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[ ホラー ] メキシカン・ゴシック |
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シルビア・モレノ=ガルシア | 出版月: 2022年04月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
早川書房 2022年04月 |
No.1 | 7点 | 小原庄助 | 2024/01/22 08:28 |
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舞台は一九五〇年のメキシコ。資産家の娘ノエミのもとに、イギリス人のヴァージル・ドイルと結婚した従姉のカタリーナから手紙が届く。その文面によると、カタリーナは夫に毒を盛られているのみならず、屋敷内を彷徨う亡霊に脅かされているというのだ。従姉のみに何が起きているのかを確認するため、ノエミはドイル家の人々が住む人里離れた「山頂御殿」へと赴く。そこはヴィクトリア朝様式の古風な建物であり、住人たちも異常なほど窮屈な規則を守りながら暮らしていた。やがてノエミは、この屋敷で過去に起きた忌まわしい出来事を知る。
陰惨な大建築、そこに住む因習の一族といった道具立ては、歴代のゴシック・ロマンスの名作と共通する要素だ。しかし、英米のゴシック・ロマンス的な道具立てを、そっくりそのままメキシコという地に持ち込むことで、そこには別のニュアンスが生じる。メキシコは長きに亘って植民地だったが、ドイル一族は旧時代の記憶に固執する白人至上主義者であり、先住民の血を引くノエミに差別的態度を示す。また、ヴァージルの父のハワード頂点とする彼らは家父長制の権化でもあり、この二つの思想がより合わさったような邪悪な企みを秘めている。彼らの慇懃無礼な圧迫を受けつつ、ノエミがその企みをいかにして暴くかが本書の読みどころであり、シャーロット・パーキンス・ギルマンの「黄色い壁紙」を踏まえたゴシック・ロマンスのフェミニズム的再解釈の試みとなっている。 |