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makomakoさん
平均点: 6.18点 書評数: 861件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.30 6点 あなたの隣にいる孤独- 樋口有介 2021/07/11 13:15
 このお話は途中でとても意外な展開となり、主人公たちが追いかけられている相手も全然予想外。こういわれると本格推理小説と思われますが、そういった感じはほとんどありません。
 息もつかせぬ青春ミステリーと裏には書いてありますが、そういった感じは希薄で、私にはかなり変わった日常生活のお話といった感じでした。
 意外な展開なのに推理するといった要素が希薄で、結構な犯罪なのに日常の謎程度にしか感じない。まあこれはこれでよろしいのですが。
 個人的に好みの作者であり世代も同じため、読んでいて悪くはなかったが、まあ普通だった。インパクトが少ないなあ。作者も私も歳をとってきたせいかもしれません。

No.29 6点 平凡な革命家の食卓 - 樋口有介 2021/06/12 20:56
この作品は初めのうちはちょっといつもの樋口氏の雰囲気と違うと思っていたら、だんだんいつもの軽妙なそして女性が魅力的な展開となり、途中からは私の好きないつもの調子となったので、愉しく読めました。
作者は警察小説が嫌いとのことですが、これって警察小説だよねと思っているうちに、主人公の卯月はどんどん警察官の枠を飛び出しナンパされるわ、その男が好きになってすぐ寝てしまうわ、となかなか面白いこととなります。
続編も出ているとの事なので読んでみましょう。

No.28 6点 風景を見る犬- 樋口有介 2019/07/06 14:51
 推理小説としてはかなり弱い。
 確かに殺しも意外な犯人もちょっとしたどんでん返しもありますが、伏線を張って推理をするといったタイプの小説ではありません。
 沖縄の風物と人間を描いていくといった方向に傾いています。
 主人公はまだ高校生で、青春小説といえばそういった方向でもあります。
 樋口氏の小説らしく高校生らしからぬ洒落たトークにあふれていますが、そこにはそこはかとなく寂しいところが感じられます。
 いい感じなのですが盛り上がりに乏しいところもあり、全体としてちょっと長すぎる感じがしました。

No.27 6点 少女の時間- 樋口有介 2019/06/26 21:55
 このシリーズも10冊を超えたのだが、柚木草平はあいかわらず38歳のままです。
 今回はことに美女がたくさん出てくる。洒落た会話を楽しむのもこのシリーズの楽しみなのですが、本作品は初めのところはちょっとやりすぎの感があります。「どうせ」といった言葉がちょっと出過ぎかな。
 お話は本格推理小説としては多少弱いが、でも楽しく読めます。
 冴子警視正が出世してついに別れとなりそうな代わりに実に個性的な美女が登場。当然怪しい関係となる。
 うーん大変だが羨ましくもある。
 次の作品もきっと読んでしまいそう。

No.26 6点 遠い国からきた少年- 樋口有介 2018/07/16 10:42
 風町サエは「猿の悲しみ」で登場したキャラクターと思いますが、シリーズ化されていくようで今回もサエのお話。
 作者の作品のお楽しみの一つとして、ちょっとした合間に出てくる風景描写があるのですが、猿の悲しみではそれがちょっと不足気味で物足りなかった。それが本作は十分味わえました。
この作品は初め「笑う少年」と題していたのをこの題名としたものともことです。本作の題名のほうがずっと良いなあ。
 相変わらずサエは強くてある意味かっこよいが、私の好みとしては男の主人公のほうが作者の本領を発揮するような気がしています。

No.25 5点 雨の匂い- 樋口有介 2015/07/03 19:07
 これは純粋な推理小説ではないが、読んでいくと最終的には相当に怖い話でした。樋口氏の洒落た会話(解説によるとこういうのをワイズラックというのだそうです)に満ちているのですが、これはちょっとやりすぎの感がありました。
 氏の小説では、段落の初めに花鳥風月の描写が巧みに入れ込んであるのですが、この作品ではちょっと過剰に感じました。ここまでやると読むのが多少面倒になってしまうのです。
 登場人物に温かみが少なく、冷たい話を巧みな表現で語るといったところなのでしょうが、私の好みからはやや外れていました。

No.24 6点 刑事さん、さようなら- 樋口有介 2015/06/13 18:36
 軽妙な語り口で描かれていますが、内容は警察の不正に対する相当な抗議を含んだお話となっていました。
 二つの話が全くかみ合いそうもないと思っていたら、きちんとそのあたりはかたはつく。題名も最後になってなるほどということとなる。ミステリーとして問題ないのだが氏の小説としては読んでいてもう一つであったことは否めませんでした。

No.23 6点 風の日にララバイ- 樋口有介 2014/12/26 21:36
 この作品は柚木草平シリーズに先立って発表されたものということですが、なるほど柚木シリーズによく似た色合いがあります。ただしこちらに主人公は変な発明はしているようだが、ほとんどプータローなのになぜか金持ち。柚木と同様良い女が寄ってきて気の利いた会話をして、なぜかよくもてる。勿論ミステリーなので謎も殺人も起きるのだが、それよりも登場人物たちの軽妙な会話にどうしても目が行ってしまいます。
 作者は主人公の佐原旬介をシリーズ化しようとも考えたらしいけどやはり柚木草平のほうがよいなあ。だいたい金持ちで怠け者でしかも女にもてるより金がなくてピーピーいっている主人公のほうが共感が持てますよ。

No.22 6点 片思いレシピ- 樋口有介 2014/08/17 14:09
 柚木草平シリーズの番外編。このシリーズを読んでなくても十分楽しめるとは思いますが、やはり一つでもこのシリーズを読んでからのほうが楽しみは大きいと思います。途中で「木野塚探偵事務所だ」の話なんかも出てきて笑わせます。
 推理部分は大分隅に追いやられ、パパがちょっと動いたらたちまち解決。少し物足りない。
 まあこのシリーズのファンが読めば楽しいことは間違いないです。

No.21 6点 ともだち- 樋口有介 2014/07/27 08:50
 登場人物それぞれのキャラクターは立っているのだが、もうひとつインパクトが少ない。助平な剣豪爺さん、恐ろしく強い女子高生、絵の天才男子高生、ちゃらちゃらだが実は財閥のお嬢様などなどサービス満点、しかも意外な展開で終了と読んでいて面白いはずなのだが、どうもいまいちピンと来ない。
 作者は人物をそれとなくしかも巧みに描く名手と思っているが、本作品の登場人物はどうもうまく絡んでいない。剣豪女子高生のさやかだけが際立って目立ったいるように感じます。しかも強すぎ。ここまで強いと漫画チックに思えてしまいます。
 樋口氏は「どうせ」という言葉をよく使います。ことにこの作品にはこの「どうせ」が多い。主人公が中年のシリーズでは極めて良い効果があるのですが、高校生が主体の作品にこれ程「どうせ」がでてくるとえらく虚無的になってしまい、若者たちのキャラとマッチしなくなってしまう。
 文句を色々つけましたが読んで不快な作品ではなくまずまずの出来なのです。ただファンとしては作者にはもっと素敵な作品が書けるに違いない。期待しているのです。

No.20 7点 探偵は今夜も憂鬱- 樋口有介 2014/07/13 07:37
 柚木草平シリーズの第3弾。3つの中編連作となっておりいずれも美女が出てきて、柚木はそれに翻弄されつつ事件を解決?するお話。
 こういってしまうと身もふたもないのだが、中身は濃い。この手の話としてはちょっと濃過ぎるようにも思えたが、作者のあとがきに「自分は短編は苦手でこの話も長く書きすぎて編集者から短く削れといわれた。」とあり納得。
 樋口氏の小説は何気ない風景描写と粋な会話が大きな魅力なのだが、それがぐんと濃縮されているので濃すぎるコーヒーを飲んだ感じでした。
 なかなかおいしいのだが、ちょっと胸につかえるといったところでしょうか。好きなシリーズなので評価は少し甘いけど。

No.19 8点 木野塚探偵事務所だ- 樋口有介 2014/06/27 17:56
警視庁を定年退職した木野塚氏が唯一の趣味であったバードボイルド探偵を目指して探偵事務所を開く。警視総監賞まで受けているのでが、実は経理一筋で警察行為は全くないが、人生残り少ないのだから思い切りやりたい仕事をやるつもりだが、なかなか現実はそうはいかない。といったお話。
面白い。徹底的にハードボイルド探偵を茶化しているのだが作者特有の表現が効いていて楽しく読めた。
次作を期待しています。

No.18 5点 夢の終わりとそのつづき- 樋口有介 2014/06/22 07:52
作者によるとこの作品は20歳代に書いた「ろくでなし」を柚木シリーズとして改稿したものとのこと。
かなりとんでもないストーリーが展開する。いい女も出てくる。いつも以上に柚木は洒落た会話を連発する。でもここまでやるとちょっとやりすぎ。作者もきっと承知で書いているに違いないが、若いころのなつかしさをどうしても残したかったのでしょう。

No.17 6点 猿の悲しみ- 樋口有介 2013/06/30 09:26
 お気に入りの樋口氏の新作ということで早速購入。相変わらず文章はテンポが良くなのだが、なんだか違和感がある。今までの氏の作品では話の合間に微妙な季節感のある描写があり、これがまた楽しいのだ。ところが本書ではそういった描写はあるのだが、自然に対する文章がすっかり抜けている。人工的なものの文のみではなんだか寂しい。登場人物の洒落た会話も以前の作よりはかなり低下している。
 主人公のサエはヤンママで殺人の過去があり、とこれまた極端な設定ではあるが、氏にはホームレスの元刑事もあったりしたこともありそれほど違和感はない。作者の女性体験が豊富になるにつれ?女性に対する目はさらに冷えてきているようです。同世代の男として良く分かるけどもうちょっとやさしい女の子もいてほしいなあ。
 それにしてもサエは強すぎるねえ。女でこれほど強い状態を維持するのなら毎日練習に励んでいないと無理そうですが--。まあ天才なのでしょう。

No.16 6点 不良少女- 樋口有介 2012/12/11 23:02
 柚木草平シリーズの短編集。最初の「秋の手紙」は結論がどうもはっきりしない。連作集とのことなのであとで何とか分かるかと思ったが、話は全くつながっておらず結局不明のまま。ちょっともやもやしている。「薔薇虫」はまずまずだけどなんか文章がくどい感じとなったなあと思っていたら、つぎの「不良少女」からなんだかすっきりしてきた。あとがきをみたら作者が文体を変えたとのこと。ーーなるほど。
 それでも樋口氏の小説はどれを読んでも同じようだという評判は時々耳にする。登場人物の会話に独特のシャイと粋があるせいと思っていたが、この連作を読んで気づいたのだがちょっとした切れ目の先端には必ずといってよいほど花鳥風月の描写が入る。わたしは素敵だと思うのだが、いつもおんなじ様な描写と感じる人もいるのかも知れない。

No.15 8点 夏の口紅- 樋口有介 2012/12/06 21:30
 この作品は純粋なミステリーではない。一応謎は呈示され解決もするのであるが、本格もののような謎解きを楽しむものではない。氏独特の雰囲気と青春の空気を味わうといった趣の内容。
 解説によると樋口氏が一番書きたいものをというリクエストに答えた作品とのことである。なるほどと納得できるできばえ。
 読後感もよく素敵な小説です。

No.14 7点 魔女- 樋口有介 2012/11/07 20:58
本格推理としてはちょっと弱い。伏線は張ってはあるが、この展開で犯人を理論的に指摘することはまず無理でしょう。多分作者は本格者というより文学とミステリーを融合させた作品を目指しているのではないかと思います。そういった目で見るとなかなか素晴らしい。文章は相変わらずうまく話の展開も興味深いものがある。
 樋口作品の楽しみのひとつとして登場人物(ことに女性)が魅力的であることが挙げられると思います。本作品でもみかん(女の子の名前です)や瑞穂などはとてもユニークです。瑞穂などは現実にお付き合いするのは願い下げではあるが、本の内でなら楽しい。

No.13 7点 月への梯子- 樋口有介 2012/11/01 21:47
本格推理としてはちょっと甘いが、好きな小説です。樋口氏は推理小説は文学性を犠牲にしてもプロットとトリックという姿勢はとらないようで、ちょっとした切れ目に必ず美しい描写が入り、それがとてもよい雰囲気をかもし出す。作者は近年の作品になるほど洒落た会話に加えてこういった素敵な文が入り、読んでいてとても気分が良い。
 本作品は登場人物もとんでもない人が大半であることが分かってくるのだが、決して感じが悪くなくやさしい内容であることが好ましい。
 最後は結構ひねりが効いており読後感も悪くない。

No.12 8点 枯葉色グッドバイ- 樋口有介 2012/10/19 08:03
 樋口氏の小説はいつも無頼(古い!)な感じと、暖かさと皮肉と洒落たセンスが感じられ、ストーリーよりそちらの方面に惹かれて読んでしまうこともあるのですが、この作品はかなりしっかりと筋書きだててあり、作者のも述べているように終わりまできっちり書かれている。
 主人公がホームレスまで落ちぶれた敏腕警官というのもちょっと極端な設定に思えますが、読んでいくとぜんぜん気にならなくなる。
 ストーリも二転三転して最後はきっちりとどんでん返しとなっており、この作者らしく無謀に走りやすい吹石夕子にもちゃんとお手柄をあたえているのがなんとも優しい。
 ちゃんと終わりまで書いてくれたので文句は言えないのだが、これはこれでちょっとくどい感じというのは読者のわがままでしょう。
 とにかくとてもよかった。

No.11 5点 ベイ・ドリーム- 樋口有介 2012/07/08 11:54
 作者の小説は独特のユーモアと巧みな文章表現が楽しめるのだが、内容が政治的なものや環境問題を取り上げるようなものにはあまり向かないのかもしれない(わたしが好きでない?)。
 この作品も環境問題をテーマとしているのだが、読んでいてどうもあまり楽しくないのだ。「楽園」が作者のひそかな代表作と本人の言葉にあったが、わたしにとっては「楽園」の次ぐらいにダメでした。
 悪くはないのだけどね。良くもないのだなあ。

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makomakoさん
ひとこと
歴史ミステリーや、本格物が好きです。薀蓄も結構好き。変人が登場するのは嫌いではないが、冷たい人間が出てくるのは肌に合いません。外国ものは登場人物が理解不能であったり翻訳文が合わないことが多くあまり得意で...
好きな作家
鮎川哲也、山田隆夫、綾辻行人、法月綸太郎、高田崇史、伴野朗
採点傾向
平均点: 6.18点   採点数: 861件
採点の多い作家(TOP10)
高田崇史(34)
樋口有介(30)
有栖川有栖(29)
アガサ・クリスティー(29)
東野圭吾(28)
太田忠司(27)
東川篤哉(25)
北森鴻(24)
今邑彩(17)
米澤穂信(17)