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[ サスペンス ]
音楽
三島由紀夫 出版月: 1970年02月 平均: 5.50点 書評数: 2件

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新潮社
1970年02月

中央公論新社
1970年06月

新潮社
2021年10月

No.2 5点 おっさん 2026/03/21 13:34
創元推理文庫の5月の近刊案内に、三島由紀夫の戯曲『黒蜥蜴』のタイトルを見て、へえ、と思いました。うん、アレは名作。でも、同文庫に戯曲が編入された例って、これまでありましたっけ? 
エッセイ 「推理小説批判」(1960)で “推理小説ぎらひ” のスタンスを表明した三島由紀夫ですが……それでいて、江戸川乱歩の『黒蜥蜴』を楽しげに脚色して、女性誌(『婦人画報』1961年12月号)に発表したりしている。人間の感情は矛盾を抱えているなあ、と思いますw
ま、作者としては、乱歩の原作は “推理小説” じゃなく“探偵小説” だから別物、という認識だったのでしょうが……。

しかし、そんな三島由紀夫が、やはり女性誌の連載小説(『婦人公論』1964年1月号~12月号)として執筆した本作は、単行本化されたさい、『ミステリ・マガジン』の時評欄で石川喬司氏に取り上げられ、「推理小説としてみても、まさに第一級品の面白さ」であり、「心理主義推理小説のお手本といってよいだろう」と賞賛されました。そんなふうに褒められて、三島センセイが嬉しかったかどうかは、分かりませんがねww
ともあれ、ジグムント・フロイト以降の、精神分析医が患者の心の奥底に隠された真実を診断するアプローチは、確かに探偵行為と親和性が高いのは、否定できません。
そして、医師の手記という形式で、「私には音楽が聞こえません」と訴える女性の奇妙な症例――あ、”音楽” とは性的な興奮の暗喩であることがすぐ分かります――を綴った本作、いってみれば不感症を治療するだけの話(!)で連載長編をもたせた、作者の小説技術はきわめて高い。
診察室でのやりとりを離れ、ときにヒロインの手紙を通して彼女の帰省、静養旅行のエピソードが語られますが、それがただの引き延ばしではなく、きちんと ”解決” への布石になっていますし、最終的に明らかになる真実も、意外性と説得力のバランスがとれている。
ただ、ブンガク的価値は分かりませんが、 ”推理小説” として見るならば、後段、主人公の「ただの直観が言わせた」当てずっぽうの質問がストーリーの転機になったり、ある人物の行方を捜す必要に迫られたとき大きな偶然に助けられたり、はマイナス要因でしょう。主人公自身、「偶然が九十パーセントの働きをしていた点では、私は少しも功を誇る気にはなれない」と述懐しています。作者はもう少し、そのへんの工夫を、推理小説で勉強したほうがよかったwww
と、ここで終わってもいいのですが……

実はこの作品の最大の問題点は、別にあると思っています。
主人公の医師の、守秘義務に関する意識の低さ。患者のプライバシーを考えたら、こんな手記形式の ”モデル小説” を書いていいわけがないでしょう。
巻頭に「刊行者 序」なる文章があり、「汐見和順氏の『音楽』と題する、女性の冷感症の一症例に関する手記は、実名こそ伏せられておれ、全く事実に基づくものの由で」云々と、一応のエクスキューズめいた表現はありますが、それで 大丈夫とする ” 刊行者” も問題。
本作に本当に必要なのは、むしろ逆に、「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」という但し書きですよ。

No.1 6点 レッドキング 2026/03/02 06:00
昭和21年、東大法学部の学生だった21歳の三島由紀夫は、37歳の太宰治に会いに行った。崇拝していた森鴎外について蘊蓄を傾けた三島に、太宰は気のない対応でいなした。三島は「僕は太宰さんの文学は嫌いなんです」と言う"有名な"セリフを吐くが、太宰は隣にいた亀井勝一郎に向かって「そんなこと言ったって、こうしてここに来てるって事は、やっぱり、ボクの事、好きなんだよな」と言ったとか。

坂口安吾や大岡昇平よりも、三島こそ、ミステリ小説に力を注ぐべきだった。三島の死について、安部公房は「三島君が死んだのはねえ、何にも書くことが無くなっちゃったからなんだよ。これは小説家として何よりもつらい事だからね」と詠嘆した。

※あまり「音楽」と関係のない話になってしまった。(突然、この作品が登録されていたので、つい)


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三島由紀夫
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