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[ 本格/新本格 ]
楠田匡介名作選
本格ミステリコレクション(河出文庫)
楠田匡介 出版月: 2002年01月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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河出書房新社
2002年01月

No.1 7点 クリスティ再読 2021/12/31 15:06
評者とか楠田匡介というと「人肉の詩集」というイメージが強いんだけど、あれは最近のアンソロでは収録されてないようだ。「パルムの僧院」が脱獄ネタだったこともあって、やろうじゃないの、楠田匡介脱獄大全集。

でこの河出文庫のアンソロは、すべて脱獄ネタ。一応「本格ミステリコレクション」のシリーズなんだけども、そのつもりで読んだ人は怒るんじゃないかな(苦笑)。楠田匡介というと司法保護司をしていたこともあって、塀の中の事情に精通している作家である。それで知った「リアル」を存分に生かした「宝石」の名物シリーズである。
しかし、文章は見るからに荒っぽい。実話読み物風なんだけども、塀の中の受刑者の「リアル」という面では、逆に効果的になっていることを否定できない。だからこその「ハードボイルド」な味さえ感じてしまうのは、読みすぎかな。でも、脱獄手段は手を変え品を変え、そして脱獄した後の復讐やらなんやらドラマ盛りだくさん。意外な逆転が仕込んであったり、女囚やら少年刑務所やら、少女受刑者やら...と、たとえば「女囚701号さそり」を彷彿とさせる「愛と憎しみと」、スベ公グループの確執が絡んで「野良猫ロック」みたいな「不良娘たち」、「練鑑ブルース」を作中で歌う「不良番長」ならぬ「不良少女」...いやまさにヤサグレた60~70年代映画の情念が立ち上る。「網走番外地」だって第1作は脱獄モノだしね...ちゃんと酒を「キス」って隠語で呼んでます。
で、14作収録があっという間。短編集「脱獄囚」を完全収録する目的もあって収録された「朱色」だけが「脱獄」カラーが薄い(それでもちょっとだけかかわりが?)パズラー風味の悪漢小説だけど、最後の「完全脱獄」は、「獄中にある」のをアリバイトリックに使うという奇想。でもリアル。

なかなか盛りだくさんの内容で、結構楽しめます。
(ちなみに保護司って、無給で事実上ボランティア。大変...)


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