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[ 短編集(分類不能) ]
酔いどれ天使
渡辺淳一 出版月: 1971年02月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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KADOKAWA
1971年02月

No.1 7点 斎藤警部 2025/01/04 00:20
医学と恋愛とを主軸に、時代の気分でミステリが絡んだような初期(S40年代前半~中盤)短篇集。

乳房切断
刺激的で怖い表題。 医療プロセスの際どい所に見えない穴があき、切断しなくてよい乳房が切断される。 事の異状が静かに顕れたのは手術の四年後。 被害を受けたのは医学部教授の妻。 記録と記憶の物陰から強力な容疑者達が躍り出る。 地道な個人捜査の末、抉り出された真相は、、意外とアレっちゃアレだが、シリアスな人間ドラマが猛烈な押し出しで、勝ち切った。 7点

酔いどれ天使
表題から受ける印象とはずいぶん異なる内容。 “酩酊児” への恐怖に駆られる男を中心に据えた、一気読みブラックユーモアサスペンス。 ちょっと長めのショートショート。 黒澤三船の映画とは関係なし(医者が出て来るという共通項はあり)。 6点

ある心中の失敗
緩慢なるサスペンス。 恋愛経緯が甘苦い空気を送り込み、医学の現場対応が場を締める。 表題そのままの結末とも言え、ミステリ性は極薄だが、一般小説ならではの良さというものか、実に後を引く深みあり。 7点

脳死人間
交通事故で脳死状態(植物性人間!)になった大学教授。 残されたのは妻と二人の子、そして同居する甥。 この甥が妻に色目を使う。 やがて息を引き取った夫を前に、妻は或る後悔の混じった哀しみに襲われる。 サスペンスは在るがミステリ性は薄い。 だがやはり余韻は深い。 脳死問題とは縁の深い、元医者である著者による、あたたかい物語。 7点


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渡辺淳一
1971年02月
酔いどれ天使
平均:7.00 / 書評数:1