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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ] 白樫の樹の下で |
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青山文平 | 出版月: 2011年06月 | 平均: 9.00点 | 書評数: 1件 |
文藝春秋 2011年06月 |
文藝春秋 2013年12月 |
No.1 | 9点 | ALFA | 2023/11/29 15:39 |
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第18回松本清張賞受賞作。
作者は若者を描くのがうまい。この作品にも三人の若い武士が登場する。ともに少年時代から同じ道場に通う腕達者だが無役。彼らの屈託や青臭さや危うい情熱が丁寧な文体で綴られる。 もとよりただの青春譚にはならない。互いの亀裂は次第に深まっていく。「たぶん、俺たちがもう十歳ではないということだろう」主人公の登にかけた昇平の言葉が滲みる。 四人目の若者、巳乃介も魅力的である。富裕な商家の次男坊ながら剣の腕がたつ。気に入った刀を身近に見ていたいから、といって登に名刀を預けるが、これはやはりよくできた口実だろう。この時すでに養子縁組で武士になることは決まっている。身近にというなら自分が差せばいい。見ていたいのは在るべき処を得た名刀と、それを帯びた凛々しい登の姿ではないだろうか。このあとも巳乃介改め岡倉武明は献身的に登を支える。 大江戸の辻斬りという茫漠とした事件を、巧みな人物造形で精緻なミステリに仕立てている。途中で示されるダミー解もスリリングでいい。 唯一残念なのは・・・以下ネタバレします。 二つの事件の複合であること。 |