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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ] 泉鏡花集成1 種村季弘編 |
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| 泉鏡花 | 出版月: 1996年08月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 筑摩書房 1996年08月 |
| No.1 | 6点 | クリスティ再読 | 2026/03/21 20:54 |
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| 涙香の「無惨」(1889)に続く国産ミステリの二作目かも?なのはどうやら泉鏡花の「活人形」(1893)かも?という話もあるので、取り上げてみた。これは尾崎紅葉の門下の硯友社が春陽堂の求めに応じて出した「探偵小説」という叢書で出たもの。涙香が紹介した海外ミステリ翻訳が好評で、それに乗っかろうという春陽堂の思惑だったわけだ。でも紅葉門下とはいえ、だいたいはペンネームで書いている。川上眉山とかもいるようだが、当時駆け出しだった泉鏡花はこの名前で書いている。これが中編「活人形」。
雲の峰は崩れて遠山の麓に靄薄く、見ゆる限りの野も山も海も夕陽の茜に染みて、遠近の森の梢に並ぶ夥多寺院の甍は眩く輝きぬ。処は相州東鎌倉雪の下村...番地の家は、昔何某とかやいえりし大名邸の旧跡なるを、今は赤城得三が住家とせり。 門札を見て、「フム此家だな。と門前に佇みたるは、倉瀬泰助という当時屈指の探偵なり。色白く眼清しく、左の頬に三日月形の古創あり。 とまあこんな感じで名探偵登場。実際にはこの探偵が赤城という悪人の悪事を暴いて主筋の姉妹を救うスリラー。この姉妹の母が大切にしていた等身大の人形が登場し、身代わりになるようなシーンもある。引用で分かるように文語文。でもまあそれほど難しくはないが、それでも鏡花としては第二作、まだ19歳だよ〜練れてない小説。 だけど、第三作の「金時計」は金時計を餌に悪巧みする外国人を罠にかける話でこれも広義のミステリ。鏡花の名声を高めた「義血侠血」、新派で有名な「滝の白糸」だと殺人事件の裁判で検事と被告の恋の話だったりする。「黒猫」はポオとは関係なくて、盲人の按摩のストーカー話で、その被害者女性が溺愛する黒猫になりたい、などとその按摩が懸想する。でこの按摩が結局死んで、黒猫が按摩の霊が乗り移ったのかのような...という話。これが一番面白いかな。玉三郎が映画化したので懐かしい「外科室」は一種の心理ミステリと読める作品だから、たまに「文豪ミステリ集」みたいなアンソロに入ってることがある。 というわけで、泉鏡花って結構ミステリ作家じゃん?というのが結論。このちくま文庫のアンソロは明治26-28年あたりの駆け出し時代の作品集。全作文語文だが、会話は口語。割と読みやすい。 |
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