皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
miniさん |
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平均点: 5.97点 | 書評数: 728件 |
No.6 | 6点 | ママ、死体を発見す- クレイグ・ライス | 2015/07/24 09:58 |
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本日24日に原書房ヴィンテージミステリとして、クレイグ・ライス「ジョージ・サンダース殺人事件」が刊行される
原書房ヴィンテージはここ暫くはマイナー作家の刊行が続いていたが、クェンティン、ライスとメジャー作家に戻った感じだ、ただし両者とも本来は別名義作品だけれど クレイグ・ライスには出版契約事情なのかいくつかの別名義が存在し、例えばマイケル・ヴェニング名義のメルヴィル・フェアものなどは、ライスの別の面が垣間見えるシリーズとしてちょっと話題になった しかしライスの別名義の話題性では何と言ってもジプシー・ローズ・リーとジョージ・サンダース名義の2つである この両名義には共通点が有る、それは2人とも実在の人物であり、そのゴーストライティングが新垣、じゃねえよライスだと言われているのだ ”言われている”と微妙な言い回しなのは、100%完全な情報ではないからだが、まぁ業界ではライス代作説が通説となっているのである ライスがちゃらんぽらんな性格だったのは有名だが、実は森英俊氏の解説を読んで初めて知ったのだが、紛失したりとかライスのいい加減な契約書の管理が原因で、作者没後になかなか本国アメリカでも復刊されなかったのはそういう権利関係の事情が有ったらしい、ライスは当時の人気作家で決してマイナー作家だったのが理由じゃないのだ 今回原書房から出たのは、実在した俳優ジョージ・サンダースが書いたという建前のライスの代作品(そういう事になっている)で、おそらく売らんがための話題性作りで、当時のアメリカの出版事情が偲ばれる もう1つの、いやサンダース名義以上の話題性だったであろうのが実在した伝説のストリッパー、ジプシー・ローズ・リーの代作である、その第1作目が汎書房で昔に出た「Gストリング殺人事件」で、シリーズ第2作目が以前に論創社から出た「ママ、死体を発見す」だ これも森氏の解説を読んで初めて知ったのだが、ライス代作説には反対意見も有るみたいで、その辺の事情が詳しく書かれている ただ私がこの作を読んで受ける印象では、これ書いたの絶対ライスでしょ!、こんなの書けるのライスしかいねえよ 題名にもあるけど序盤なんかママに振り回されてローズ・リーの存在感が霞むくらい、ドタバタ劇と謎解きとの絶妙なバランス、やはりいつものライス節だよなぁ また真犯人は私は見破ったのだが、それというのも私がライスのいつもの犯人隠蔽パターンを知っていたからだ 翻訳権利上の問題も有るのかも知れないが、中古市場でも入手が難しい「Gストリング」の新訳復刊を各社御検討願いたい |
No.5 | 5点 | わが王国は霊柩車- クレイグ・ライス | 2015/03/16 09:57 |
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「わが王国は霊柩車」はライスの没年と同じ年に発表された作者最晩年の作の1つ、ただし遺作ではない
後に同年発表の「マローン御難」があるし、亡くなった翌年には未完の遺稿をエド・マクベインが補完した「エイプリル・ロビン殺人事件」があるからね ライスは都会的な雰囲気の中で錯綜したプロットをテンポ良く読ませるのが持ち味だ 一般的なミステリー作家、特に本格派系だと初期には複雑なプロットなものを書いていても中後期になるに従いプロットが単純化されてくる例はよくある しかしライスの場合は最晩年になってもプロットの複雑さがあまり変わらない、いやそれどころかこの「わが王国は霊柩車」になると複雑さが増している感さえある、まぁテンポは若干緩やかになったかな感は有るが 問題はプロットが複雑なのは作者の仕様だから良しとして、ちょっとグダグダ感が有る事だ、複雑なのに緻密な感じがしなくてプロットの緩さを感じるのである そう考えると複雑なプロットの中にユーモアと緊迫感を両立させていた初期の「大はずれ」と「大当たり」の2作はやはり傑作だったのだなと思わずにはいられない |
No.4 | 6点 | 暴徒裁判- クレイグ・ライス | 2014/07/04 09:57 |
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先月27日に論創社からサッパー「恐怖の島」とパーマー&ライス「被告人、ウィザーズ&マローン」が同時刊行された
後者はS・パーマーとC・ライスの合作による短編集で”クイーンの定員”にも選ばれている 今回出た「被告人、ウィザース&マローン」も入手済なので夏中には書評をupしたい 本音を言えば便乗企画はパーマーでやりたかったけど、まぁアンソロジーなどに収録の断片的な短編は除くとパーマーの日本での書籍はたった1冊しかないので仕方ないよね 日本では不遇のパーマーに対してライスは翻訳には恵まれている、絶版も多いけどそれほど中古市場で入手難ではないし この「暴徒裁判」もどちらかと言えばマイナー作の部類だろうけどこのあたりの作も翻訳されるんだから恵まれている方の作家だと思う、マローンもの以外の別シリーズも紹介されているし 「暴徒裁判」はいつものシカゴを離れてローカルな舞台設定である シカゴから離れるという点では「素晴らしき犯罪」と共通しているが、あちらは舞台が大都市ニューヨークなのに対してこちらは田舎町的な設定でシリーズ中では珍しい だからライス独特の大都会に埋もれるペーソスみたいなものが欠けているのだが、それでも湿ったユーモアが良い味を出していてあまり違和感がない この点で大都会ニューヨークを舞台にしているのに、その乾いたユーモアが空回りしてる感の有った「素晴らしき犯罪」よりも雰囲気的には好きだ ただし純粋に謎解き的な要素だけなら「素晴らしき犯罪」の方が上かも知れない、でも「暴徒裁判」も悪くないと思う 全体として当サイトでのnukkamさんの御書評通りで私の拙文が付け加える要素は先に述べた「素晴らしき犯罪」との比較論くらいであまり有りません |
No.3 | 5点 | 素晴らしき犯罪- クレイグ・ライス | 2011/10/24 09:54 |
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明日25日発売予定の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”ユーモア・ミステリ遊歩 クレイグ・ライス/ウッドハウス/カミ”
便乗企画として私的に遊歩してみるか、似た作風のシャタックを書評したついでに第2弾はクレイグ・ライスだ ユーモアミステリーと言ったら真っ先に名前が挙がる第一人者クレイグ・ライス しかし「素晴らしき犯罪」の舞台はいつもの手馴れた本拠地シカゴではなくてニューヨークへ出張、これが微妙にいつもの雰囲気と違っている なんてーかさぁ、ライス独特の湿った感じが無くて、そりゃ普段から能天気な主人公達だけど今作は特にそれを感じる 得意のユーモアも、ますだおかだの岡田のギャグみたいに上滑りだしなぁ閉店がらがら ユーモアの中にも独特の陰影があるのがライスの良さなのに、ただ明るいだけなんだよね、やはり「大はずれ」が傑作過ぎるのか「素晴らしき犯罪」はちょっと落ちる、シカゴとニューヨークという舞台の違いなのかなぁ、それとも翻訳者が小泉喜美子なのも原因か ただ謎解き面だけなら「大はずれ」「大あたり」に比べて「素晴らしき犯罪」も決して引けは取らない 真犯人の設定なども、あまり見た事が無い独特のテクニックがあって、ライスの持ち味を考慮しなければ普通に本格としては名作だろう それにしても小泉喜美子の訳はこなれてない直訳調が読み難くてあまり好きな訳文じゃないな |
No.2 | 7点 | こびと殺人事件- クレイグ・ライス | 2009/04/23 10:17 |
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マローンものは早川と創元とで、数的比率では六四くらいな割合で刊行されているが、両社のラインナップを見ると
創元には短編集があるが、「大はずれ」「素晴らしき犯罪」など美味しいところは皆早川が持ってっちゃったよな 非シリーズだが「スイート・ホーム」も早川だし 劣勢の創元にあって、「大はずれ」クラスには対抗できなくても、そこそこ早川に対抗できる手駒が「こびと殺人事件」だ 「こびと」は、傑作「大はずれ」に比べると謎解き面での真相がやや平凡で弱い しかし都会の夜のナイトクラブの風景とか、シリーズ中でもドタバタ騒ぎが出色だとか、作者の持ち味が良く出ている点などを考えると、もっと評価されて良い力作と思う 個人的には早川の「素晴らしき犯罪」などよりも「こびと殺人事件」の方が好きだけどな |
No.1 | 4点 | セントラル・パーク事件- クレイグ・ライス | 2009/03/22 11:27 |
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ライスと言うとマローン弁護士だが、実は創作活動の最盛期にマローンものと並行していくつかの他のシリーズを、複数の出版社との契約の問題もあったのだろうか別名義で書いている
伝説のストリッパーの代筆とも言われるジプシー・ローズ・リー、国書刊行会が出して再評価されたメルヴィル・フェア、そして街頭写真師ビンゴ&ハンサム 「セントラル・パーク事件」はビンゴ&ハンサムのシリーズ第1作で、雰囲気も物語展開もマローンものに近い でもやはりニューヨークよりも本拠地シカゴを舞台にしたマローンものの方が作者の本領発揮だよなあ 不満なのは頭の回転は少々鈍いが驚異的な記憶力を誇るハンサムの現実離れした人物造形 これってさ、本来なら地道に調査して得られる過去の情報を、面倒くさいからハンサムに全て思い出させようとする、言わば作者に都合のいい手抜きじゃないの この手法がどうも好きになれず、内容は5点以上は付けられるけど不満の意味を込めて4点とさせていただく |