皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ] 探偵はひとりぼっち ススキノ探偵<俺>シリーズ |
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| 東直己 | 出版月: 1998年04月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 早川書房 1998年04月 |
![]() 早川書房 2001年11月 |
| No.1 | 6点 | 斎藤警部 | 2025/11/23 02:08 |
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| 「それに、警察は、ホモの殺人事件には消極的である、と言われますしね」
「さあ、それはどうかな。 そこらへんは、わたしはよくわかりませんが」 出だしからいいグルーヴだ。 粗いが厳しさ孕んだユーモアが流れる。 ’90 年代後半に、’80年代前半の札幌ススキノを描いた長篇。 惨殺されたオカマのマサコちゃんは、店ではマッチョチームの一員で愛され年増。 東京TVのアマチュア・マジック大会で見事に賞を獲り、札幌に凱旋した直後の出来事だ。 北海道の革新系大物政治家とのスキャンダラスな関係が憶測を呼んだが、誰もが口を閉ざした。 葬儀に現れた親族は権威主義的最悪の態度を示した。 向こう見ずな 「俺」 はマサコちゃんとの友情のため孤軍奮闘(+αβγ)の真相暴露に乗り出す。 「へぇ・・・・・・」 「でも、全部、危ない人みたいだわ」 やくざ者との、危うい友情ほとばしる会話、閃光放つ関係。 友人、警察、大小マスコミ、水商売、占い師、怪しいやつ、左翼系政商との荒っぽい協力関係や押したり引いたり駆け引きが駆け巡る。 そいや恋人もいたな。 だがしかし ・・・ 読めば読むほど、この主人公、君はそんなことする器じゃないじゃないか、と思ってしまう。 それでもやってしまうのは教養の欠如のせいだと思っちまう。 前述のユーモアも、半ばから陳腐に崩れがちだ。 それでもなお、物語の進行は終始興味津々で離さない。 決してつまらないのではない。 「連中も、歩き回ろうという意欲はあるんだろう、と俺は思うよ。 ただ、靴べらをさがしてるんだな。 靴をちゃんと履かないと、歩きづらいからな。 で、靴べらがなかなか見つからないんだろう」 色々あって、最後はかなり意外な真犯人(及び・・)が暴露されます。 これを言うとネタバレに近づいてしまいますが ・・・・ 本格でなくサスペンスでもハードボイルドでもなく、むしろ○○小説流儀の意外な犯人っぽい味が検知されました。 犯人意外性はともかく、キャベツの芯の腐ったような厭な犯行動機は、犯人の生きた証もろともカビキラーで消し潰してしまいたいところです。 主役含み、ミステリ的に悪い意味で中途半端な悪党というか非善人がいろいろ出て来たりして、どうにもモヤモヤ、何かが弾け切りません。 主役 「俺」 はカードのチートでセコい荒稼ぎしたり、違法な朝を飢えて瓜鯖イタリーして生計を立てる探偵気取りのバカです。 でもまあ、ちょっとバランスがグラグラしてるとは言え、意表を突いたトリッキーな物語構造の中 ‘大いなる××’ の波が押し寄せ去って行くダイナミズムと虚無感のコントラストはなかなかのものでした。 ある人物が最後まで .. 想像シーン以外 .. 登場しない演出は、上手いと思いましたね。 その状況証拠込みの想像のアレがまた、割り切れなさを残すも、やっぱり泣かせる名場面なわけでね。 しばたはつみの渋い?曲が、或る情緒性のお伴に登場したのは良かったです。 |
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