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[ 日常の謎 ] 建築探偵の冒険 東京編 |
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藤森照信 | 出版月: 1986年04月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 1件 |
筑摩書房 1986年04月 |
筑摩書房 1989年12月 |
No.1 | 7点 | クリスティ再読 | 2023/03/28 13:09 |
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久々に反則したい。「探偵」ってタイトルがついているからまあいいじゃないの。
ポオの「群衆の人」が都市の不定形な群衆のイメージを「探偵」の目で観察した作品だったわけで、「都市の観察者としての探偵」というものは、実はミステリの成立の足元で同時に立ち現れていた...そう捉えるならば80年代の路上観察学会やら考現学といった動きはそのまま「探偵」活動だった、と言ってもいい。赤瀬川原平「超芸術トマソン」と並ぶ「都市の探偵」はこの藤森照信の「建築探偵」ということになる。 この本は東京都内に残された洋館建築を藤森が足でルポするエッセイなんだけども、そういう「探偵活動」、管理人に怪しまれ、犬に追いかけられ、はたまた誰も立ち入らないバックヤードに侵入しetc,etc な活動をユーモアを交えてレポートしている。小説のつもりで読んでも、いいんじゃない? 扱われる建築は「ダダイズム建築」として名高い東洋キネマ、クラシックな東京駅、ゴシック聖堂を内包する聖路加病院などなど、今では幻の建築も含まれるが、そういった東京の名建築の楽しみどころや由来を探検し探偵していく話である。実際、東洋キネマなどは著者のレポートがきっかけで無名の設計者への聞き取りも実現して、建設の経緯なども明らかになったそうだ。 訪れた建築にはマッカーサーが接収して本部とした第一生命館もある。以前、細野不二彦の「東京探偵団」の話を書いたことがあるが、その一編「星条旗の幻」(コミックス6巻)はこのビルが舞台で、本書に載っている写真がおそらくマンガの描写内でも模写されているし、このビルの土台の話もこの本から取材したものと思われる。原作みたいなものだな。 まあ80年代に元気よく東京の学生生活を送った人には、大変懐かしい本であろう。この本で取り上げられた建築のほとんどがそのままではもうすでに存在していないわけで、消え去った昭和への哀悼の念を改めて感じる。 「探偵」は必ずしも犯罪事件を追わなくてもいい、というのが「日常の謎」ミステリならば、本書だって立派に「日常の謎」かもしれないや。 |