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[ ホラー ] 妖山鬼 山童子/改題『妖斬鬼』 |
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菊地秀行 | 出版月: 1987年02月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 徳間書店 1987年02月 |
![]() 徳間書店 1991年06月 |
![]() 日本出版社 2004年09月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2025/03/18 15:05 |
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(ネタバレなし)
銀座の宝石店「美宝堂」を襲撃し、三人の人間を殺して約10億円の宝石を奪った三人組。主犯の半蔵、その情婦で26歳のかおり、そして人殺しが好きでひそかにかおりとも男女の関係である武吉。彼ら三人は警察の目を逃れ、三時間以上も歩いて深い山村の「四貴村」に逃げ込む。だがかおりが不敬な禁忌を冒したことを契機に、山は異界としての姿を見せ始めた。 菊地秀行作品はデビュー長編『魔界都市ー新宿』の元版・ソノラマ版の初版を発売直後に購読して以来、たぶん二百冊以上は読み、一方で21世紀になってからはツンドク本が増えていく一方である(汗)。だが本サイトでは「新宿」ものも、同じくらいに大好きな「エイリアン」シリーズも、まあ、その辺のおなじみヒーローを主役にした連作アクションホラー路線を扱ったら(語り出したら)キリがない……という思いで、レビューは遠慮していた(まあ広義のSF、ファンタジー、ホラー、青春ミステリ、のどっかにはひっかかる作品ばかりだとは思ってはいるのだが)。 だがま、この作品はノンシリーズのホラー編らしい? さらにもうひとつの理由から「読んで感想を書いてもいいかな」と思い、大分前にブックオフの100円棚で購入した徳間文庫版を手にしてみた。登場人物表を作る必要もない。スラスラ読める。 そしたらこれも結局はシリーズものであり、タイトル『妖山鬼』の一冊の中に「山童子」「剣鬼山」の二中編を収録。あらすじに書いたのは先に収録の「山童子」の方で、この二編に、共通のヒーローとして10~15歳くらいの外見の魔少年<山童子>が登場する。 ヒーローの設定としては、各地の<山>という場は人里離れた場として人間が非日常的な行為(犯罪だの戦闘だの、自然破壊だの)をしがちなので、負の情念を生じやすい。そこに魔性の物が集まるので、山の自然の側が一種のバランサーとして生み出した少年の姿のトラブル調停役。人間を守ることもあるが、単純な正義の味方ではない。大体はそんな大枠。ただし菊地秀行は、反響が薄い(ウケない、商売にならない)とわかると、新設定したヒーローを実に冷静に放り出すタイプの作家なので、これもそんな一例のひとつ。だからそれなりの菊地ファンのつもりの評者も、これがシリーズものだと意識しなかったのだ、と言い訳。 で、作品の中身だが、一作目がエロ度の高い中間小説誌「問題小説」に掲載され、そこでシリーズ(2本だけだが)が開始されただけあって、なんつーか<あの時期>の西村寿行作品の読者をそっくり戴いてやるぜ、と言わんばかりのエロ&バイオレンス、そこに菊地作品らしいビジュアル感を意識したホラー(で、最終的にはアクションホラー)の要素が融合。星の数ほどある菊地作品のなかでも、たぶん上位クラスで、いやらし度の高い一冊ではないかと。 これを評者のように楽しめるなら(たぶん嫌悪感を示す人も多いとも思うが……)、面白いことはオモシロイ。その一方でいつもの菊地作品、という大枠での感想ではあるが。 で、なんでこの文庫本をブックオフで手にして購入してきたかというもうひとつの理由だが、文庫版の巻末に再録された元版のあとがき(文庫版はさらに新規のもうひとつの作者あとがきと、さらに別人による解説も掲載)の中で、作者が話の流れでコーネル・ウールリッチへの思い入れ、中でも特に『喪服のランデヴー』が最愛の作品だと言う、実に実に実に「わかっている」思いのたけを語っており、それにグッときたから(笑)。 ……いや、実はこのあとがきは、だいぶ前に、作者のあとがきばかりを集成したエッセイ本(なんじゃそりゃ、という感じだが、この作者なのでそーゆー本もある)『魔獣境図書館』の中で先に読んでしまっているが、久々にこの文章を見かけて、ああ、この作品のあとがきだったんだっけな、とココロを打たれ、購入してきた、そんな流れであった。 この十年、小説系の読書の傾向はフツーのミステリと一部のフツーのSFばっかりに向いてしまい、菊地作品に関しては未読のツンドク本が溜まっていくばかりの評者だが、そのうちどっかで少しずつ消化したいなあ……とも思うだけは思ったり、している。いや、まあ。 |