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ノン・サラブレッド
島田明宏 出版月: 2020年07月 平均: 5.00点 書評数: 1件

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集英社
2020年07月

No.1 5点 いいちこ 2025/06/12 18:10
~わが国の競馬草創期に圧倒的な競争・繁殖成績を残した名牝ミラ。
ただ、血統書が存在しないがゆえに、サラ系として扱われ、母系からいくら活躍馬を輩出しようとも、父系が発展することはなかった。
もし、このミラの血統書が存在すれば、ミラから拡がる子孫の全頭がサラブレッドとして認められることになる~

私は30年来の競馬ファンであるが、このテーマの妙に強く感銘を受けた。
たった1枚の血統書が存在しないことで、ミラのみならず、ミラの8代子孫に至るまで、莫大な数の馬、それも名馬たちの運命に決定的な影響を及ぼした。
サラブレッドの語源はサラ(徹底的な)+ブレッド(品種)であるが、本作はブラッド・スポーツという競馬の本質をまざまざと見せつけてくれた。
そのうえで、著者の競馬に対する知見がすばらしく、ホーリーシャークの臆病な性格と、それにあわせた馴致・調教、馬を取り巻く人間模様など、とにかく描写が具体的で、リアリティがあり、実に読ませる内容となっている。
その一方で、ミステリの中核を成す現代編は、捜索のプロセス・真相を含め、あらゆる点で凡庸な印象が強い。
ミステリとしては、いかにも小品であり、5点の上位にとどめるが、構想力・独創性・筆力、いずれの面でも見るべき点がある作品


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島田明宏
2020年07月
ノン・サラブレッド
平均:5.00 / 書評数:1