海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ SF/ファンタジー ]
本心
平野啓一郎 出版月: 2021年05月 平均: 8.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


文藝春秋
2021年05月

文藝春秋
2023年12月

No.1 8点 take5 2026/07/04 19:05
ミステリー的手法で描く近未来小説
いくつかテーマがあります。

①「理解したつもり」の危険性。
主人公が、「自由死(安楽死)」を
選んだ最愛の母の本心を知りたい
と願い、母親のAIを再生します。
しかし、AIと会話を重ねるうち、
自分が見ていた母親は、実は、
「自分に見せてくれていた母親」
の一面に過ぎず、自分が知らない
交友関係や考えを持っていた事を
知ります。

②人を愛するということの本質
平野啓一郎は、「相手のすべてを
完全に理解すること」は不可能だ
としています。むしろ、「分かり
合えない部分(他者性)」がある
からこそ、相手を単なる自分の
所有物としてではなく、一人の
独立した人間として尊重して、
深く愛することができるのだと
説いています。

③「分人主義」と他者性の関係
平野啓一郎が提唱する分人主義
という考え方は、「人間は誰しも、
相手(家族・友人・仕事)との
関係性ごとに異なる複数の人格
(=分人)を持っているのだ」
いうものです。主人公の母親も
母親としての一面だけでなく、
主人公の知らない場所で別の顔
(分人)を持っており、それが
「他者性」の正体だという事です。

いずれのテーマも、読者の自分を
えぐるような重さです。しかし、
最後まで目を背けない主人公に、
こちらも最後まで向き合う読書と
なりました。


キーワードから探す
平野啓一郎
2021年05月
本心
平均:8.00 / 書評数:1
2018年09月
ある男
平均:7.33 / 書評数:3