章ではセオドシアが謎解き伏線を思い出そうとしている場面があり、最後にそれは明らかになりますがとても証拠といえるような有力なものではなく拍子抜けです。これならいくらだって他の人間を犯人としてこじつけることが可能でしょう。珍しいのは終盤に唐突にホラー風な演出があること。「ジャスミン・ティーは幽霊と」(2004年)よりも不気味な雰囲気となっています。あと謎解きとは関係ないのですが、日本語タイトルのローズ・ティーってどこかで描かれていましたっけ?(英語原題は「Agony of the Leaves」です)

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nukkamさん
ひとこと
ミステリーを読むようになったのは1970年代後半から。読むのはほとんど本格派一筋で、アガサ・クリスティーとジョン・ディクスン・カーは今でも別格の存在です。
好きな作家
アガサ・クリスティー、ジョン・ディクスン・カー、E・S・ガードナー
採点傾向
平均点: 5.44点   採点数: 2813件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(80)
アガサ・クリスティー(57)
ジョン・ディクスン・カー(44)
エラリイ・クイーン(42)
F・W・クロフツ(31)
A・A・フェア(28)
レックス・スタウト(26)
ローラ・チャイルズ(24)
カーター・ディクスン(24)
横溝正史(23)