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[ サスペンス ] Sの継承 |
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堂場瞬一 | 出版月: 2013年08月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
中央公論新社 2013年08月 |
中央公論新社 2016年10月 |
中央公論新社 2016年10月 |
No.1 | 6点 | 小原庄助 | 2024/07/29 07:53 |
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60年安保闘争の終焉を見届けた実業家の国重は、自力での革命を決意し、彼を慕う化学専攻の大学生の松島を計画に引き込み、革命の武器となる毒ガスの製造に成功する。そして、東京オリンピックを翌年に控えた1963年に、先鋭化した松島は、時期尚早を唱える国重を押し切り、アジトのある前橋市で毒ガス散布に踏み切ろうとする。50年後の現代、国会議員の総辞職を要求した一人の青年が、国会議事堂前の路上で毒ガスを積んだ車に立て籠もる。
第一部では戦争の影を引きずる壮年の国重と、政治の時代の熱気に煽られる若者との間に流れる共感と齟齬が、時代色豊かに描かれる。第二部はタイムリミット型のサスペンスへと一変し、進行中のテロとそれに対抗する警察側への行動がスリリングに描かれる。 この異質な二つのパートを繋ぐのが国重が唱えいる革命である。誰もがそれを夢想と思いながら、どこか共感してしまうことを否定できない。甘い毒が含まれた革命の思想。その毒が容易に広まるネット社会において、それがどのような影響を及ぼすのか。ネットが無ければ不可能だったジャスミン革命のようなことが日本でも起きるのか。本書はオリンピックを控えた二つの時代を描きながら、そんな壮大な思考実験も含んだ類稀なるエンターテインメントである。 |