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[ 青春ミステリ ]
スクリーン 永遠の序幕
山田健太郎 出版月: 2024年07月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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幻冬舎
2024年07月

No.1 6点 人並由真 2024/12/12 16:31
(ネタバレなし)
「瑛心高校」に通う男子学生・今岡蒼斗(あおと)は、身投げしかけた2つ年上の恋人・泉有希の手を握り、自殺を未然に防いだ。だがその直後、蒼斗は恋人の殺人未遂容疑で逮捕される。やがて自由の身になった蒼斗だが、彼の周囲で何かが変わり始めていた。

 今年の新作。まったくの新人作家で作品の前情報も特に得てもいなかったが、Amazonのレビューが賞賛ばかり、さらに出版社の煽りが凄いので気になって試しに読んでみる。

 本文270ページ前後、大き目の級数の書体での一段組で、読みやすいことこの上ない。おまけに途中途中で、主人公・蒼斗の視点からの人物相関図まで挿入される。
 つーわけでサクサク読み進め、二時間かからず読了してしまった。

 全体に登場人物の描写は達者で、脇役なんかはそれぞれかなり印象的に描けている。コンビニの主人とか、友人の家のお手伝いさんとか。
 
 お話の流れも小気味よく、大小の事件が相次いで生じ、好テンポで進むが、後半3分の1、洋品店のおばあちゃんが出るあたりから描写の確度がやや甘くなり、終盤の方はかなりトンデモな内容に流れていった。まあこれくらいのネタを放り込まないと、星の数ほどある国産ミステリ界の新作のなかでは埋没しちゃうというのもよくわかるが。

 でもって出版社イチオシの「最後に全てがひっくり返る、超ド級ジェットコースターミステリー!」たるクロージングだが、これはまあ(中略)の変形みたいなもんだよね。ここで驚かせて作者が読者に向かい(中略)な表情を浮かべたかったのは察するが、なんかこれでいろいろ台無しにされた気も。まあこれがないとよくできた赤川次郎だよね、という感じもしないでもない作品なのではありますが。

 それなりには楽しめるし、心に響く部分もなくもないけれど、読む人によっては色々な箇所で引っかかり、そこで脱落するかもしれん。
 良くも悪くも新人作家の作品と心得ながら、最後まで読んだ方がいいかと思う。


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山田健太郎
2024年07月
スクリーン 永遠の序幕
平均:6.00 / 書評数:1