海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 社会派 ]
プライド
真山仁 出版月: 2010年03月 平均: 7.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


新潮社
2010年03月

新潮社
2012年09月

No.1 7点 E-BANKER 2012/11/25 20:41
「ハゲタカ」シリーズでお馴染みの作者が贈る社会派で硬派な作品集。
社会問題の深層に潜む、現場の人々の一筋縄ではいかない思いに光を当てた極上フィクション!

①「一俵の重み」=主人公は「コメ博士」の異名をとる農水省の官僚。コレは読んでて涙が出てきた! 日本のコメ作の明日を想い、こんなにも熱く自身の職務に誇りを持つ男・・・こんな奴になりたい!でもなかなかこうはなれない・・・ということで、働くことへの矜持を揺さぶる作品。作中に出てくる事業仕訳の女性議員のモデルって、もちろん蓮○のことだよな。
②「医は」=主人公は教授の医療ミスの責任を取らされ大学を追われた外科医。抜群の腕を持つ男が、旧友だったはずの男に裏切られたことを知ったとき・・・まさに「医とは?」。ラストは突然終息。
③「絹の道」=シルクロードではない。主人公はプロ野球の元投手。引退し田舎の役場で働く男の前に謎の美女が現れる。そして始まった天然の蚕による養蚕。本作で矜持を示すのはこの女性なのだ。
④「プライド」=有名菓子メーカーの工場で起こった内部告発。賞味期限切れの牛乳を原材料に使用したとの告発なのだが、犯人として名乗り出たのは、何と菓子工場にこの人ありと言われた職人だった・・・。この職人が示すプライドとはまさに「人間性」そのものだな。
⑤「暴言大臣」=これはちょっとブラックな風味。常に歯に衣着せぬ発言を繰り返す大臣と、その妻で優秀な外交官。理想の夫婦と思われた2人なのだが、実はその裏側に・・・
⑥「ミツバチが消えた夏」=主人公は戦場カメラマンから養蜂家に転身した男。ある日、彼や周囲の養蜂家たちが育てていた働きバチが一斉に消えるという怪事件が発生する。その理由、原因とは? これも日本の農政の不備なのだろうか?
⑦「歴史的瞬間」=これは掌編。相当皮肉が効いてる。

以上6編+1。
全ての働く男たちに是非とも読んでもらいたい作品。
あとがきで作者は、日本人一人一人の矜持が脆くなってしまっているのではないかという危機感に触れているのだが、それが本作執筆の動機になっているのは確か。
あまり難しいことを書くつもりはないが、とにかく自身の仕事・職務に矜持を持てるかどうかという問いかけなのだと思う。

個人的も日常のルーチンに流されやすいところがあるが、たまにはこんな青臭いことを考えてもいいなということに気付かされた・・・そんな読後感。
(とにかく①は絶品。①だけでも読む価値ありという評価)


キーワードから探す
真山仁
2015年12月
当確師
平均:5.00 / 書評数:1
2014年10月
売国
平均:6.00 / 書評数:1
2010年03月
プライド
平均:7.00 / 書評数:1
2009年04月
レッドゾーン
平均:2.00 / 書評数:1
2008年07月
ベイジン
平均:6.00 / 書評数:1
2006年04月
バイアウト
平均:2.00 / 書評数:1
2006年02月
マグマ
平均:7.00 / 書評数:1
2005年07月
虚像の砦
平均:6.00 / 書評数:1
2004年12月
ハゲタカ
平均:2.00 / 書評数:1