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[ 短編集(分類不能) ] 芥川龍之介 幻想ミステリ傑作集 魔術 長山靖生編 |
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| 芥川龍之介 | 出版月: 2018年11月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 彩流社 2018年11月 |
| No.1 | 5点 | クリスティ再読 | 2026/03/05 10:35 |
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| 大正期の「前・探偵小説」という面で見た時、大正モダニストの寵児である芥川龍之介の存在感と言うのもやはり、ある。乱歩自身が谷崎潤一郎と佐藤春夫と並べて、一般文壇からの探偵小説的アプローチの例として芥川を挙げていたりする。まあだけど、今更「藪の中」をするのも何なので、タイトルに惹かれてこのアンソロを。「開化の殺人」とか入っているからね。
芥川と言うと、アイロニカルな視点で心理を掘り下げる切れ味のいい短編が真骨頂なのだけども、これって今見たらいわゆる「純文学」ともちょっとズレた位置の作家だということもできる。「大正モダニズムの作家」という視点で「新青年」作家たちとも共通の空気を吸っていたことは否定できないんだ。複雑な心理を解剖する知的な謎解き小説というあたりで、「ミステリ」要素がないわけでもないんだが....うーん、このアンソロだとやや苦しいかなあ。 ミステリ的興味、といえばタイトルが直球の「開化の殺人」(大正7年)だけど、これは佐藤春夫の「指紋」と同じ、中央公論の「秘密と開放」という増刊号に掲載された作。一般文壇での初の「ミステリ特集号」だったわけ。これが大正のミステリブームを作ったわけだけど、本作も殺人者の動機深掘りモノに留まっている。あと不貞とドッペルゲンガー妄想とを重ねた「影」がミステリっぽいと言えばそうだけど、どうも内容が混乱している。ならばドッペルゲンガーを正面から扱った「二つの手紙」の方が作品としてはいい。そもそもポオとか「プラークの大学生」からの流行ネタなんだけどもね。ホワイダニットの動機追求という面だとストレートに描いた「疑惑」が完成度が高いか。あとは芥川らしいアイロニカルな神秘小説が続いて、ちょっとミステリとは言い難いものが多いな。 しかし、本書で最後に収録された「浅草公園」は、映画シナリオ仕立てで、浅草公園で迷子になった少年の目での「冒険」を描いたもの。乱歩も浅草をテーマにした作品多数のわけで、「浅草の路上観察」という「猟奇(curiosity hunting)」の直球ネタだったりするわけだ。そして、このシナリオの中で、ディゾルブを想定したような二重イメージをいろいろと操って「都市の真実」を提示しようとしていたりする。こういう視線自体が「都市の探偵」の典型だったりもする。 というわけで芥川も懸案だったから、これで解消。あと、文学系は泉鏡花の「活人形」くらいはしたいなあ。 |
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