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[ 短編集(分類不能) ] 須永朝彦小説選 山尾悠子編 |
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| 須永朝彦 | 出版月: 2021年09月 | 平均: 8.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 筑摩書房 2021年09月 |
| No.1 | 8点 | クリスティ再読 | 2026/07/05 22:35 |
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| 鳥兜、闘牛、熟眠(うまい)、インヘルノ、呪ひ、皮膚、笛、エヴァ、ヴァムパイア...
これが就眠儀式の呪文。 ミステリマニアにとって「就眠儀式」というと、木々高太郎のフロイト丸出しの短編だけども、別の「就眠儀式」、それも「耽美小説の聖典」とまで呼ばれるものがある。 60年代末〜70年代初頭に、ハマープロ「吸血鬼ドラキュラ」がきっかけとはなったけども、世界的な「吸血鬼ブーム」があった。日本ではそれがハイブラウな方向に逸走して、三島由紀夫・澁澤龍彦・種村季弘・平井呈一など錚々たる人々による「血と薔薇」などに結実した動きがあり、これが幻想文学の大きな分水嶺となっている。その一方で、幻想文学のもう一つの流れもこれに棹さしている。中井英夫・塚本邦雄といった方向性の俊英として登場したのが、この須永朝彦で、日本の吸血鬼小説の一つの典型となっているのが、このアンソロにも大部分を収録した「就眠儀式」である。 要するに「耽美」な方向性である。だから本作がなければ「ポーの一族」はありえない、と断言してもいい。この吸血鬼は、退治されるモンスターではなく、同性愛的に美青年を犠牲にしつつ時を超えて旅をする不死人である。 この須永朝彦の小説世界というのは、かなり極端なものである。濃密な文章の文庫3ページほどの掌編が多数を占めている。そして頻繁に和歌が添えられていたりして、あたかも「伊勢物語」のような歌物語を読むかのようである。しかし登場するのは古城・チェンバロ・金髪碧眼の美青年・吸血鬼・闘牛・天使といったバタくさいにも程があるロマンの華。吸血鬼をテーマとする「就眠儀式」、天使を主題とする「天使」も確かに「耽美の聖典」と呼ばれるに十分な内容である。 しかし、70年代中盤に書かれたが、独立の単行本にはならなかった「聖家族」のシリーズがやはり一等地抜けている。 白系露西亜亡命貴族の息子だが宝石専門の盗賊となった父。その面影を子はバットマンに求める...いやこれは空想。現実の父は落雁が好物の俗っぽい俳人。母はいい年をして雛祭りに執着し、桃の花の淫蕩さに子は顔を顰める。そんな「聖家族」。このリアルと幻想の近親相姦劇。 この作家の描くものは、全てどこかしら「ありえなかった自伝」の面影がある。 (赤江瀑がアリならこの人オーケーじゃないかな?蘭をテーマにした「蘭の祝福」ではネロ・ウルフとか「大いなる眠り」が参照されるし、この本の最後「青い箱と銀色のお化け」は、あの世で乱歩生誕百年祭を、乱歩が谷崎潤一郎と佐藤春夫に祝ってもらう席に、稲垣足穂が乱入する戯作。皮肉な味に大笑いだが、乱歩の新進時代の先輩作家に対する愛憎が見えてミステリ史的にも面白い) |
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