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[ 社会派 ]
朱色の化身
塩田武士 出版月: 2022年03月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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講談社
2022年03月

No.1 6点 麝香福郎 2024/07/04 21:27
温泉街で育った珠緒は、男女雇用機会均等法施工直後の銀行に総合職で入り勤めたものの、京都の老舗和菓子店に嫁ぐため退行。後にはゲームクリエイターとしてヒットを放っていた。男女差別が残る業界で頑張っていた彼女の寿退職や、銀行とゲームという業種の硬軟からすると、進歩的なのか保守的なのか価値感がよくわからない。得た事実が増えても、なかなか像を結ばない。だが、大路は生活史を掘り起こし、彼女の隠された真実に迫っていく。
作者の丹念な取材に裏打ちされたディテールが、作中世界に迫真性を与えている。大学時代に冷戦と資本主義に関する優れたレポートを書いたという珠緒は、大局的な視野を持つ一方、身近な人間関係にがんじがらめになっていた。前半で人物像がはっきりしなかったのも、社会の矛盾、家族の歪みを彼女が引き受けながら生きたためだろう。本作では取材における個の尊重が一つのテーマになっているが、個がどのように存在するのか、よく表現した物語だ。


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塩田武士
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