皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ロビンさん |
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平均点: 6.56点 | 書評数: 130件 |
No.4 | 9点 | 死せる案山子の冒険- エラリイ・クイーン | 2009/04/25 19:47 |
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クイーンのラジオドラマ集第二段。
初期国名シリーズの頃のパズラー色が強かった前作に比べ、本書はより中期よりの作品傾向が目立ちます。 後期クイーンの悪癖とも言うべきダイイング・メッセージ物はパッとしませんが、クイーンファンならば楽しめる要素のある作品は多いです。 クイーンが新作として考えていたプロットが、先に発表されてしまった『そして誰もいなくなった』と同じだったためにボツになった話は有名ですが、本書の『生き残りクラブの冒険』は、その幻の原案が採用されている、と解説者の方は予想しています。しかしこのアイディアでは、クリスティのほうがサスペンス性もサプライズ性も上だと思います。 国名シリーズ要素が多く詰まった表題作は、犯人指摘のロジックがスマートで、さすがと感心させられるが、案山子や雪だるまに関するホワイがあっけなさすぎるのでいまいち。 お気に入りは『姿を消した少女の冒険』なんと、クイーンにしては稀有な誘拐ものです。正直、現代人にはわかりやすい犯人ですが、中期の悲劇性が色濃く出ていることが大きなミスリードとなっています。これが登場人物が単なるパズルの1ピースであった初期ならばこういった作品は生まれなかったでしょう。そういった、初期、中期、後期と作風に違いが現れたクイーンを一度に味わえることが本書の醍醐味なのかもしれません。 |
No.3 | 10点 | ナポレオンの剃刀の冒険- エラリイ・クイーン | 2009/04/11 00:26 |
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アメリカで放送されたクイーンのラジオドラマのシナリオ集。解決編の前には「読者への挑戦」ならぬ、「聴取者への挑戦」が挿入されています。ラジオなので、物語は全て会話のみで構成されています。「ラジオドラマという制約の多い中で、これだけの作品を生み出せるクイーンは、やはり神」と法月氏が語っていましたが、僕も賛同です。
お気に入りは「殺された蛾の冒険」「呪われた洞窟の冒険」の二つ。 特に「呪われた洞窟の冒険」は、カーを彷彿とさせるようなオカルティズムと不可能犯罪。足跡密室のトリックは、他の作家では思いつきだけのバカミスになりかねないものですが、クイーンはやはり違います。幾重にも張り巡らされた伏線をロジックによってつなぎ合わせていく。その伏線の張り方が非常に巧妙で、それをラジオドラマという自由の利かない中でやってのける。正に初期の国名シリーズに引けを取らないパズル作品だと思います。さらにラストの趣向といったら、まんま「あの作品」と同じで、クイーン好きな方はついニヤリとしてしまうでしょう。「殺された蛾の冒険」は、これぞクイーンというアクロバティックなロジックを堪能できます。 聴取者に「解くことができる」という前提の下のラジオドラマでなく、小説の形式を取っていたら、もっと完成度の高い作品になっていたと思います。 正直、10点は甘すぎますが笑。久しぶりにクイーンの物語を堪能できたという喜びが多分に加味されています。 |
No.2 | 4点 | 最後の一撃- エラリイ・クイーン | 2008/11/12 23:13 |
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読み逃していたクイーンの最後の長編。ようやく手に入れることができた。嬉しい。
が、まいったなぁ。この作品をラストにすべきでなかった。 確かに構成に関しては、「中年になったエラリイが、『ローマ帽子』の頃の解決できなかった事件に、三十年のときを超えて解決をもたらす」という集大成的に仕上がっていて、もちろんその出来も……と期待したのに。 最初の被害者が殺される必然性がないこと、わざわざあんな面倒くさいレッド・へリングを施したのにそれがさほど利いていないこと。論理的ではあっても(?)、あんなのはフェア・プレイじゃない。 自分の中のクイーンを取り戻すために、久しぶりに国名シリーズでも読み返してみようかなぁ。 |
No.1 | 7点 | ハートの4- エラリイ・クイーン | 2008/09/16 02:59 |
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読み逃していたクイーンの長編。これであとは『最後の一撃』だけだ!(だけどなかなか手に入らない……)
ハリウッドシリーズは、描写や物語展開もエンタテイメント的。その点は読んでいて面白い。そしてエラリイが女に弱すぎ笑(このへんから、後のニッキーの登場が伺える) 本筋とは別の小さな仕掛けが重なって、事件を複雑にしていくという設定は好き。何より、「あの人物」と「犯人」が別人だったとは驚き。それを導き出し、犯人を指摘するロジックもシンプルで明確。ただ、国名シリーズに比べると物足りない感は否めないなあと。 |